番外編 町おこしの失敗事例の要因をご紹介 前編

町おこしは、どんなに好条件が揃っていても成功確率は50/50で、時勢や人的な問題などコントロールできない要因によって、成功する場合も失敗する場合もある、極めて不確実性の高い分野です。
それでも、失敗する確率の方を下げることで、相対的に成功比率を高めることはできます。それは、失敗要因を可能な限り排除することです。
では、排除すべき失敗要因を知るためにどうしたらよいかというと、答えは簡単で、失敗事例から学ぶことです。
今回はそのようなわけで、失敗事例とその要因をいくつかご紹介したいと思いますが、当時の関係者を糾弾することが目的ではなく、あくまで失敗に学ぶことが主旨であることや、過去の失敗を掘り返されることに不快感を抱く方々がいるであろうことを考慮して、具体的な地名や年代、団体名などを伏せる形にさせていただきます。


ブームの後追いは失敗の温床
最も失敗の多い事例は、ブームの後追いです。
ゆるキャラ(ご当地キャラ)、B級グルメ、地域ブランド、ふるさと納税、地域PR動画、アニメ聖地巡礼、萌えおこし、ご当地アイドル、といった、メディアで取り上げられたものに目を付け、後発で参入するケースですが、大概の場合、同じことを考えた自治体や商店街などで溢れかえって埋没してしまい、どんなに広報を頑張っても、世間にスルーされてしまうのが落ちです。

恩恵を受けられるのは、先駆的に取り組んでいた地域だったり、メディアで取り上げられたり、グランプリで受賞した一部の地域のみで、その他の大多数は投じた資金や労力を回収できずに敗者となるしかありません。
メディアに取り上げられた時点で、すでにその分野は競争激戦区となっているはずですから、他を追い抜いてトップになれるという確かな勝算がない限りは、手を出すのは避けるべきでしょう。

また、後追いという時間的な要因とは別に、成功事例をそのまま真似するという点も失敗の要因を孕んでいます。
地理的な特性や住民の構成など、地域によって条件や前提が異なるので、他の地域で成功した方法を、全く同じように実行しても成功するとは限りません。その地域に合ったテーマや方法を選択していく必要があるので、安易な人真似は大きなしっぺ返しを招くことになります。

地域ブランド商品づくりの失敗事例
町おこしで定番となっているのが、地元で開発された「地域ブランド商品」というもので、これも挑戦する地域が多いことから、比例して失敗事例の多い分野です。

よくある失敗例としては、地元の名産品を使った商品が挙げられます。
たとえば、その地域ではネギの集荷量が全国3位内に入る程の名産品だったとして、ネギのエキスが入ったソースや、ネギを練り込んだスイーツ、ネギの形をした和菓子、ネギ柄のエコバックといったものを開発するケースがよく見られますが、それは、ネギで何かを作ることを第1目的とした商品づくりであって、必ずしも消費者が欲しいものではありません。
ネギを使った地元にしかない珍しい商品として、ネタに飢えた地方メディアなどでは取り上げてくれるかもしれませんが、それは一過性のものに過ぎず、在庫の山を作る例が後を絶ちません。

せめて、沖縄の海ぶどうや鹿児島の桜島大根、由比の桜エビなどのように、全国的にそこでしか収穫できないようなレア食材や特産品であればまだしも、ネギは全国的も珍しくない農作物なので、生産量が多いというだけでこれを推すのは、あまりにも無謀です。

名産品をモチーフにしたマスコットキャラクターを作って、それをパッケージや宣伝に使うというのも各地でよく見られますが、それで目を惹かれて買ったとしても、その商品が、類似商品と比べて圧倒的に美味しいなどの各段の優位性がない限りは、リピーターにはなってくれないでしょう。そもそもそんなに美味しいのならば、マスコットキャラクターなどなくとも売れるはずです。
名産品を使っているということだけがトリガーになっているような、地元の人や開発者たちだけが盛り上がるだけの商品作りでは、決して町おこしには繋がらないでしょう。


コンテンツ(名所・特産品・体験)があるだけではダメ
有名な花火大会や桜の名所、有名な特産品や地域ブランド商品、レジャー施設や体験型イベントなどのコンテンツがあっても、局所の出店や土産物屋、製造メーカーや企業などがお金を稼ぐだけで、それが町おこしに繋がるとは限りません。

祭事や大型連休時だけに訪れる客は他へ移りやすく、特産品も通販やデパートなどで買えば済むし、レジャー施設に直行直帰では、地域が活性化しているとは言えないでしょう。
地域を活性化するためには、その地域のファンになってもらい、リピーターになってもらう関係性やストーリー性といったコンテクストが重要で、それがないと、一部の企業や商店が潤うだけで、地域全体が活性化することはないのです。
「地域ブランド商品づくりの失敗事例」とも繋がりますが、名産品や特産品だからそれを使って商品を作りました、というだけではストーリーとしては激弱です。この手の失敗例は各地で驚く程よく見られます。

せめて、地元の英雄である戦国武将が、このネギを食べたおかげで一国一城の主にまでなった出世ネギだ、くらいのストーリーがないとひっかかりがありません。
よさこいや阿波踊りのような伝統舞踊で地元の人たちの姿がとても魅力的だった、というのも地元が生み育んだ文化という点で、一つのコンテクストとも言えるでしょう。
その地域の歴史や習俗、伝説、伝統に由来するものや、地元出身の有名人の好物だとか、わかりやすい地元地域との関係性があって、その地域にあるからこその意味合いがなくては、モノやサービス、イベントなどを地域とセットで好きになってもらうことができないのです。

地元と直接関係のないような面白い企画のイベントを実施して人が集まったとしても、そのイベント自体が面白いだけで、観覧したり参加しただけで直帰されてしまっては、知名度は向上しても、その地元を好きになってくれるとは限りません。イベント目的で訪れた人たちが、地元の人に暖かく迎えられ、親切にしてもらった、といった地元の人との交流や良い体験があれば、また来たいと思わせたり、今度は別の目的で来てみようなどと思わせることができるかもしれません。
実際、アニメの聖地巡礼で成功している地域などは、地元商店とファンたちが作品を通して交流をしていたりして、何のイベントがなくとも、店主に会いに訪れるといった現象さえ起こっています。

次回に続く

神籬では、地域活性化、町おこしなどのご相談を受け付けています。 特にサブカル系コンテンツやアニメ、マンガなどを活用した取り組みに強く、選択すべきコンテンツの指標や、町おこしのアイデア事例(成功・失敗事例)なども含め、データベース化された情報の提供を行うだけではなく、地域の特性や資質に合わせた提案、何もないところから観光資源を生み出す画期的なアイデアの提案、具体的に何から始めればよいのか、コンテンツの選択や手段などを含め、計画の策定から実行まで、幅広く活動を補助させていただきます。 ご興味のある方は、是非問い合わせフォームよりご連絡下さい。