令和のリメイク、リブート作品をまとめてみた件
7月17日に公式X(旧Twitter)のライブ配信で『らんま1/2』の完全新作的アニメ(再アニメ化)の詳細が発表されましたが、近年、昭和・平成時代のアニメ作品のリメイク・リブート作品が次々に制作されて話題となっています。
これまでもリメイク作品はありましたが、『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』、『シャーマンキング』などが好評だったこともあり、オリジナル企画が通りにくく、異世界モノも飽和状態にある中、こうした知名度の高いタイトルのリメイク作品が企画会議で通りやすい、というかスポンサーのGOサインが出やすいという状況があるのかもしれません。
そこで今回は、令和を一つの区切りとして、令和元年以降のリメイク・リブート作品をまとめてみたいと思います。
<リメイク>
2019年(令和元年)
『どろろ』(1969年)→『どろろ』(2019年)
『フルーツバスケット』(2001年)→『フルーツバスケット』(2019~2021年)
『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』(1998年劇場公開)『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』(2019年劇場公開)
『キャプテン翼』(1983~1986年)→『キャプテン翼』(2018~2019年・2023~2024年)※第1期は2018年(平成30年)から始まっています。
『銀河英雄伝説』(1988~2000 OVA)→『銀河英雄伝説 Die Neue These』(2018年・2019年・2022年・2023年)※第1期は2018年(平成30年)から始まっています。
2020年(令和2年)
『魔術士オーフェン』(1998~2000年)→『魔術士オーフェンはぐれ旅』(2020年・2021年・2023年)
『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(1991~1992年)→『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(2020~2022年)
2021年(令和3年)
『シャーマンキング』(2001~2002年)→『SHAMAN KING』(2021~2022年)
『美少女戦士セーラームーン』(1992~1997年)→『劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal』(2021年)・『劇場版 美少女戦士セーラームーンCosmos』(2023年)※リメイクシリーズは2014~2016年まで3期にわたって配信・放送『美少女戦士セーラームーンCrystal』から始まっています。
2022年(令和4年)
『東京ミュウミュウ』(2002~2003年)→『東京ミュウミュウ にゅ〜♡』(2022~2023年)
『スプリガン』(1998年劇場公開)→『スプリガン』(2022年Netflix独占配信)
『機動戦士ガンダム』第15話「ククルス・ドアンの島」(1979年7月14日放送)→『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』(2022年6月劇場公開)
『うる星やつら』(1981年10月~1986年3月)→『うる星やつら』(第1期 2022~2023年・第2期 2024年)を放送
2023年(令和5年)
『TRIGUN』(1998年)→『TRIGUN STAMPEDE』(2023年)
『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』(1996~1998年)→『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』(2023年7~12月)→『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱』(2024年10月~)
2024年(令和6年)
『バーテンダー』(2006年)→『バーテンダー 神のグラス』(2024年4~6月)
『狼と香辛料』(2008年・2009年)→『狼と香辛料 MERCHANT MEETS THE WISE WOLF』(2024年4月~)
『UFOロボ グレンダイザー』(1975~1977年)→『グレンダイザーU』(2024年7月~)
2025年(令和7年)以降
『ベルサイユのばら』(1979~1980年)→『ベルサイユのばら』(2025年新春劇場公開予定)
『剣勇伝説YAIBA』(1993~1994年)→『YAIBA』(完全アニメ化決定)
『らんま1/2』(1989~1992年)→『らんま1/2』(2024年10月5日~)
