タツノコプロのことをふりかえってみた件 ⑧ 『マッハGoGoGo』の放送とアメリカでの人気

前回は、『マッハGoGoGo』の作品内容、さらにはスポンサーが決まらず1年間もお蔵入りになって1億円もの借金を抱えてしまったことを取り上げましたが、今回はその続きです。

スポンサーなしでの放送開始
結局、読売広告社はスポンサーを見つけられず、フジテレビの編成局長の判断で『マッハGoGoGo』を局で買い上げてくれることになり、スポンサーなしでの放送が決まります。
つまり、スポットCM※1というものです。

放送が決まらないまま制作だけが進んでいた結果、放送開始時には、すでに3話分の制作済ストックがあったとのことですから驚きです。
放送が始まったものの、第1~2話は2週にわたって異例のCMなし放送。その後はスポットCMが放送されたようですが、これを断行したフジテレビもスゴイと言えるでしょう。

アメリカで人気爆発
こうして1997年1月9日からフジテレビの毎週日曜19:00~19:30枠で放送が始まった『マッハGoGoGo』は、初回の視聴率こそ6.6%と振るわなかったものの、放送が進むにつれて人気は上がっていき、タツノコプロの資料によると平均視聴率は13.9%。
宇宙エース』の平均視聴率16.5%よりも劣るものの、同年放送の『悟空の大冒険』(虫プロ・毎週土曜19:00~19:30)の平均視聴率が17.6%、『リボンの騎士』(虫プロ・毎週日曜18:30~19:00)の平均視聴率が12.3%なので、決して悪くはない成績と言えそうです(ちなみに、1963~1966年放送の『鉄腕アトム』の平均視聴率は27.4%)。

海外(アメリカ)では、ほぼ同時期に『Speed Racer』のタイトルで放送され大ヒットとなり、先のコラムで触れたように、海外販売を視野に入れた戦略が見事にはまったわけです。
アメリカでは、タツノコプロから1991年にライセンスを取得してスピード・レーサー・エンタープライズという会社が作られ、オリジナルのコミックやオリジナルのテレビアニメ、様々な玩具・商品が幅広く展開されたため、日本国内における認知度よりも、アメリカでの認知度の方が高い逆転現象が起きています。

2008年には『マトリックス』シリーズで知られるウォシャウスキー姉妹によるハリウッド映画『Speed Racer』が製作され、2013年にはフラッシュアニメ映画『Speed Racer: Race to the Futur』も作られました。

Speed Racer(2008)
Speed Racer: Race to the Future(2013)

2022年には、J・J・エイブラムス率いる製作会社バッド・ロボットとワーナー・ブラザースがタッグを組み、Apple TV+で実写ドラマ化する企画が進んでいることが報じらており、このことからも、現在活躍するクリエーターたちの中に、子供の頃に見て作品のファンとなった者たちがいることが伺えます※2

次回に続く。

〈了〉


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※1 スポットCMというのは、企業が番組スポンサーとなって番組製作費を出資し、その番組枠で自社のCMを流すタイムCMとは異なり、特定の番組を指定せず、企業の提示する予算に合わせた放送枠に、放送局のおまかせで放送されるCMを指します。
ターゲット層を絞らず、とにかく露出を増やしたい企業にとっては、1回分の負担額が抑えられ、放送回数を増やせるメリットがあります。
番組の直接のスポンサーではないため、番組内における「〇〇社提供」といったクレジット表示もありません。

※2 クエンティン・タランティーノ監督も作品のファンを公言しており、『キル・ビル』に登場した栗山千明演じるGOGO夕張の名前は、『マッハGoGoGo』が由来となっている程。