ロボットアニメの実在化について考えてみた件 ④ 映像化企画の失敗例

アニメの未来を考える

実は、2012年12月には東映アニメーション初のオリジナルロボットアニメ『大空魔竜ガイキング』(日本では1976年放送)のハリウッド実写映画化が発表されていたのですが、10年経った現在も実現されていません。

これは東映アニメーション、オールニッポン・エンタテインメントワークス※1、『ターミネーター』や『アルマゲドン』で知られる映画プロデューサーのゲイル・アン・ハード率いるヴァルハラ・エンタテインメントの3社による共同企画というもので、東映アニメーションからはプロデューサーの池澤良幸氏と森下孝三氏が製作に参加することも発表されていました。

共同企画に名を連ねているオールニッポン・エンタテインメントワークスというのは、ほぼ国の出資で設立された投資ファンド・産業革新投資機構※が60億円の全額出資を決定して2011年11月に設立された会社です。
目的は海外展開を目指す映画企画の開発というもので、3年以内にハリウッドで10本の映画版権の提供という目標を掲げ、その第1弾となる企画が『大空魔竜ガイキング』の実写化だったわけです。

ところが、主導的に企画を進める役割を担うはずのオールニッポン・エンタテインメントワークスでは、日本人の執行責任者が次々を交代し、高額報酬で米国在住の経営責任者を雇って米国に拠点を構えるも、結局その役割を果たせず、毎年3~4億円という巨額の赤字を累積していました。

結果、2017年5月にフューチャーベンチャーキャピタル株式会社に株式譲渡されてしまいます。取得額はわずか3400万円でした。当時の報道では、2011年に資本金・資本準備金合わせて6億円が出資され、2013年には5億円、2014年には11.2億円の追加投資を行うも、実現した映画企画は0本という結果で、投資総額22億2000万円が「全損」と大きく報じられていました。

日本映画界のグローバル展開における劣勢は今に始まったことではなく、昭和後期からはガラパゴス化して国内需要ばかりに終始して、海外競争力を失ってしまっている状況を打破できないので、マンガやアニメは海外で支持されているのに、なぜか実写映画や実写ドラマは海外展開が上手く行っていません。
海外でも高く評価されてリメイク作品などが作られている日本作品は、『呪怨』『リング』をはじめとするホラー映画が多いようです。※2。

ハリウッド映画と日本映画では製作費の桁が異なるので、どうしても日本でのロボットアニメの実写映画化は難しいとする専門家も多いのですが、ヒットした『シン・ゴジラ』や『シン・ウルトラマン』の例もあるので、一概に日本では不可能とは言えないでしょう。
日本のお家芸であるはずのロボット作品で、海外作品の後塵を拝しているのは残念なので、ロボットアニメの実写映画化、あるいはオリジナルのロボット映画で、是非とも海外の方々をも魅了するような日本作品が誕生して欲しいと願うばかりです。


※1. 株式会社産業革新投資機構は、国が3,669億9,900万円、民間企業が135億円を出資している官民ファンド

※2. ホラー映画以外の日本映画の海外リメイク例は下記の通り。
『幸福の黄色いハンカチ』(1977年)→『イエロー・ハンカチーフ』(2008年)
『ハチ公物語』(1987年)→『HACHI 約束の犬』(2008年)
『Shall we ダンス?』(1996)→『Shall we Dance?』(2004年)
『タイヨウのうた』(2006年)→ 『ミッドナイト・サン タイヨウのうた』(2018年)
『ゴールデンスランバー』(2010年)→『ゴールデンスランバー』(2018年ドラマ)
ドラマでは、下記の2作品が韓国でリメイクされています。
『いま、会いにゆきます』(2004年)→『Be With You ~いま、会いにゆきます』(2018年)
『リトル・フォレスト 夏/秋 冬/春』(2004~2005年マンガ原作)→『リトル・フォレスト 春夏秋冬』(2018年)