静岡のプラモニュメントが増殖・進化している件 中編 プラモニュメントの進化ポイント

前回はプラモニュメントの第1弾として設置された【No.001模型の世界首都 静岡】【No.004郵便ポスト】までを取り上げましたが、今回はその続きです。

プラモニュメントの良いところは、単なるバリエーション違いを増設していくのではなく、新規制作にあたり、その都度進化していっていることにあります。
今回は。設置順に各プラモニュメントを紹介すると共に、その進化のポイントも解説していきたいと思います。


【No.005 公衆電話】 2022年3月13日設置 NTT西日本

【No.004 郵便ポスト】同様、実用稼動している公衆電話のプラモニュメントです。
そのユニークさとインパクトで【No.004 郵便ポスト】と共に話題となり、プラモニュメントの代表的存在となっています。
アクセスの良い駅構内であることもあり、他のものに比べて最も人々の目に触れる機会も多く、注目度も高い存在と言えるでしょう。

この【No.005 公衆電話】は、「静岡市プラモデル化計画」のプロジェクトに賛同した企業が制作・設置する取り組みの第1弾で、NTT西日本によるプラモニュメントです。
【No.004 郵便ポスト】までは第1弾ということで静岡市の制作・設置でしたから、ここからがプロジェクトの本来の形であるところの、地場産業と協力して地域活性化を図る活動のはじまりであるわけです。

この【No.005 公衆電話】を含め、プラモニュメントは2022年10月のグッドデザイン賞を受賞し、デザイン・広告業界的にも認められる存在となりました。

<プラモニュメントの受賞歴>
第55回日本サインデザイン賞 金賞(2021年)
62nd ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS 総務大臣賞/ACCグランプリ(2022年)
第60回JAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール 屋外・交通広告部門グランプリ(2022年)
GOOD DESIGN AWARD 2022 グッドデザイン賞(2022年)
第76回広告電通賞 総合賞(2023年)※自治体として史上初の受賞
釜山国際広告祭 シティブランド部門グランプリ(2023年)

【進化ポイント】
◆ 実用稼動するものとの融合
◆ 人目につき、且つアクセスしやすく天候にも左右されない駅構内というロケーション
◆ 壁前に設置することで形状がはっきりわかる(写真映え)


【No.006 金庫扉】 2023年2月3日設置 静清信用金庫

こちらは静岡市に本店を置く地元の信用金庫のプラモニュメント
コーポレートカラーのグリーンに着色されているので、静清信用金庫のことを知っている人ならば、遠くからでも、車で前を通った際などでも、ひと目で信用金庫のモニュメントだとわかるわけです。
もちろん、近くに寄ってみても、金庫をモチーフに、静清信用金庫のオリジナルキャラクターである「かけるくん」もパーツに組み込まれていて見応えがある作りになっています。

【進化ポイント】
◆ コーポレートカラーで着色することで、賛同企業のPR効果UP


【No.007 徳川家康公甲冑】 2023年4月1日設置 静岡市

2023年度の大河ドラマ『どうする家康』とのコラボで、作中で松本潤演じる徳川家康が着ていた「金陀美具足」がモデルとなっています。
プラモデルらしさや金色の豪華さ、駿府城の外堀に架かる城代橋というロケーションも含め、話題性やインパクト、写真映えも抜群。

テレビ番組 ×地元の歴史的偉人である徳川家康 × 地元産業のプラモデル × 駿府城というロケーション
という幾重にも要素が重なる、これ以上ないくらい理想的なプラモニュメントと言えます。

商売が上手い人なら、これを実際に1/100サイズでプラスチック成型して記念品として観光案内所で配布もしくは販売するところでしょう。
あるいは、これをそのまま原寸大で樹脂成型して(兜、面頬、胴、刀などの一部のみ)、紐などで簡単に着られるように加工して販売するのも良いかもしれません。

【進化ポイント】
◆ テレビ番組との初コラボ
◆ メディア×地元の歴史×地元産業×ロケーションという多重要素


【No.008 HOTEL WING】 2023年8月10日設置 ミナシア、ヨシコン

ホテルウィングを展開する株式会社ミナシアと、商業施設や外資系企業の誘致などのエリアマネジメントを含めた不動産開発を手掛けるヨシコン株式会社が設置したものです。
通りに面したホテル前に設置されたもので、【No.006 金庫扉】と同じくコーポレートカラーで着色されているため、ホテルの看板の役目を担っています。

