終わらないコンテンツをまとめてみた件
「オワコン」という言葉があります。
これは、話題性が途絶え、人々の興味や関心が薄れてしまった「終わったコンテンツ」を意味する略称です。
2010年頃に流行ったネットスラングで、一頃に比べて使用頻度は減っているようですが、最近では逆に、「終わらないコンテンツ」がトレンドとなっているように思われます。
『どろろ』、『フルーツバスケット』、『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』、『SHAMAN KING』、『東京ミュウミュウ』、『魔術士オーフェン』などが次々にリメイクされ、昨年12月から今年の8月末まで公開されていた『THE FIRST SLAM DUNK』の記憶も新しく、先日も『北斗の拳』の連載開始40周年企画による新作製作発表や、『キン肉マン』の新作アニメ放送決定のニュースが相次ぎ、この手の話題が尽きません。
先のコラムでも取り上げましたが、近年のファンたちは(あるいは昔から)、お気に入りのキャラクターを見続けたいという欲求を持ち、コンテンツが終わらないことを希望する傾向があります。
コンテンツの提供側にとっても、新しいコンテンツの開発よりも、既存の人気コンテンツを継続する方がリスクもコストも軽減できることから、両者の求めは一致しているとも言えるでしょう。
そこで今回は、そうした「終わらないコンテンツ」の例をまとめてみたいと思います。
現在も放送が続いている国民的アニメ(長寿アニメ)である『サザエさん』、『ドラえもん』、『それいけ!アンパンマン』、『ちびまる子ちゃん』、『クレヨンしんちゃん』、『忍たま乱太郎』、『しましまとらのしまじろう』、『名探偵コナン』、『ポケットモンスター』、『ONE PIECE』に、『プリキュア』シリーズ、『カードファイト!!ヴァンガード』シリーズ、『NARUTO』・『BORUTO』など、加えてキャラクターアニメではないガンダムシリーズ、マクロスシリーズは除外します。
『ゲゲゲの鬼太郎』(69年間)
1954年の紙芝居から始まり、1960~1964年にマンガが貸本、マンガ雑誌にて発表されました。
1968~2020年にかけてテレビアニメ6シリーズが放送され、1985~2008年に劇場版8作品が公開。
2008年には『墓場の鬼太郎』がアニメ化。1985年には実写テレビドラマ化、2007~2008年に実写映画2作品が公開。
2023年11月に新作劇場版アニメ『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』が公開予定。
『ルパン三世』(56年間)
1967~1969年に「WEEKLY漫画アクション」にてマンガが連載。
1971~2022年にかけてテレビアニメ6シリーズが放送され、1989~2019年にテレビスペシャルの長編27作品を放送。
1978~2019年には、OVA3作品、劇場版7作品、2013年には『名探偵コナン』とのコラボ映画、スピンオフの劇場版3作品が公開。
1974年、2024年には実写映画が公開され、2017年にスピンオフテレビドラマ『銭形警部』が、2024年10月13日からはPrime VideoでAmazon Original映画『次元大介』が配信予定。
『宇宙戦艦ヤマト』(49年間)
1974~1981年にアニメ全3期が放送され、1977~2009年にかけて劇場版5作品が公開。
2010年には木村拓哉主演の実写映画『SPACE BATTLESHIP ヤマト』が公開。
2012~2022年にかけてリメイク版シリーズがテレビ版2作品、劇場版5作品が放送・公開。
2023年12月に1977年、1978年に公開された旧劇場版2作品の4Kリマスター版が劇場公開予定。
『うる星やつら』(45年間)
1978~1987年に「週刊少年サンデー」にてマンガが連載。
アニメは1981~1986年に放送され、1983~1991年にかけて劇場版6作品を公開。1986~2008年までにOVA12作品が制作されました。
2022年にリメイク作品第1期が放送され、第2期が2024年1月に放送予定。
『キン肉マン』(44年間)
1979~1987年に「週刊少年ジャンプ」にてマンガが連載。2011年から『週プレNEWS』『週刊プレイボーイ』にて連載を再開し、現在も連載中。
アニメは1983~1986年に放送された後、続編が『キン肉マン キン肉星王位争奪編』が1991~1992年に放送。
2024年から新作アニメ『キン肉マン 完璧超人始祖編』が放送予定。
この間、『キン肉マンII世』のマンガ連載、アニメ全3期も放送。
『キャプテン翼』(42年間)
1981~1988年に「週刊少年ジャンプ」にてマンガが連載。
続編マンガである『キャプテン翼 ワールドユース編』(1994~1997年)や『キャプテン翼 ROAD TO 2002』(2001~2004年)、『キャプテン翼 GOLDEN-23』、『キャプテン翼 海外激闘編』(2009~2012年)が「週刊少年ジャンプ」にて連載され、その後は「グランドジャンプ」「最強ジャンプ」と掲載誌を移して『キャプテン翼 ライジングサン』(2014~2019年)、『キャプテン翼 KIDS DREAM』(2018~2021年)が連載され、2022年から連載が始まった『キャプテン翼 BOYS DREAM』が「グランドジャンプ増刊 キャプテン翼マガジン」で現在も連載中です。
アニメは1983~1986年に第1作目が放送された後、1994~1995年に第2作、2001~2002年に第3作、2018~2019年に第4作とリメイク作品が放送され、2023年10月からは第4作の続編(第4作シーズン2)として初めてアニメ化される「ジュニアユース編」が放送を開始します。
『北斗の拳』(40年間)
1983~1988年に「週刊少年ジャンプ」にてマンガが連載。
アニメは1984~1988年に全2期放送。1986年に劇場版、2003~2004年にOVA『新・北斗の拳』全3巻。2006~2008年に『真救世主伝説 北斗の拳』が劇場版とOVAで展開。
1995年にはハリウッドで実写映画が製作されました。
2023年9月に生誕40周年を記念して完全新作アニメが制作されることが発表されました。
