カプセルトイ専門店が物凄い勢いで増殖している件
20年程前までは、ガチャガチャと言えば、アニメショップかデパートの一角、駄菓子屋の前くらいにしかありませんでしたが、その後、『新世紀エヴァンゲリオン』のヒットや、2000年代初めにフルタ製菓×海洋堂が展開したチョコエッグのブームなどの影響で、本屋やスーパーマーケットなどの商店をはじめ、空港や駅、博物館、観光名所などでもガチャ筐体が置かれるようになり、そこかしこにガチャガチャを見かけるようになりました。
ただしその頃は、まだガチャ専門店※というものは珍しい存在で、秋葉原のガチャポン会館など数店舗程しかありませんでした。
ところが近年、「カプセルトイ専門店」と呼ばれるガチャ筐体だらけの無人店舗が急増し、神籬のデータベースに登録のある店舗だけでも、すでに全国で450店を超えています。
ガチャ筐体の設置数が2000面以上もある大型店舗もありますが、概ね500~700面程の店舗が主流なので、仮に1店舗500面だとしても単純計算で20万面以上もあることになり、カプセルトイ専門店以外のガチャ筐体も含めると日本全国を合わせ50万面くらいは余裕でありそうです。もしかすると100万面を超えるガチャ筐体があるかもしれません。
ガチャ筐体は複数の会社が製造している上、筐体自体が市販されているために、商店などが個人所有で使っているものも数多くあることから、全国の設置場所や台数を全て把握するのは不可能に近い気がしますが、他力本願ながら誰か試算して、いったい日本国内に何台(面)のガチャ筐体があるものか、教えてくれないものかと思ってしまいます。
調べてみたら、一般社団法人日本ガチャガチャ協会なる組織もありましたが、ガチャガチャの力で世界の人々に笑顔を届ける活動をしているとのことで、ガチャ関連のイベントなどの企画・主催がメインであって、台数調査や業界情報の発表などは活動の内に入ってはいないようです。残念。
実は、筆者が以前勤めていた会社には、カプセルトイの中身を作っている部署があり、社内の情報やら、担当者から話を聞いたりなど、カプセルトイ業界の内部事情を知る機会がありました。
いろんなお話があるのですが、ここでは一点、利益率の話をご紹介したいと思います。
カプセルトイは上述の通り隆盛を極めている感があるのですが、実は単価が非常に低いという特性から、どんなに製造コストを下げても限界があるので薄利多売にならざるを得ず、数が売れても大きな利益にならないという残念な傾向があります。
さらに、売れても大きな利益にならない上に、当然ながら売れないものも出てくるので、収益性の面での不安定さを抱えることになり、製造業者はどこもかなり苦労されているのではないかと思われます。
BS-TBSの『X年後の関係者たち〜あのムーブメントの舞台裏〜』の海洋堂回で出演した宮脇修一社長(現・海洋堂取締役専務)も、カプセルトイは大ヒットと呼ばれる程に売れても数百万程度の小さな商売にしかならないとボヤいていました。
クオリティに定評のある海洋堂ですから、クオリティを上げても単価が上げられないカプセルトイよりも、ハイクオリティな高額フィギュアを販売した方が良いというわけなのでしょう。
カプセルトイの台数が増えることで、当然中身のトイも増えるわけですが、増えた分だけ売上が上がるとは限らず、在庫の山を抱えて悲鳴を上げる業者もいることが推測され、これ程まで急激に増え続けていることに不安を感じずにはいられません。
しかし、個人的にはガチャガチャが世に広がることは望ましい傾向だと思うので、今後もカプセルトイ業界が成長を維持できるように、業界の方々には創意工夫を持って何とかこの難題を乗り切っていただきたいところです。
※以前は、ガチャ専門店とカプセルトイ専門店は別物で、ガチャ専門店というのは、ガチャ筐体だけを店内に並べた無人店である秋葉原のガチャポン会館などのような店のことで、カプセルトイ専門店というのは、ガチャ筐体は置かずに、ガチャの中身だけを販売する店のことを指しました。
ところが近年では、ガチャの中身だけを販売する店が減り、あるいは駿河屋やBOOK OFFなどの中古玩具を取り扱う店などがそれらを包括するようになり、また、通販の方が主流になったこともあってか、カプセルトイ専門店が目立たない存在になって来ています。
それと交代するかのようなタイミングで、ガシャポンのデパートやガチャガチャの森、TOYS SPOT PALO 、ガシャココ、C-plaなどのガチャ専門のチェーン店が急増し始め、メディアなどがこれらをカプセルトイ専門店と紹介したことで、ガチャ専門店=カプセルトイ専門店という認識が一般化してしまった経緯があります。