9月3日はドラえもんの誕生日
ドラえもんは、2112年9月3日にロボット工場で生まれ(製造され)ました※1。
過去形で表記しましたが、未来のお話なので、実際には89年後に誕生する予定というわけです。
『ドラえもん』は、藤子・F・不二雄が1969~1997年に小学館のマンガ雑誌に連載していた作品で、1973年に日本テレビで初めてアニメ化(前26回)された後、1979年にテレビ朝日で再アニメ化されて現在も放送中というわけです。
25周年目にあたる2005年4月にキャストの総入れ替えやキャラクターデザインの変更など大幅なリニューアルを行ったので、業界的には現在のシリーズを第2作の第2期というのが一般的となっています。
昭和時代の子供向けアニメ全盛期には、藤子不二雄アニメが人気で、『オバケのQ太郎』、『パーマン』、『忍者ハットリくん』、『怪物くん』をはじめ数多くの作品が次々に放送されていました。
多い時には週に5~6作品以上も放送されていることもあったものの、青年・大人向けアニメが主流になるにつれて数を減らし、フジテレビで8年間放送されていた『キテレツ大百科』が1996年に放送終了となり、テレビ東京で1年半放送されていた『モジャ公』が1997年に放送終了すると、再放送を除いて現役放送しているのは『ドラえもん』のみという状況となりました。
2000年代では、『笑ゥせぇるすまんNEW』が1クール放送したのみで、21世紀に入ってからは、ほぼ『ドラえもん』だけしか放送されていないため、今の若い世代は藤子不二雄作品と言えば『ドラえもん』しか知らないという人たちも多いかもしれません。
他作品とは異なり、『ドラえもん』のみが長年放送され続けられ、国民的アニメとまでになった理由は、いくつか考えられます。
一つには「ひみつ道具」が挙げられるでしょう。
毎回種類の異なる「ひみつ道具」というお題で、ストーリーものではない1話完結のお話を無限に作れるということが大きいはずです。
同じ国民的アニメでも『名探偵コナン』であれば毎回新たな事件が起こり、『それいけ!アンパンマン』であれば毎回異なるキャラクター、『ポケットモンスター』であれば毎回異なるポケモンを取り上げることができるという同じ構造を持っています。
『ちびまる子ちゃん』、『クレヨンしんちゃん』などはコメディ作品なので、毎回新たな笑いのネタを作るという、『ドラえもん』とはまた異なるタイプの作品です。
『サザエさん』はコメディという程お笑い方面に走っていないので、分類的には、なかなか特殊な作品と言えるかもしれません。
『ONE PIECE』などは、ストーリーものであるにもかかわらず20年以上も続いている驚異的な作品でさらに特殊な存在ですし、『プリキュア』シリーズは毎年新作に衣替えすることで新陳代謝させている作品です。
「ひみつ道具」をお題にした頓知話的な作品構想も理由に挙げられるでしょう。
様々な「ひみつ道具」を出し、それをどう使うか、という頓知話のような構造で、昔話や落語のような恒久的に親しまれているお話の特性を持っているので、人々に飽きられないのではと考えられるのです。
ドラえもんの「ひみつ道具」が万能ではないために、道具だけで全てが解決するものではなく、そこにはのび太の努力や創意工夫などが必要だったり、時には解決できずに失敗したり、調子に乗って痛い目を見たりといったものもあるので、毎回異なるお題で作られる新作落語をアニメとして見せられているようなものなわけです。
次点で言えば、短編でも長編でも話が作れる汎用性や、子供目線での楽しみ方、大人目線での楽しみ方など、幅広いファン層がそれぞれの楽しみ方ができる懐の深さなども理由として挙げられるでしょう。
困りごとを生み出すのび太にそれを助けるドラえもん、ガキ大将のジャイアンに太鼓持ちのスネ夫、ヒロインのしずかちゃんなどのキャラクターが明確な役割をもとに配置されていることも、人間関係や物語の構図をわかりやすくしていることもあります。
原作者である藤子・F・不二雄(藤本弘)は1996年9月23日に62歳で亡くなっており、遺作となった『ドラえもん のび太のねじ巻き都市冒険記』の連載※2が1997年に終了してから26年以上もアニメは続いているわけです。
原作マンガの連載期間が28年間で、累計発行部数は『ONE PIECE』に次ぐ第2位。2020年時点での全世界累計発行部数が3億部を記録しています。
アニメは現在のシリーズで言えば1979年からなので44年間で、『サザエさん』に次ぐ長寿番組です。
このままいけば、50年、100年と続いていくことも充分に考えられます。
アニメでは、毎年ドラえもんの誕生日直近の放送で誕生日記念番組が放送されるのが恒例なのですが、仮に2112年まで放送が続けば、リアル誕生日記念番組が放送されることになるわけです。
なかなかに夢のあるお話だとは思いませんか?
※1 初期の設定ではドラえもんの誕生日は2012年9月3日でした。
マンガの連載が始まったのが1969年12月ですから、当時からすれば2012年は43年後で、21世紀というのは近未来であり、古くから『ドラえもん』を見ていた世代には、「21世紀の未来からやって来たドラえもん」という設定が浸透しているはずです。
しかし、21世紀が始まった2001年からは21世紀は未来ではなく現在であり、2012年9月3日もすでに過去で、ドラえもんが誕生していることになってしまうわけです。
そこで、現在では2012年という設定を改め、2112年と100年先に延ばし、「22世紀の未来からやって来たドラえもん」という設定に変更されているのです。
この変更については正式発表とかはありませんしたが、変更されたのは、1989年公開の映画『ドラえもん のび太の日本誕生』からだと言われています。
ちなみに、ではそもそもなぜ2012年9月3日だったか、と言うと、これはドラえもんの身長である129.3cmに起因します。
のび太たちは小学4年生という設定で、ドラえもんが子供たちと同じ目線になるようにということから、当時の小学4年生の平均身長である129.3cmを採用したのですが、藤子・F・不二雄はこの数字にこだわって、他のいろんな寸法にも採用しています。
・身長:129.3cm
・体重:129.3kg
・胸囲:129.3cm
・頭の周り:129.3cm
・足の長さ:129.3mm
・パワー:129.3馬力
・ネズミを見たときに飛び上がる高さ:129.3cm
・ネズミを見たときに逃げる速さ:時速129.3km
この一環で、ドラえもんの誕生日は2012年9月3日になったというわけです。
※2ドラえもん のび太のねじ巻き都市冒険記』は『月刊コロコロコミック』に全6回連載されましたが、連載第3回を執筆中の藤子・F・不二雄が意識を失って病院に搬送され死去したため、第3回は残された下書きをもとに完成させ、以降4~6回は、藤子・F・不二雄のアイデアノートや結末を聞いていた編集者たちとの話し合いの上で、チーフアシスタントである萩原伸一たち藤子プロのスタッフたちによって制作されたとのことです。