『魔法騎士レイアース』(1994年10月~1995年11月)
テレビアニメ30周年を機に新アニメ化プロジェクト発表
『北斗の拳』『ONE PIECE』のリメイクも発表されています。
[追記]
2024年7月21日に、約26年ぶりとなる『地獄先生ぬ~べ~』の新アニメ化が発表されました。
<リブート>
『シティーハンター』(1987~1990年)→『劇場版シティーハンター 〈新宿プライベート・アイズ〉』(2019年2月劇場公開)・『劇場版シティーハンター 天使の涙』(2023年9月劇場公開)
『聖闘士星矢』(1986~1989年)→『聖闘士星矢: Knights of the Zodiac』(2019年・2020年)
『妖怪人間ベム』(1968~1969年)→『BEM』(2019年)
『デジモンアドベンチャー』(1999~2000年)→『デジモンアドベンチャー:』(2020~2021年)
『魔神英雄伝ワタル』(1988~1989年)→『魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸』(2020年)→『魔神創造伝ワタル』(制作決定)
『ハクション大魔王』(1969~1970年)→『ハクション大魔王2020』(2020年)
『バトルアスリーテス大運動会』(1997~1998年)→『バトルアスリーテス大運動会 ReSTART!』(2021年)
『とんでも戦士ムテキング』(1980~1981年)→『MUTEKING THE Dancing HERO』(2021年)
『ひぐらしのなく頃に』(2006~2007)→『ひぐらしのなく頃に業』(2020~2021年)・『ひぐらしのなく頃に卒』(2021年)
『蒼き伝説 シュート!』(1993~1994年)→『シュート!Goal to the Future』(2022年)
『デ・ジ・キャラット』(1999年)→『令和のデ・ジ・キャラット』(2022~2023年)
『ビックリマン』(1987~1989年)→『ビックリメン』(2023年)
『悪魔くん』(1989~1990年)→『悪魔くん』(2023年Netflix独占配信)
『ドラゴンボール』(1986~1989年)→完全新作『ドラゴンボールDAIMA』(2024年秋~)
※今年3月に亡くなった原作者・鳥山明が生前に大きく関わっており、ストーリーから新キャラクターのデザインも手掛けています。
「ぴえろ魔法少女シリーズ」(1983年7月~1998年9月)
第1作『魔法の天使クリィミーマミ』最終話の40周年を機に新作テレビアニメの制作を発表
<続編のアニメ化・続編新作アニメ>
『Fate/stay night』(2006年)→『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』(2017年・2019年・2020年劇場公開)
※2014~2015年放送の『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』から始まったリメイクシリーズの続編で、間桐桜をヒロインとするルートの劇場版アニメ化作品三部作。
『中華一番!』(1997~1998年)→『真・中華一番!』(2019年・2021年)
『宇宙戦艦ヤマト』(1974~1975年)→『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』(2021年・2022年劇場公開)→『ヤマトよ永遠に REBEL3199』(2024年7月劇場公開)
※2018年から始まったリメイク版アニメシリーズの続編
『BLEACH』(2004~2012年)→『BLEACH 千年血戦篇』(2022年・2023年・2024年)
※千年血戦篇の第3クールが2024年10月から放送予定
『SLAM DUNK』(1993~1996年)→『THE FIRST SLAM DUNK』(2022年12月劇場公開)
『キン肉マン』(1983~1986年・1991~1992年)→『キン肉マン 完璧超人始祖編』(2024年7月~)
『モノノ怪』(2007年)→『劇場版モノノ怪 唐傘』(2024年7月劇場公開)
『君に届け』(2009~2010年・2011年)→『君に届け 3RD SEASON』(2024年8月~)
リメイクの新しい傾向
リメイク(再アニメ化)の際には、時間が経っている作品程、旧作品の出演声優のランクが上がっていたりして※1予算の都合で採用できなかったり、その時代の旬の声優を起用したいというプロデューサーの意向だったりが反映されるので、基本的には声優を一新するのが通例となっています。
逆に、旧作品の主要キャストを多く続投させたことで、旧作のファンの支持を得た『SHAMAN KING』のような例外的な作品もありますが、それでも主役の浅倉葉役は、佐藤ゆうこから日笠陽子へと変更されていました。
