アニメ制作会社の生存戦略 その② 独立系の制作会社
前回は、制作会社を4種に分類してみました。本日は、そのうちの一つ「単独で制作受注している制作会社」について説明していきます。
1. 単独で制作受注している制作会社
製作委員会(出資会社)などから受注したアニメを制作して納品している制作会社です。
製作委員会の幹事会社になるような出版社やテレビ局などに太いパイプを持ち、安定的に受注を受けているような制作会社から、営業活動を行って必死に受注を獲得するような制作会社、元請会社からの下請け専門の小規模な制作会社、はたまた、何もしなくとも各方面からたくさんの依頼が舞い込むようなヒットメーカーとして有名な制作会社まで、様々な在り様の会社が存在します。
やりたくない仕事を断るといったように自分で受注する作品を選択する自由を持つものの(現実には様々な理由から断れないケースも多いのですが)、収益は制作費のみなので、コスト管理がうまくいかないと、あっという間に赤字となり、体力(資本力)がない会社は倒産するリスクが常につき纏います。
がんばってヒット作を生み出しても、著作権などの権利を持っていないのでヒットの恩恵にあずかることはできず(制作費以上の収益は見込めず)、せいぜい関連商品に使用するイラストの受注が増えるくらいです。
彼らの生存戦略としては、高クオリティの作品を制作し、あるいはヒット作を生み出すことにより、自社のブランド力を上げ、高単価の受注や、ヒット作になる可能性の高い人気原作のアニメ化の受注を獲得することにあります。
ブランド力が上がることで、指名オファーも増えるので、より多くの選択肢の中から受注作品を選ぶことも可能になるというわけです。
この好循環が上手くいかないと、選択肢がなくて予算の低い受注や人気の高くない原作のアニメ化の仕事などを引き受けざるを得ず、結果、自社ブランド力を上げることができず、次回以降も割の良くない仕事を受注することになる負のスパイラルに陥ってしまいます。
ブランディングのためのクオリティ維持も慢性的な課題となります。
能力の高いクリエイターを自社で抱えるためには高いコストがかかります。その上、数が限られているために、クオリティを維持したまま受注を増やすことが困難で、これが制作会社の成長を妨げています。
年間1作品制作していた制作会社が、受注をもう一作品増やして年間2作品制作する会社になろうと思ったら、受注があるかどうかわからない状況で、現状では必要以上となる人員を雇い入れるという極めてリスクの高い賭けに出なくてはならず、余程に経営状態が良好な制作会社でないと挑めません。
数だけ揃えてもクオリティ維持はできないので、そもそも優秀な人材の確保が難しいという問題もあります。
このように、独立系の制作会社は様々な問題を抱えるなかなかリスクの高い道ではありますが、自由を優先したのか、はたまたクリエイターの矜持からなのか、一時は大企業の傘下に入るものの、経営方針が合わずに離脱した動画工房のような制作会社もあります。
<独立系の制作会社> ※()内は代表作品
- ぴえろ
(『NARUTO』『BLEACH』『キングダム』『うる星やつら』『おそ松さん』など) - スタジオ雲雀
(『MAJOR』シリーズ『暗殺教室』など) - ブレインズ・ベース
(『夏目友人帳』シリーズなど) - ぎゃろっぷ
(『おじゃる丸』『こちら葛飾区亀有公園前派出所』『遊☆戯☆王』シリーズなど) - 動画工房
(『ゆるゆり』『刀剣乱舞』など) - J.C.STAFF
(『とある魔術の禁書目録』『灼眼のシャナ』『ゼロの使い魔』など) - bons
(『鋼の錬金術師』『僕のヒーローアカデミア』『交響詩篇エウレカセブン』など) - P.A.WORKS
(『ウマ娘 プリティーダービー』『花咲くいろは』『SHIROBAKO』など) - MAPPA
(『呪術廻戦』『ユーリ!!! on ICE』『ゾンビランドサガ』など)
アニメ制作会社の生存戦略
その① 現在の制作会社の仕組み
その② 独立系の制作会社
その③ 自社作品に出資する制作会社
その④ 大企業の庇護下に入る制作会社
その⑤ 企画・配給会社が新設した制作会社