3月7日は『美少女戦士セーラームーン』の放送が始まった日
1992年3月7日、テレビ朝日系土曜19:00~19:28枠にて、テレビアニメ『美少女戦士セーラームーン』が放送を開始しました。
多くの人は、テレビアニメ『美少女戦士セーラームーン』を、武内直子が連載していたマンガのアニメ化した作品だと思っていますが、厳密に言うとそれは正しくありません。
当時、武内直子が描いていたマンガは、『美少女戦士セーラームーン』ではなく『コードネームはセーラーV』でした。
後の『美少女戦士セーラームーン』では、セーラー戦士の一人セーラービーナスとして登場する愛野美奈子が主人公として描かれたもので、読切作品として講談社の「なかよし1991年8月号増刊 るんるん」での掲載された後、連載が決定します※。
1991年には、後に『美少女戦士セーラームーン』が放送されるテレ朝土曜19:00枠で、「るんるん」の姉妹誌である「なかよし」の連載マンガを原作とするテレビアニメ『きんぎょ注意報!』が放送されていました。
1年間で放送を終了する予定となっていた『きんぎょ注意報!』の後番組の企画を検討中だった関係者が、この『コードネームはセーラーV』に目を付けたのがアニメ企画のスタートとなります。
ところが、アニメ化に当たり、「セーラーV」の名称がセーラー万年筆株式会社の登録商標に引っ掛かるとして使用できないことがわかり、企画を変更せざるを得なくなりました。そこで生み出されたのが『美少女戦士セーラームーン』だったというわけです。
元々『コードネームはセーラーV』は、るんるんの担当編集が、武内直子に「セーラー服を着た美少女によるアクションもの」を提案して描かれた作品でした。
これを長編アニメ企画として練り直すことになり、武内直子は、特撮番組の『美少女仮面ポワトリン』や『スーパー戦隊シリーズ』を参考に、舞台はかつて自分が住んでいた東京都港区麻布十番という設定とし、高校時代に天文学部だった頃の知識なども盛り込み、企画が出来上がっていったとのことです。
こうして作り上げられた『美少女戦士セーラームーン』は、アニメ放送に先行して「なかよし」1992年2月号から連載が開始されます。
『リボンの騎士』や『キューティーハニー』などのように戦う美少女作品は数多くあるものの、「美少女による戦隊モノ」は過去に例がなく、連載初回から読者アンケートで1位を獲得し、単行本は初版部数が50万部を突破する程の人気作品となりました。
アニメ版は、『きんぎょ注意報!』の後番組として、1992年3月から放送を開始します。
『きんぎょ注意報!』と同じく1年間の放送予定でスタートしましたが、スポンサーであるバンダイの玩具の売れ行きが悪かったために半年で打ち切りも検討されたこともあったそうです。
しかし、その後に発売されたセーラームーンの変身アイテム「ムーンスティック」が40万個以上を販売する大ヒット商品となったことで継続が決定し、アニメの方も社会現象と言われる程の人気を獲得したため、続編まで制作されることになっていきます。
つまり、『美少女戦士セーラームーン』は連載されていた既存のマンガのアニメ化ではなく、『仮面ライダー』や『デビルマン』などと同じく、映像化の作品企画におけるマンガ版という位置づけの下、アニメと同時期に連載された、いわゆるメディアミックス作品の一つというわけなのです。
もっとも、開始当初こそメディミックス作品の一つとしてスタートしたものの、アニメはこのマンガ版を元にして制作されていったので、マンガ版『美少女戦士セーラームーン』がアニメ版の原作マンガであることには違いありません。
1992年から始まったアニメは、毎年タイトルを変えての続編が放送され、1997年までにテレビアニメ5作品(全200話)、劇場版は長編3作品、短編2作品が公開されました。
原作マンガの方も、アニメとほぼ同時期である1992年2月号から1997年3月号まで連載されて完結し、単行本18巻(全52話)が発売されています。