スタッフにしても、前作との差別化を図る意図からも、別の監督に任せるのが一般的です。
ところが、『狼と香辛料 MERCHANT MEETS THE WISE WOLF』については、ロレンス役の福山潤とホロ役の小清水亜美は旧作のまま。さらにはノーラ役の中原麻衣、マルク役の小山力也、ディアナ役の渡辺明乃などはおろか、近年ほとんどアニメ出演のなかった千葉紗子※2すらも、旧作からアマーティ役を続投となっており、主要キャストは旧作と同じ声優を起用しています。
スタッフも、制作会社こそ異なるものの、監督は旧作と同じ高橋丈夫監督が務めており、この辺り、同じプレイヤーたちによるリメイクというのは異例と言えるでしょう。
発表されたばかりの『らんま1/2』も、乱馬役の山口勝平、らんま役の林原めぐみ、天童あかね役の日高のり子をはじめ、主要キャストのほとんどが旧作キャストのまま※3となっており、リメイク作品に旧作と同じ声優を起用するというのも、今後は通例になっていくのかもしれません。
リメイクブームの背景
近年、こうしたリメイク、リブート作品が多くなっている背景には、ヒットするかわからないオリジナル作品はリスクが高く、このリスクを避けたがるスポンサー、いわゆる製作委員会の傾向があります。
夢のない話になってしまいますが、これからはリメイクが流行りそうだからリメイクを狙おうとか、映像技術が進んだから過去には描けなかった表現ができるといったポジティブな理由というよりは、リスク回避と成功率を上げるという単純なビジネス判断によるものという方が実状に近い気がします。
もちろん、立場によっても制作意図は異なるでしょう。
決定権を持つ出資企業(製作委員会)としては、前述通りビジネスの成功率UP+リスク回避であるものの、原作出版社としては、原作単行本の売上UPや、過去作品を新たな世代にも売り込み、新規ファンを獲得することでコンテンツの延命を図りたいという意図があるでしょうし、クリエイターにとっては、過去作品とは違う新たな表現で描きたいといった具合に、様々なはずです。
ビッグタイトルでかつて大きな支持を得た作品であれば、ストーリーや世界観、キャラ設定はそのままで良く、そこへ力を注ぐ必要はありません。
その分、作画や演出のクオリティを上げたり、演技力がある大物声優を起用できたりといったことに、より多くのお金や時間を投入できるので、作品がヒットする可能性が増すわけです。
作品の扱いやすさの面でも、連載継続中の作品を原作とした場合、これからどう展開するのか、人気が維持されるのかわからないというリスクや、アニメ化して人気が出ても、原作の進行具合によってはすぐには続編が作れないというリスクがあります。
その点、完結していて完成度が高く、実績のあるビッグタイトルの方が、投資価値が高くリスクも低いのは当然のことでしょう。
また、ビジネスターゲットとしてのアニメファンたちの高年齢化という面もあります。
完全新作のアニメよりも、昔懐かしいタイトルの方を見てしまいがちな層の人たちが増えており、そこに訴求できるものを作っているのだと、作り手側の事情ではなく、需要側の変化に適応しているとの看方もできます。
これを、アニメ業界が、より高い利益を求めてシビアなビジネス思考にシフトしていると看るか、リスクを抱えられる程に余裕がなくなっていると看るか、あるいは余裕がないからシビアになっていると看るかは、意見の分かれるところかもしれません。
〈了〉
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※1 声優はランクによって出演料が決まっていて、キャリアによる自己申告でランクが上がり、新人のジュニアランクから、ランク15~45(出演料1万5000円~4万5000円)までのランカー、上限のない都度交渉になるノーランクと、ランクが上がるごとに出演料が高くなります。
※2 千葉紗子は30歳を迎えると同時に結婚を発表し、翌年から声優活動を縮小し、持ち役であった『ストライクウィッチーズ』の坂本美緒役も降板。一時は休業するも、その後、『クレヨンしんちゃん』などで年数回のゲスト出演という頻度で声優業を続け、2017~2019年には、『コードギアス 反逆のルルーシュ』劇場版三作品にも参加していました。
※3 旧作放送から30年以上経過しており、九能帯刀役の鈴置洋孝、久遠寺右京役の鶴ひろみ、八宝斎役の永井一郎、コロン役の麻生美代子が他界されています。
旧作で天道早雲役を演じた大林隆介(78歳)は高齢なためか参加されておらず、緒方賢一(82歳)もナレーションに留まっています。
<新作キャスト>
早乙女乱馬:山口勝平
らんま:林原めぐみ
天道あかね:日髙のり子
天道なびき:高山みなみ
天道かすみ:井上喜久子
天道早雲:大林隆介 → 大塚明夫
早乙女玄馬:緒方賢一 → チョー
響良牙:山寺宏一
シャンプー:佐久間レイ
ナレーション:中村正 → 緒方賢一