「高知県アニメプロジェクト」が始動した件について

アニメの未来を考える

2022年10月11日、高知信用金庫が中心となって進めている「高知県アニメプロジェクト」について、浜田知事や高知信用金庫の山崎久留美理事長らが出席する初めて公開会議(第1回高知県アニメプロジェクト推進会議)が県庁にて開かれ、その模様が各メディアで報じられました。

会議において、山崎理事長は、「アニメクリエイター祭」の県内での開催や、高知市堀詰にアニメ制作オフィスを設置することなどの構想を述べ、浜田知事も、マンガ文化が根付く高知に、アニメ関連産業が集積することを目指していきたいと抱負を語りました。

高知県では、2022年度の産業振興計画に「高知県アニメプロジェクト」を組み入れ、補助金による支援で、事業所新設やクリエイター移住を促進し、将来的には地元の制作会社が高知を舞台にした長編アニメを制作することで、聖地巡礼など観光振興にも繋げたいとの狙いがあるとのことです。

高知県では、今年の1月に当プロジェクト(当時の名称は「高知アニメクリエイター聖地プロジェクト」)を、高知信用金庫と高知県、高知市、南国市、須崎市が官民共同で推進することで合意して記者発表も行っており、この程ようやく本格始動ということのようです。
官民連携を謳っていた1月の記者発表から、さらに、商工会議所、高知大学などもプロジェクトに加わり、産官学が連携して長期的な産業・雇用の創出や地域活性化を目指すとのことです。

昨年、高知市帯屋町に設立されたアニメ制作会社「スタジオエイトカラーズ」では、現在は従業員1名とインターン2名という体制ながら、5年後には100人体制の制作スタジオに成長させる事業計画を発表しています。

浜田知事が語った「マンガ文化が根付く高知」という点にやや疑問を抱く人もいるでしょう。
実はあまり知られていない(それもどうかと思いますが)のですが、高知県は、やなせたかし、はらたいら、黒鉄ヒロシ、徳弘正也、窪之内英策といった数多くのマンガ家の出身地でることから、これらを文化資源として地域振興に役立てようと、「まんが王国・土佐」のキャッチフレーズを掲げ、以前より活動を行っています。
1992年からは高校マンガサークル日本一を決定する「まんが甲子園(全国高等学校漫画選手権大会)」を毎年開催しており、2020年には、公文書館内にマンガをテーマにした施設「高知まんがBASE」を開設しています。
「まんが甲子園」は高校のマンガサークル関係者というごく狭い範囲では知られていますが、一般認知度は低く、「高知まんがBASE」も観光客向けの施設というよりは地元住民向けの施設なため、高知にマンガ文化のイメージを持っている人は少ないのではないでしょうか。

話を戻し、「高知県アニメプロジェクト」についてはまだ計画段階とあって、評価も予測もできませんが、先のコラム「番外編 町おこしの失敗事例の要因をご紹介 中編」でもご紹介したアニメ制作会社誘致の失敗事例があるので、そこでの失敗要因をいかにして回避できるのか、非情に興味深いプロジェクトです。

まずは有力な制作会社の誘致が成功するか、もしくは上述のスタジオエイトカラーズが計画通り大きな会社に成長するかでプロジェクトの成否が大きく変わってくるかと思われますが、1年や2年で成果が出るものでもないので、今後の推移を長い目で見守るしかないでしょう。
もしこのプロジェクトが成功すれば、参入してくる自治体も続々現れて、アニメ制作会社の誘致が自治体政策のトレンドになっていく可能性もあるので、高知県には是非とも頑張っていただきたいところです。


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