静岡が盛り上がる方法を考えてみた件② 家康と駿府城 前編

家康が足りない

静岡市は徳川家康に縁が深い地であることから、静岡駅前に大きな家康像があったり、これまでも家康推しをしてきました。
昭和期は、徳川家康は英雄として描かれて人気が高かったものの、大河ドラマでも昭和59年(1983年)放送の『徳川家康』以降、徳川家康がカッコ良く描かれることが少なくなり、『独眼竜政宗』、『葵 徳川三代』、『天地人』、『軍師官兵衛』、『真田丸』と、晩年のタヌキと呼ばれた老獪な印象のキャラクターとして描かれることが多くなり、多くの作品では主人公の敵役としての役回りを演じることの方が増えました。

CAPCOMの戦国アクションゲーム「戦国BASARA」の武将総選挙2020 でも徳川家康は第6位。
2019年放送のテレビ朝日の「国民10万人がガチ投票!戦国武将総選挙」では第5位、2020年の「最も愛される戦国武将ランキングベスト30」では第5位。
昭和期は、家康、織田信長、豊臣秀吉の3英雄が拮抗する人気でしたが、その後ゲームやアニメの影響もあって、現在では信長人気が圧倒的で、次点で真田幸村や伊達政宗に人気が高まる中、幸村や政宗の敵役として描かれることが多くなった家康の人気がやや鈍ります。

ところが、平成時代はやや下火になっていた徳川家康人気は、令和となり、2023年の大河ドラマ『どうする家康』で主役を演じる松本潤の人気もあって再浮上しています。

しかし静岡市では、2019年には「今川義元公生誕500年祭」と称し、徳川家康ではなく今川義元を推す動きを見せています。翌2020年には、静岡駅北口に今川義元の銅像も設置されました。
一方、愛知県岡崎市では2019年に日本最大級の騎馬像となる徳川家康像を設置しています。

今川義元は元々人気が高い武将ではありません。
前述の「国民10万人がガチ投票!戦国武将総選挙」でも第23位でした。
浮気をせず、岡崎のように徳川家康を推して家康スポットを増やしていたら、今ごろは『どうする家康』人気に便乗して静岡をPRする材料になっていたとも思われます。

静岡市内で家康スポットと言えそうなものは、静岡駅前の徳川家康の銅像と竹千代時代の銅像、駿府城公園にある徳川家康の銅像くらいです。

最大の家康スポットである久能山東照宮は静岡市清水区(旧清水市)で、静岡中心部からは大きく離れています。
今川家への人質時代の家康が学問を学んだ「家康公手習之間」がある清見寺も清水区で、市内とは言え電車で数駅も先にある東の端です。

同じく人質時代の家康が学問を学んだもう一つの寺である臨在寺にも「竹千代御手習いの間」があり、こちらは葵区で静岡中心部からも近いのですが、建造物・庭園内は普段は非公開となっており、今川義元の命日にあたる5月19日と摩利支天祈祷会が執り行われる10月15日の年2回しか一般公開されていません。

静岡市の市街地に程近い静岡浅間神社は家康の元服式が行われた神社で、武田氏との戦いで消失したものを駿河領有後の家康が再興させ、江戸時代は徳川将軍家から手厚く庇護されるようになりました。
しかし、現在の社殿は幕末頃に再建されたもので、縁はあるものの、歴史に詳しい人ならいざ知らず、家康と直接関係するようなわかりやすいものは見られないので、歴史に明るくない人にとっては、単なる絢爛豪華な神社としてしか認識されないかもしれません。

2006年に清水区の久能山近くにオープンした「徳川家康ミュージアム」は、家康の蝋人形などが展示されていた施設でしたが、採算が合わず経営上の理由で2010年に閉館。
2020年10月末に運営会社が変わって再オープンしていますが、市内在住の人にすらあまり知られていない施設です。
(施設の公式Twitterのフォロワー数は2023年5月時点で39。施設の公式サイトはなく、施設を擁するリバティーリゾート久能山のサイト内にわずかに記載があるのみです)

家康御手植えのみかんの木とか、子供時代の家康が遊んだ神社だとか、細かいものを挙げればたくさんありますが、どれもインパクトに欠け、写真映えするようなものもなく、集客力には乏しい印象のものばかりです。

静岡出身の筆者の認識では、家康ゆかりの地である静岡市内には、もっとたくさんの家康スポットがあるものだと思居込んでいましたが、今回改めて調べてみると、予想に反して家康スポットが少なくて驚きました。
静岡市にはもっとがんばってもらい、市内に家康スポットを作っていただきたいところです。

家康の姿をデザインしたマンホールの設置や、ラッピング自販機・ポストなど簡単に取り組めそうなものは数多くあります。戦国武将の肖像などは面倒な版権関係もありませんから、やろうと思えばいくらでもできそうです。

家康の肖像だけではなく、駿府城の堀周囲に、徳川四天王、徳川十六神将といった家臣団のデザインマンホールを設置して回遊させたり、葵の御紋のマンホールを設置したり、駅周辺や繁華街に葵の御紋や家康の馬印を描いたフラッグや幟を掲げたりと、巨額の費用や長い期間をかけずとも実施できそうな施策も多いはすです。

人質時代と隠居後に過ごしたということで、駅前や駿府城公園には静岡市内には幼少期と晩年の姿の像がありますが、駿河領有から関東移封までの天正年間にも駿府城にいたので、壮年期の像などがあっても良さそうです。
ぜひともカッコいい騎馬姿の家康像を新設して欲しいものです。
金陀美具足を着け、具足部分だけ金箔張りをしたら、写真映えも抜群な上、唯一無二ともなるので、話題性も相まってSNSでの拡散力も高いモニュメントとなるでしょう。

バンダイでは「MG 1/100 武者ガンダムMk-II 徳川家康Ver.」というプラモデルが販売されていますから。等身大の武者ガンダムを市内に設置するのも良さそうです。

大河ドラマ『どうする家康』では、現在のストーリー上、岡崎や浜松がメイン舞台となっており、駿府(静岡市)はあまり出てきません。また、今後もおそらく京都や江戸、大阪が舞台となるはずで、隠居後に駿府が出てくるのは、物語の終盤となることが予想されます。

5月5日に行われた「浜松まつり」では、松本潤が参加した家康公騎馬武者行列に2万人超の観覧客が集まる盛り上がりぶりが大きく報道されて、Twitterのトレンド入りもしていました。
一方、これより前の4月1日に静岡市で行われた「静岡まつり」では、今川氏真を演じた溝端淳平が大御所花見行列に参加するも、「浜松まつり」程には大きく報じられず、このことを見ても、浜松に完全にお株を奪われている印象です。今後の静岡がこれを巻き返すことできるか、静岡出身者としては期待を込めて見守りたいと思います。


次回に続く。

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