アニメ制作会社の生存戦略 その③ 自社作品に出資する制作会社

連載コラム「アニメの未来を考える」

制作会社の分類の第二弾。今回は、「自社も出資会社の一角となり、版権収益+制作費で成立している大手制作会社」について説明していきます。

2. 自社も出資会社の一角となり、版権収益+制作費で成立している大手制作会社

これは、作品のエンドテロップで、「制作」の他に「製作」にも名前が記載されている制作会社のことです。
アニメでは多くの場合、「制作」は作画やアフレコなどを含めたアニメのフィルムを作成する制作会社のことで、「製作」というのは、制作費やテレビの放送枠購入費、広告費などの資金を負担する出資会社のことを指すのですが、その両方に名前が入っているというのは、つまり、制作もするし、出資もしている会社であり、作品の著作権を有し、商品化によるロイヤリティ収入(版権収益)を得ることができる制作会社ということになります。

出資するだけの資産を持っていることが条件となるため、国民的アニメのような金鉱脈(長期で安定的かつ高収益の作品)を持っている制作会社でないと、なかなかこの道には進めません。
また、アニメの製作資金は極めて高額なために一社で全ての資金を賄うこともできません。
そのため、『ワンピース』や『名探偵コナン』といった国民的アニメと呼ばれるような作品の製作において、テレビ局+広告代理店+制作会社という組み合わせが多く見られます。
ちなみに近年空前のヒット作となった『鬼滅の刃』の場合は、配給会社(アニプレックス)+出版社(集英社)+制作会社(ufotable)という組み合わせになっていました。

このタイプの制作会社は、安定した収益基盤を持ち、大人数の従業員を擁するような企業ばかりなので、制作会社としては超一流企業です。

東映アニメーション

<自社作品に出資する制作会社> ※()内は代表作品

  • 東映アニメーション
    (『ドラゴンボール』『ワンピース』『プリキュア』『ゲゲゲの鬼太郎』など)
  • トムス・エンタテインメント
    (『名探偵コナン』『ルパン三世』『カードファイト!! ヴァンガード』など)
  • 京都アニメーション
    (『涼宮ハルヒの憂鬱』『けいおん!』『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』など)
  • ufotable
    (『鬼滅の刃』『空の境界』『Fate』シリーズなど)
  • タツノコプロ
    (『タイムボカン』『ハクション大魔王』『ガッチャマン』など)

※京都アニメーションは、自社作品の関連グッズ販売を自ら行い、出版事業やアニメーターの養成所運営も行っています。

※ufotableは、近年ではほぼ全ての自社作品に出資して版権収益を得る体制を持ち、カフェや映画館も経営しています。

次回以降は、この分類ごとに、各々の制作会社タイプの仕組みや特徴を解説していきます。


アニメ制作会社の生存戦略
その① 現在の制作会社の仕組み
その② 独立系の制作会社
その③ 自社作品に出資する制作会社
その④ 大企業の庇護下に入る制作会社
その⑤ 企画・配給会社が新設した制作会社