静岡のプラモニュメントが増殖・進化している件 前編 プラモニュメントとは?

先日プライベートで静岡に行ったので、新たに追加されたというプラモニュメントを見てまいりました。
そこで今回は良いい機会なので、現時点でのプラモニュメントの総まとめをしてみたいと思います。

知らない方もいると思われますので、まずはプラモニュメントとは何ぞや?というところから。
静岡市※1は、バンダイのプラモデル生産拠点であるバンダイホビーセンターがあったり、タミヤ、ハセガワ、AOSHIMAといったプラモデルメーカーの創業地でもあり、日本全国のプラモデル製造品出荷額の8割以上を占めるプラモデル王国です。
このことから、静岡市では、毎年5月に全国のメーカーが出店する静岡ホビーショーが開催されており、神籬-himorogi-でもレポートしたことがありました。

2020年2月に静岡市博報堂ケトル静岡博報堂と包括連携協定を締結して地方創生プロジェクトに乗り出しました。
そこで企画された「静岡市プラモデル化計画※2の一環で、「模型の世界都市・静岡」の認知度向上を図る施策として誕生したのがプラモニュメントだったというわけです。

2024年11月現在までに設置された12か所13基のプラモニュメントを一挙にご紹介していきます。
初めて登場したのは、JR静岡駅前に設置されたもので、同日に静岡ホビーショーの会場となっているツインメッセ、静岡市役所前にも設置されました。

【No.001 模型の世界首都 静岡】 2021年3月19日設置:静岡市
【No.002 BOXアート】 2021年3月19日設置:静岡市

【No.003 模型の世界首都 静岡】 2021年3月19日設置:静岡市
【No.004 郵便ポスト】 2021年3月19日設置:静岡市

ここまでの4つが第1弾の設置で、市の予算による制作・設置のモニュメントとなっています。
【No.001 模型の世界首都 静岡】【No.003 模型の世界首都 静岡】は、台座がついていて、人型の前に立って写真を撮影することが想定されています。

当時、文字モニュメント※3が話題となっており、プラモニュメントはこれに触発されて制作されたものと思われます。
ただの模倣ではなく、プラモデル要素を取り入れたのは素晴らしいアイデアで、オリジナル性や汎用性も含め、非情に優れたプロジェクトと言えるでしょう。

ただし、当初はまだ未熟さがあったものと思われる点も見られます。
文字モニュメントの場合、太文字フォントを使い、背景となる風景から浮き出るようなカラーリングで作ることで、背景に映える立体物を創出していました。
しかし、プラモニュメントの場合は、ランナー※4や文字も細いので、フラットな背景でないと文字が読み取り難くなってしまう欠点があります。
その欠点を充分に理解しないまま設置されてしまったと思われる【No.001 模型の世界首都 静岡】は、ごちゃごちゃした駅前が背景となっているために、撮影すると文字がくっきり見えない、なんとも残念な写真になってしまうのです。
【No.003 模型の世界首都 静岡】の方も背景はフラットではないものの、カラーリングが赤であるおかげでくっきり見えて良い感じです。

試しに背景を静岡の茶畑なんかに変えてみると、文字くっきり浮き出て見えると思いますがいかがでしょう。

設置者たちも、設置してみてこの欠点に気づいたものか、その後のプラモニュメントでは、設置場所や背景状況を考慮したカラーリングとなっていて、欠点をカバーしている様子が見受けられます。

もう一点、汎用性について言えば、【No.004郵便ポスト】が挙げられます。
ランナーにはパーツと共に、完成品のポストが付いており、単なるモニュメントではなく、実用の郵便ポストとして使用されているのです。
これが文字モニュメントとは異なる点で、実用道具との融合というユニークさや見た目のインパクト、さらには、登録有形文化財にもなっている静岡市庁舎本館をバックに映える写真が撮影でき、ロケーション的にも抜群ということもあり、SNSでも話題となりました。

正直なところ、【No.001 模型の世界首都 静岡】【No.003 模型の世界首都 静岡】のプラモニュメントだけでは、文字モニュメントの亜種くらいの印象しかなく、そこまでの話題性を獲得できなかったものと思われます。
現在の高評価や認知度は、この【No.004 郵便ポスト】のおかげだと言えるではないでしょうか。

モニュメントというものは、とかく実生活とは無縁の飾り的なものになりがちです。
そのため、飽きられて見向きもされなくなると、メンテナンスも疎かになり、数年~数十年後には老朽化で撤去などということにもなりかねません。

しかし、実用のものに織り交ぜるやり方の場合、街や生活に溶け込み、永続的に設置され続ける可能性が高まります。
もちろん嫌悪感を持つようなデザインの場合、市民からクレームが出ることもあります。
しかし、そこを考慮して、不快にならず、市民に受け入れやすいようなデザインすれば、逆に市民に親しまれるスポットとなることもできるでしょう。
そうなれば、ちゃんとメンテナンスもされ、たとえ老朽化しても、撤去でなく、リニューアルされて再設置という形で永続的なモニュメントになっていくはずです。


次回に続く。

〈了〉


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※1 あくまで静岡市の取り組みであって、静岡県でのものではありません。

※2 「静岡市プラモデル化計画」の活動はプラモニュメントの設置だけではなく、プラモデル業界に関わる人たちによる全10回の講座「ものづくりプラモデル大学」や、「プラモデル選手権大会」などの各種イベント開催、ランナー回収BOX設置、ランナー跡キャンペーンなど多岐にわたります。

※3 文字モニュメントが話題になりはじめたのは、2013年に設置された「What’s NiiGATA」モニュメントです。
インスタ映えスポットとしてネットやマスコミに取り上げられたことで、これを模倣したものが全国に普及していきます。

2023年に放送されたTBSドラマ『VIVANT』では、赤坂サカスに文字モニュメントが設置され、これに出演者がサインを書き込み、これを目当てに番組ファンが訪れる聖地的なスポットとなっていました。

※4 ランナーというのは、組み立て前のプラモデルの部品とつながっている枠のことです。
鋳造(成型)の際に、金型に流し込んだ液状のプラスチックが各パーツへと辿り着くための細長い流路で、プラスチックが固まった時に長方形の枠のようになっているもの。