アニメ聖地巡礼の自治体アンケート調査に関する考察 その③

前回に引き続き、元・北九州市立大学の森裕亮准教授・博士(現・青山学院大学教授)が発表された「アニメ聖地巡礼を活用した地域の魅力づくりと活性化を考えるアンケート調査報告書(速報版)」の調査内容を見ていきましょう。

今回は、アニメ聖地へファンが来訪することによって生じる諸問題など負の影響に関する質問について取り上げたいと思います。
この質問項目では、

  • 人気の場所の大きな混雑
  • 人気の場所都の例外との利害対立
  • 住民から不安の声
  • 来訪したファンの問題行動
  • 地元向け店舗業種の減少
  • アニメ作品とファン一色化

について、「⾮常にあてはまる」「かなりあてはまる」「ある程度」「あまりあてはまらない」「全くあてはまらない」の5項目での回答を求めていますが、「人気の場所の大きな混雑」においてのみ、「あまりあてはまらない」が40.7%と最多で、「⾮常にあてはまる」が4.3%だったものの、他の項目については「全くあてはまらない」が概ね過半数を大きく超える回答となっており、逆に「⾮常にあてはまる」はいずれも0%となっています。
このことから、聖地巡礼でファンが多く集まることでの混雑には懸念を有するものの、その他においては地域に悪影響を及ぼすようなファンは少ないことが見て取れます。

ネット上では、アニメファンの聖地巡礼によって地元住民が迷惑しているなどと声高に喧伝する人たちがいますが、実際には多くの場合、ファンでもなく、地元住民でもない第三者が触れ回っているケースが多く、実際には地元住民からはそんな苦情は上がっていない、といった現象が各地で確認されています。この調査でも、聖地巡礼による悪影響が問題化していないことを実証する結果となっているように見受けられます。

もう一点、調査項目の中には、コロナ渦での影響についての質問があるのですが、当然ながら訪問客が減ったことやイベントを中止したとの回答が多い中にあって、それでも地元を訪れてくれるファンを受け入れる側の自治体では、感染対策の工夫も然ることながら、マナーが悪いファンがいなかったことを挙げる回答も見られました。
こちらの調査結果においても、自治体におけるファンの印象が良好であることが窺われ、これから聖地巡礼の活用への取り組みを始めようと検討しているような自治体にとっては、好材料となりそうです。

次回も引き続き、アンケート調査の内容についての考察記事を行います。


アニメ聖地巡礼の自治体アンケート調査に関する考察
その①
その②
その③
その④