『ドラゴンボール』(39年間)
1984~1995年に「週刊少年ジャンプ」にてマンガが連載。
アニメは、1986~1996年に全2期が放送され、1996~1997年には新作オリジナルテレビアニメ、2009~2015年には2作目(『ドラゴンボールZ』)アニメのデジタルリマスター版(『ドラゴンボール改』)を放送。
1986~1996年にかけて劇場版17作品が公開。
2013~2022年にかけては原作者・鳥山明が制作に参加する形で新たに始動したシリーズとして、劇場版4作品が公開。
2015~2018年にはオリジナルテレビアニメ『ドラゴンボール超』を放送。
バンダイナムコによるゲーム展開が活発で、特に2015年の『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』の大ヒット以降、家庭用ゲーム機、スマホ用、アーケード用含め、毎年新作ゲームがリリースされています。
2024年秋には、完全新作のアニメシリーズ『ドラゴンボールDAIMA』を展開することが発表されています。
『シティーハンター』(38年間)
1985~1991年に「週刊少年ジャンプ」にてマンガが連載。
アニメは、1987~1991年に全4作品、テレビスペシャル長編3作品が放送、1989~1990年にかけて劇場版3作品が公開。
2001~2010年にはリメイクマンガ『エンジェル・ハート』が「週刊コミックバンチ」にて連載され、2005~2006年にアニメ化、2015年に実写テレビドラマ化。
1993年にはジャッキー・チェン主演で実写映画も作られました。
集英社から編集プロダクションの新会社コアミックスに本作品の版権を移した関係で1999年からアニメ製作が中断していたものの、2019年にアニメ製作が再開され、2019年に新作『劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ』、2023年9月に『劇場版シティーハンター 天使の涙』が公開。
『トランスフォーマー』(38年間)
タカラトミーの変形ロボット玩具シリーズを基にしたメディアミックス作品で、1985~2016年までにテレビアニメが20作品、OVA5作品、劇場版3作品が放送・発売・公開。2010~2021年にはWEBアニメ4作品を配信。
2007~2023年にハリウッド映画が製作・公開。
2023年10月から新作テレビアニメ『トランスフォーマー アーススパーク』が放送開始。
『美少女戦士セーラームーン』(31年間)
メディアミックス作品として、1992~1997年に「なかよし」にてマンガが連載。
テレビアニメも1992に放送を開始し、1997年までに全5期が放送。劇場版は1993~1995年に3作品が公開。
2003~2004年には、実写版テレビドラマが放送されました。
2014~2016年にかけてリメイク版アニメ『美少女戦士セーラームーンCrystal』が全3期配信。
新旧テレビアニメでは描かれていないマンガ版の第4期を映像化した劇場版2作品を2021年に公開。
同じくマンガ版の第5期を映像化した劇場版2作品が2023年6月に公開。
『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』(29年間)
1994~1999年に「週刊少年ジャンプ」にてマンガが連載された後、2017年から続編が「ジャンプスクエア」にて連載中。
アニメは1996~1998年に放送され、劇場版が1997年に公開。1999~2012年にかけてOVA3シリーズが発売。
2012~2021年にかけて実写映画5作品が公開。
リメイク版のテレビアニメが2023年7月から放送中。
『魔法少女まどか☆マギカ』(12年間)
2011年放送。2012~2013年に総集編2作+新作1作の劇場版を公開。
外伝ゲーム『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』が2017年にリリースされ、2020~2022年にアニメ全3期が放送。
新作映画『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』が2024年冬に公開予定。
ざっと代表的なものを挙げてみましたが、それでも結構な作品数があります。平成時代には、手塚治虫作品やタツノコプロ作品も積極的にリメイク作品を手掛けていましたが、原作者や当初のスタッフが失われてしまったこともあり、テレビという大勢が認知する媒体での露出を維持できなかったことで、上記の作品に比べ継続性が低い状態に陥っています。
いまだにキャラクター商品が販売されてはいるものの、専門グッズを扱うリアル店舗などもなく(唯一存在していた浅草のアトム堂本舗も2020年から休業中)、作品も過去作品が中心で、両者とも新たなIPの開発はできておらず、飛躍に課題を持っている様子が伺えます。
手塚治虫作品に関しては、『火の鳥 望郷編』を原作とする新作アニメ『火の鳥 エデンの宙』がDisney+にて9月に配信され、エンディングが異なる新作アニメ映画『火の鳥 エデンの花』が11月に劇場公開される予定とのことで、新たな動きを見せているので、古典作品になりつつある手塚治虫ブランドの復興に期待したいところではあります。
東映は、自社の中期経営計画で、リメイクや配信、商品展開などにより過去作への接点を拡大することで、コンテンツの認知度を維持し、2世代目、3世代目のファンを作り、未来へと繋いでいくという「エバーグリーンマーケティング戦略」を掲げています。
『鬼滅の刃』は例外的でしたが、アニメやマンガ作品の多様化や作品数の飛躍的な拡大により、昭和のアニメタイトルのように、国民の大多数が知っている作品というものが生まれ難くなっています。
そのため他の会社も、新規IP開発と同時に、東映のような戦略を進めざるを得ない時代になってきているはずです。
したがって、このような動きは今後ますます広がってくるものと推察され、まだサルベージされていない過去作品への注目度が増していくことになると思われます。
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