2014年から2016年まで原作マンガを忠実にアニメ化したリメイク作品『美少女戦士セーラームーンCrystal』が制作され、第1期「ダーク・キングダム編」と2期「ブラック・ムーン編」(原作の第1~2期をアニメ化)がニコニコ動画を中心にWEBアニメとして配信され(後にローカル局で地上波放送)、第3期「デス・バスターズ編」は深夜アニメとしてローカル局で地上波放送されました。
さらに、旧テレビアニメ版では描かれなかった第4期「デッド・ムーン編」が、『劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal』として、2021年に前後編という形で公開。
そして最終章となる第5期「シャドウ・ギャラクティカ編」が、『美少女戦士セーラームーン Cosmos』というタイトルで2023年初夏に前後編として公開されることが発表されています。
1990年代に女の子だった世代(現在30代の女性が概ねセーラームーン世代)には絶大的に支持されている作品で、当時は女の子アニメのNo.1作品として不動の地位を得ていましたが、その後は続編が全国放送されることがなかったため、近年ではほとんど若年層を取り込めていない事情があります。
そのため、リメイク作品もWEB配信のみであったり、イベントやグッズなども、主に旧来のセーラームーン世代を対象に展開されています。
『美少女戦士セーラームーン』と同じ東映アニメーションが制作する作品で、取って代わるように2000年代から放送を開始した『プリキュア』シリーズは、今年で20周年を迎え、今や20代女性から現役の女の子たちに圧倒的に支持されています。
『プリキュア』シリーズでは、「プリキュア」の名前と作品コンセプトのみを継承し、1年後ごとに新たなキャラクターと世界観を持つ別作品として展開するシステムを採用したため、時代に合わせて如何様にも作品のテーマや内容を変化させられる強みがあります。
一方、『美少女戦士セーラームーン』の方は、同じキャラクターと世界観の中で展開するため、キャラクターを追加していくことはできても、大きく世界観や内容を変化させることができないという制約があります。
また、ストーリー物である以上、物語は進行し、いずれは結末を迎えるため、長期にわたって展開させ、長寿アニメ化させることの難しさもあります。
とはいえ、セーラームーン世代にとっては今なお魅力的なコンテンツたり得る事実は変わりなく、それがたとえ回顧的なものであっても、充分に訴求力を持つものであり続けるでしょう。
また、時代に合わせたチューンナップを施しながら何度もリメイクを繰り返す『ゲゲゲの鬼太郎』のように、『美少女戦士セーラームーン』もリメイクによるシリーズ化に挑戦する価値もあるかもしれません。
旧作ファンも納得する形で変化を加えつつ、且つ『プリキュア』シリーズに負けない程の魅力ある作品を作り上げるのは、非常にハードルが高いものの、『美少女戦士セーラームーン』という作品には、そのポテンシャルは充分にあるように思われます。
神籬では、このようなアニメやSF映画などの作中での架空の出来事が起きた日や、キャラクターや声優、作家などの誕生日、有名作品の放送・連載開始日の他、ツインテールの日やウルトラマンの日などの記念日など、サブカル系ジャンルに関連の深い日付情報を網羅したデータベースを取り扱っています。
日付に紐づくネタイベントや、イベントを仕掛けるために特定の作品の記念日を知りたいをといった要望があれば、ご協力をさせていただきます。
ご興味のある方は、是非問い合わせフォームからご連絡下さい。
アニメ業界・歴史・作品・声優等の情報提供、およびアニメに関するコラムも 様々な切り口、テーマにて執筆が可能です。こちらもお気軽にお問合せ下さい。
※ 『美少女戦士セーラームーン』よりも先に連載が決定していた『コードネームはセーラーV』が実際に連載されたのは、「なかよし1992年4月号増刊 るんるん 春休み号」からです。
『美少女戦士セーラームーン』は、「なかよし」1992年2月号からすでに連載が開始しているので、「るんるん 春休み号」では、『コードネームはセーラーV』に「美少女戦士セーラームーン外伝」という副題が付けられています。