アニメ聖地巡礼の自治体アンケート調査に関する考察 その②

前回に引き続き、元・北九州市立大学の森裕亮准教授・博士(現・青山学院大学教授)が発表された「アニメ聖地巡礼を活用した地域の魅力づくりと活性化を考えるアンケート調査報告書(速報版)」の調査内容を見ていきたいと思います。

調査項目には、著作権者の影響力に関する質問があり、自治体内にアニメなどの著作権使用に関する取りまとめを行う団体や機関が存在しないケースが多く、許諾申請などの手続きがスムーズに行われなかったことが窺われる結果となっています。
また、著作権者の影響力を問う質問の回答も、「非常にあった」との回答が21.2%で最多となっており、質問単体で考えれば良い影響なのか悪い影響なのかは不明なものの、アンケート上では、著作権の使用手続きがスムーズだったかを問う質問に続く質問になっているので、使用手続き上の影響との誘導質問的な要素が少なからずあるものと考えられ、以上の点も踏まえると、著作権者(アニメの版権所有会社)との交渉などが自治体にとって多少なりともハードルとなっているのでは、とも想像できます。

聖地ブームの火付け役となった2016年公開の劇場版アニメ『君の名は。』※の版権を管理する会社は、聖地ビジネスに関しては消極的で、地元の文化事業などには許諾を出しても、観光関連の企業などには使用許諾を出さない方針を取っています。
また、作品によっては、地域の風景や建物などを背景のモデルとして使用してはいるものの、地域を特定して見て欲しくないという作品の演出上の意図から、舞台地として公認していないものもあります。
そうした作品では、ビジュアルなどの版権画像を使用させてはくれても、公認の舞台地としては取り扱うことができないので、「作品に出て来る建物に似ている」とか、「作品の世界観を彷彿とさせる」といった表現で、あくまで舞台地ではない態で紹介するなどの配慮が必要になります。

ファンの要望(需要)があって、それを活用しようという自治体や企業があっても、著作権者が許諾を出さないと、一切の活動が執り行えないので、著作権者の意向は、聖地巡礼の取り組みにとっては大きな課題と成り得ます。
この辺りが、アニメ聖地を活用した地域振興の難しさでもあります。

次回も引き続き、アンケート調査の内容についての考察記事を行います。


※報告書内には作品名、自治体名の記載は一切ありません。


アニメ聖地巡礼の自治体アンケート調査に関する考察
その①
その②
その③
その④