【No.008 HOTEL WING】では、ホテル前に設置されたこのプラモニュメントのみならず、ホテル館内各所の装飾や案内表示もこのプラモニュメントのデザインが採用されているのが、新しい試みとなっています。
プラモニュメント自体は平面的で際立った特徴が見られないのですが、同施設内にランナーをあしらったデザインを取り込むことで、施設一体で「静岡市プラモデル化計画」プロデュースという印象になっているのです。

【進化ポイント】
◆ 施設内にプラモニュメントデザインの意匠を導入


【No.009 日の出プラモニュメント】 2023年8月12日設置 清水港振興株式会社

これまでは実際のプラモデルキットを模して、直線的なランナーにパーツが付いた形でしたが、こちらは、ランナー自体が富士山や波をイメージしたデザインとなっています。
パーツを含めて全体で一つのアート作品かのようになっていることが特徴で、面白味よりも、デザイン性を重視した印象です。
ただし残念なのは、この建物のすぐ近くには、駿河港越しに富士山を見られる絶景スポットがあり、そこへ設置すれば抜群のフォトスポットになったはずなのに、イベントホールである清水マリンビル前に設置されていることです。
カラーリングが水色であるために、海や富士山を背景にすると目立たないと考えたのでしょうか。

【進化ポイント】
◆ ランナー自体を変化させてアート作品化


【No.010 灰皿】 2023年12月25日設置 日本たばこ産業

スタンド灰皿のパーツをランナーに付けたデザインで、目隠しのためにランナーの隙間に半透明パネルが取り付けられています。
喫煙所の壁面と一体となっているのが特徴で、壁面の装飾の一部になっているわけです。

【進化ポイント】
◆ 設備の装飾の一部として融合


【No.011 清涼飲料自動販売機とベンチシート】 2024年2月28日設置 サントリービバレッジソリューション

こちらも実用可能という点においては【No.004 郵便ポスト】【No.005 公衆電話】と同様ですが、観光客などが利用することが少ない電話やポストと違い、誰でも比較的利用しやすいものであることがポイント。
実際にベンチに座って写真を撮るも良し、記念に自販機で飲み物を購入することもできるというわけです。
過去の教訓からか、ちゃんとフラットな壁の前に設置していて、写真映えもバッチリ。

惜しむらくは、自販機で販売しているのが普通の飲料水であることです。
ここでしか入手できない限定商品などがあれば、より特別感が出て記念にもなることでしょう。

【進化ポイント】
◆ 誰でも利用しやすいベンチと自販機


【No.012 病院】 2024年3月29日設置 静岡済生会総合病院

こちらは大きな病院の前のもの。
今回訪れた際には、うまい具合に黒い車が後ろに停車してくれていたのでまだマシですが、白い車だったりしたらほとんど何が象られているのか見えなかったでしょう。
病院だから白という発想なのは理解できますが、建物がクリーム色なので、背景が透けて形がハッキリしないというプラモニュメントの弱点がモロに出てしまっています。
さらに言えば、四角いレリーフ部分は白の凹凸が浅すぎて何が描いてあるのか近くに寄ってみないとわかりません。

凹凸レリーフはこれまでになかったものなので、もしかすると、背景が透けてしまう弱点克服のための模索なのかもとも考えられます。
この四角いパネル部分が、凹凸レリーフでなく、切り抜きになっていて、白以外の色であれば、背景に溶け込まずに形を浮き上がらせることができたかもしれません。
であれば、弱点克服と共に新たな可能性の兆しともなる進化の途中との解釈もできそうです。

【進化ポイント】
◆ 凹凸レリーフ


【No.013新幹線】 2024年10月10日設置 静岡ターミナル開発株式会社

こちらが10月に設置された新作プラモニュメントです。
パーツは新幹線N700系で使われていた座席で、ちゃんと稼動する行先表示機が付属しています。
電源コードなどが見られないことから、バッテリー駆動のようです。

一般の方々には伝わらないかもしれませんが、プラモファンの間では、ガンプラに代表されるバンダイのプラモデルでお馴染みの多色成形が再現されているのもポイントです。

【進化ポイント】
◆ 動く電動パーツ
◆ 多色成形

〈了〉


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