番外編・町おこし事例② サブカル・グルメの祭典「丘フェス」

長野県飯田市では、毎年文化の日である11月3日に「飯田丘のまちフェスティバル」(略称:丘フェス)というイベントが恒例行事となっています。

このイベントの前身は、2007年に開催された「インターナショナル・フィギュア・マーケット」。飯田市は、江戸時代に伝わった人形浄瑠璃を元にした人形芝居が受け継がれ、「人形劇の街」として知られることから、人形=フィギュアという発想を元に、フィギュアをメインテーマとして、商店街のビルのオープニングイベントなどとの合同で開催されたイベントでした。
このイベントは市民に受け入れられ、翌年第2回には、フィギュアを中心とするサブカルにグルメを加えたダブルテーマのイベントとして開催され、以降このスタイルが定着して恒例イベントとなっていきます。

マスコットキャラクターの「ナミキちゃん」が生まれた第6回からは、『アニマトリックス』や『Wake Up, Girls!』など数々の作品を手掛けたアニメプロデューサー・竹内宏彰氏が参加して、ナミキちゃんのイメージソングを作ったりと、さらなる展開を実施しています。
コロナ渦による延期などもありましたが、今年ですでに第14回を数えるまでになったこのイベントは、その継続性や市民からの支持なども含め、間違いなく成功事例と言えるでしょう。

飯田市には、1979年から毎年開催されている国内最大級の人形劇イベント「いいだ人形劇フェスタ」があり、このメインカルチャーのイベントに対し、「丘フェス」はサブカルチャーのイベントという位置づけになっているようです。
市民主体の実行委員会方式で運営されていることから、市税を使って実施した場合には各方面からクレームが出そうなものでも比較的自由に行なえるようで、企画内容を見ても、かなりバラエティーに富んだ催しが開かれています。

フィギュアの即売会や展示会、コスプレなどのサブカルでは定番のイベントから、
・ティラノサウルス塗装コンテスト
・痛車コンテスト
・ハーレー愛好家のバイク展示
・路上アートパフォーマンス
・酒メッセ
・餅投げ
・「高校戦隊テックレンジャー」ショー
・ビンゴ大会
・名車大集合
・ペダルカーレース
・ふれあい動物園
・大道芸
・プラレール広場
・コーヒー市
・学生文化フェスティバル
・消防車に乗ってみよう!
・和太鼓をたたいてみよう!
といった催し物が開催されており、会場は飯田駅を起点とする中央通りを中心とした市街地となっていますが、駅から一番遠い会場は1km程も離れているという、かなりの広範囲となっています。

地元の企業から、町内会、学生たちも参加しており、出店が集うグルメイベントのような大規模なものから、市民による趣味の展示会や学校の部活の発表会といった小規模なものまであり、統一されたテーマに沿ったイベントと言うよりは、それぞれのクラスが個別にテーマを決めて模擬店を出す学園祭のノリに近く、各々の会場で、様々なジャンルの物販や飲食、パフォーマンス、展示、体験会など、参加者がやりたいことを自由にやっているといった印象です。

ある意味、町民が日頃の趣味の演芸や習い事を発表する町内会のお祭りをそのまま大きくしたようなもので、行政や教育委員会などがお堅いことを言わないおかげで、極めて自由度が保たれた状態で行うことができる市民参加型のイベントというわけです。

サブカル系のものは、発表の場や機会を得ないまま、個人的な趣味の世界として家の中でひっそりと楽しむだけで終わってしまうことも多いため、趣味全開で参加することが公然と許され、同じ趣味を持つ人たちと交流できたり、自分の作品を評価してもらえたりもするこのようなイベントは、参加者こそが一番楽しめるもので、その楽しさが見ている側にも伝わることから、意図せず集客にも繋がるという良い循環を生みやすい特性があります。

市民のやりたい気持ちを源にしているので、こうした年1開催のイベントで最も懸念すべき継続性やマンネリ化の問題を難なくクリアでしていることも、「丘フェス」の成功にとって大きな要因になっているのではないかと思われます。

神籬では、地域活性化、町おこしなどのご相談を受け付けています。特にサブカル系コンテンツやアニメ、マンガなどを活用した取り組みに強く、選択すべきコンテンツの指標や、町おこしのアイデア事例(成功・失敗事例)なども含め、データベース化された情報の提供を行うだけではなく、地域の特性や資質に合わせた提案、何もないところから観光資源を生み出す画期的なアイデアの提案、具体的に何から始めればよいのか、コンテンツの選択や手段などを含め、計画の策定から実行まで、幅広く活動を補助させていただきます。ご興味のある方は、是非問い合わせフォームよりご連絡下さい。