6月15日はスタジオジブリができた日

6月15日は、38年前に徳間書店の出資によって株式会社スタジオジブリが設立した日です。
現在は小金井市にあるジブリですが、設立当初は吉祥寺駅近くの現存のビルの2階にありました。
名称の由来はサハラ砂漠の「熱風(ghibli)」からとのことですが、「Ghibli」というのは第二次世界大戦中のイタリア空軍の偵察爆撃機の名前でもあり、こちらの方が戦闘機好きの宮崎駿らしい感じがします。

1984年公開の劇場版アニメ『風の谷のナウシカ』の商業的な成功をきっかけに、『風の谷のナウシカ』を作ったアニメ制作会社トップクラフトを改組して作られたのがスタジオジブリです。
したがって、現在はジブリ作品として認識されている『風の谷のナウシカ』は、実はジブリ作品ではなく、厳密にはトップクラフト作品だというわけです。

初代社長に就任したのは徳間書店社長の徳間康快で、実質的な経営責任者は旧トップクラフトの社長である原徹(ジブリでの役職は常務)でした。
徳間書店は、自社によるアニメ映画興行初参入となる『風の谷のナウシカ』が成功したことや、1978年に創刊したアニメ情報専門誌「アニメージュ」が異例の売り上げを記録したことから、アニメ事業に本格進出することになり、新たなアニメ映画を作ることを決定します。
その作品が『天空の城ラピュタ』であり、スタジオジブリはこの作品を作ることを目的に作られ、元『アニメージュ』編集長でジブリに移籍したプロデューサーの鈴木敏夫が、宮崎駿と高畑勲という2人の天才アニメ監督に作品を作らせるための専用スタジオにしていった経緯があります。

宮崎駿、高畑勲、鈴木敏夫という個性的な3人が組んだスタジオジブリは、『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ』『火垂るの墓』『魔女の宅急便』『おもひでぽろぽろ』『紅の豚』『平成狸合戦ぽんぽこ』『耳をすませば』と名作を次々と生み出しますが、必ずしも順風満帆というわけではありませんでした。

スタジオジブリの沿革をざっくり追ってみると、以下のような感じです。
1997年にはスポンサーである徳間書店に吸収合併されて解散。徳間書店の社内カンパニーとなり、後に事業部化。
1989年の『魔女の宅急便』で興行的に大成功を遂げたことを機に、スタッフを常勤社員化し、研修制度を発足させて毎年定期的な新人採用を開始。
2005年には徳間書店からの分離・独立して2代目のスタジオジブリが誕生。
2013年の『風立ちぬ』公開後に宮崎駿が引退宣言をして2014年に制作部門のスタッフを全員解雇。
2017年に宮崎駿の引退撤回を受け、制作部門の活動を再開し、新人スタッフの募集を開始。
といった具合に、数度の会社組織の変更を経ており、社員の雇用に関しても、安定しているとは言い難いものがあります。

以前のコラム(「アニメ制作会社の生存戦略 番外編 スタジオジブリその③ 経営状況」)でも取り上げた通り、スタジオジブリの決算公告や作品の興行収入額から類推すると、作品制作で多額の出費があるものの、莫大な版権収入を得て毎年確実に利益剰余金が増えているようですから、プロデューサーである鈴木敏夫が各所で喧伝しているような、スタジオジブリの経営がギリギリで大変だという状況とは、大分ギャップがある印象です。

2022年11月にオープンしたジブリパークは、スタジオジブリと中日新聞社の共同出資による新会社の株式会社ジブリパークが管理運営を行っています。
スタジオジブリ本社には、この株式会社ジブリパークから版権使用料が支払われる仕組みとなっており、まだ決算発表もされていないので確かなところはわかりませんが、今後も長年にわたって莫大なお金がジブリに入ってくるのではと予想されます。

スタジオジブリは監督中心主義で、宮崎駿と高畑勲の作品を作るための制作会社という特質を持っており、高畑勲の死後は宮崎駿一人のための専門スタジオのようになっています。
ジブリ作品には、宮崎駿、高畑勲以外が監督を務めた作品も複数ありますが、宮崎駿作品とそれ以外ではやはり興行収入に大きな差があります。しかも、息子の宮崎吾朗以外で、現在もスタジオジブリに所属している人は1人もおらず、宮崎駿への依存度が高い故に、後継が育たないという問題を抱え続けています。

前作『風立ちぬ』から10年ぶりとなる宮崎駿監督の新作『君たちはどう生きるか』は、2023年7月14日に公開予定と発表されていますが、昨年12月に1枚の作品ポスターが公開されて以降、公開まで1か月を切った現時点でも、PVはおろか、ストーリーやキャラクター、出演声優など一切の情報が公開されていません。
鈴木敏夫プロデューサーによると、これまでにない新しいマーケティング方針のため、意図的に事前の情報公開をしていないとのことですが、この異例の戦略が功を奏するのかは、今のところわかりません。

とは言え、鈴木敏夫プロデューサーが築いたジブリブランド=宮崎駿ブランドは、日本人の間に確実に浸透していますから、宣伝などしなくとも客は入ると見込んでいるのかもしれません。
宮崎駿は今年82歳になることもあり、巷では今度こそ本当に最後の長編作品になるのではとも噂されていますから、尚更でしょう。これまで宮崎作品を見て来たファンたちは、最後の作品を見届けようと映画館に足を運ぶことが予想されます。

引退宣言と撤回を繰り返している宮崎駿ですから、今回で本当に引退するかも定かではないものの、年齢から考えれば、そう遠くない未来に引退の時期は必ず訪れるはずです。
宮崎駿が引退した場合、スタジオジブリの超高額な制作費を回収できる見込みはありませんので、制作を続けるのは自殺行為とも言えます。
制作継続の選択肢は考えられない以上、アニメ制作会社ではなくなって、過去の作品のライセンスを原資に商売を継続する版権管理会社として継続していくのでは、との見方が有力なようです。

それではあまりに夢がありませんから、会社に蓄えている資金で、後の世に宮崎駿の遺伝子を継承させるための活動に出資し、若いクリエイターたちに映画作りをする機会を与えることで、宮崎駿を継ぐような人材を生み出そうと試みるものか、『君たちはどう生きるか』以降のスタジオジブリの動向に注目したいと思います。


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