アニメ聖地3.0 ~アニメ聖地文化の新たな潮流~

先のコラム(東映アニメーションがメタバース事業に乗り出した件)で触れた「Web3」は、次世代のワールド・ワイド・ウェブとして提唱されている概念で、ブロックチェーン技術によって実現した分散型インターネットのことを指します。
情報の発信者(ホームページの公開者)と閲覧者の関係が一方通行だったWeb1.0から、SNSなど情報の発信者と閲覧者が双方向コミュニケーションするWeb2.0へと移行したネット世界がさらに発展して、特定のプラットフォームに依存しない新しい在り方に移行するというのがWeb3の概念です。

WEB世界の発展と完全に同期するわけではありませんが、アニメの聖地巡礼文化も、同じように3段階の変化(進化)を遂げてきている共通点があることから、同じフォーマットで名前を付け、定義づけを試みたいと思います。
名前を付けて分類することで、聖地巡礼文化の発展の系譜がより理解しやすくなることを期待します。

アニメ聖地1.0

  • アニメの作品内で描かれた現実の場所や、背景美術や建物のモデルとなった場所を特定し、現地へ訪れて作品の追体験をしたり、撮影をしたりする熱心なアニメファンによる活動。
  • デジカメやインターネットの普及により、blogなどを通じて聖地巡礼の情報交換が行われるようになる。
  • 制作会社などアニメを制作・提供する側では想定していないファン発信の独自行動。
  • 聖地巡礼でファンが訪れるようになった地域の自治体が、ファンの来訪を歓迎するための行動を起こし始める。

アニメ聖地2.0

  • 『らき☆すた』の鷺宮神社初詣が報道されたことで聖地巡礼というファン行動が一般認知され、『君の名は。』などのヒットにより、聖地巡礼文化がアニメファンだけではなく、一般の人々にまで普及し始める。
  • 聖地巡礼というファン行動を知った自治体や観光協会、企業などが、聖地巡礼による集客効果や地域活性化などを期待して、地域を舞台にしたアニメに制作段階から協力したり、地域のPRアニメを制作したりするようになる。
  • 学術関係者も「アニメツーリズム」という名称で、地域活性化や経済効果などの視点から聖地巡礼文化について研究するようになり、地域や経済への影響を期待する展望を啓蒙し始める。

アニメ聖地3.0

  • 実在する場所を舞台にした作品にしか発生し得なかった聖地巡礼が、似ている場所を見つけたファンが訪れ聖地化することで、架空の世界を舞台している作品にまで波及。このことにより、どんな作品でも聖地巡礼の対象となり得る可能性が生まれる。
  • ジブリパークやニジゲンノモリ、ムーミンバレーパークをはじめ、アニメの作中で描かれた架空の世界を現実に作り出すことで、架空の世界を描いた作品でも聖地巡礼をしたいというファンの需要を満たす施設が次々に誕生する。
  • 作品の舞台地=聖地という概念が拡大し、作品に関連がある場所なども聖地として認識されるようになり、作品のモニュメントなどがある場所や、駅名や地名などが登場人物と同じ名前の場所なども巡礼対象となる。
  • 自治体が版権会社などとコラボでして、アニメのデザインマンホールや銅像を作って、新たなファンの来訪スポットを生み出す。
  • 鳥取県境港市の水木しげるロードや、鳥取県北栄町にあるコナン通りなども、後発的にファンが来訪できるスポットを生み出したという点でこれに該当します。

簡単に言えば、ファン発信の活動に過ぎなかったアニメ聖地1.0から、聖地巡礼を意識した作品が作られるようになったアニメ聖地2.0、そこからさらに発展して、アニメの聖地を人工的に作り出すアニメ聖地3.0といったところでしょうか。

次回、神籬が提唱する、アニメ聖地の発展を表す名称「アニメ聖地3.0」について、もう少し詳しく解説していきます。


「アニメ聖地3.0」についてさらに詳しく