サブカル(アニメ・マンガ・他)と町おこしのより良い関係 中編
アニメやマンガ、声優などのコンテンツを活用した町おこしが難しい要因の一つに、版権使用許諾に関する問題があります。
企業などがアニメ作品の版権をサービスに活用しようとした場合、作品の知名度や版権会社によっても割合は異なりますが、4~10%程度の使用料を支払い、その代わりに画像などの提供を受け、販促物などは自社で負担という形が一般的です。自治体などの場合は、公共性の面から概ね3%前後だったり、熊本県のPRキャラクターであるくまモンのように、使用料が無料だったりするケースもあります。
そのため、商店街や商業施設、観光関連の企業がコラボする場合、恒久的なものではなく、期間限定のイベントやキャンペーンという形での活用が多く、その期間だけ人が集まり、終了後は元に戻ってしまうという事例が多く見られます。
最近多く見られるアニメやマンガをテーマにした博物館や美術館などの展示会も、期間だけのものに過ぎず、終了後は跡形もなく地元から姿を消してしまうのが常です。
その期間に、イベントやキャンペーン以外の地元の魅力を知れば、終了後も人が来てくれるという見込みで実施するわけですが、実際にはその効果は極めて限定的なものに過ぎず、なかなか難しいと言わざるを得ません。
有名作品などに比べれば数段落ちるものの、この版権使用による、経済的かつ期間的な問題を回避するために各自治体や商店街などが取り組んできたのが、地元オリジナルのローカルキャラクターやローカルヒーローなどといったものでした。
かつての「ゆるキャラ」ブームもあって、前述のくまモンをはじめ、ふなっしーやせんとくんのような有名なローカルキャラクターも生まれましたが、自治体や企業、商店街、様々な団体組織などが挙って参入した結果、その数は増加の一途を辿り、参加数が最多となった「ゆるキャラグランプリ2015」では1,727体ものキャラクターが参加したというから驚きです。
ローカルキャラクターと比べると圧倒的に少ないものの、ローカルヒーローも同じように年々その数を増やし、現在では全国で推定300以上は存在しているとのことです。
いずれにしても、数が多過ぎるために物珍しさもなく埋没しがちで、効果を上げるのは相当に難しそうです。
となると、方法としては、アニメ・マンガなどの作品版権に頼り、舞台地や出身地などの縁を辿って版権会社や作家(マンガ家)などとの関係性を深め、地元の協力でモニュメントなどを製作して自治体に寄贈してもらうという王道パターンの道を行くか、きっぱり版権モノは諦め、独自の道を歩むかです。
国や自治体の補助金を活用しつつ、地元の有志や企業などの出資で製作したモニュメントなどを自治体に寄贈してもらえば、固定資産税の課税対象から外れるので、恒久的に地元の観光資産となってくれます。
版権会社や作家との良好な関係を結べるかがポイントなので、コネクションや交渉力が必要となりますが、手堅い手法とも言えます。
これとは異なる独自の道というのは、「匂わせ」と「サブカルカテゴリー」です。
「匂わせ」とは何かというと、『ジョジョの奇妙な冒険』の作中に出て来たものを思わせると話題になった石川県の羽咋駅前通り商店街が設置した擬音のオブジェや、米子駅前だんだん広場に設置された『銀河鉄道999』にしか見えない天空に走り出す蒸気機関車の形をした時計塔などのように、版権ものとは似ているだけで別ものだという建前で製作し、絶妙なラインを責めるというものです。
両方とも、それぞれに狙って作ったものかどうかはわかりませんが、ファンが似ているとして話題にした結果、作品名とセットになって独り歩きして、公式と遜色ないくらいの集客効果を発揮してしまったわけです。
「サブカルカテゴリー」の方は何かと言うと、アニメやマンガでよく題材になるものでありながら、非版権のものです。
例を挙げれば、忍者、怪獣、ロボット、妖怪、魔女、悪魔、龍、鬼、妖精、モンスターといったキャラクター系から、織田信長や武田信玄、上杉謙信、真田幸村、伊達政宗、新選組といった人気の歴史人物系、剣や刀、甲冑、銃器、魔法のステッキなどのアイテム系、剣豪、騎士、魔法使い、陰陽師といった職業系、メイド、執事、姫、王子、看護婦、巫女、チャイナ服のようなコスプレ系などきりがありませんが、これらのいずれかに特化したり、町ぐるみで世界観を作り上げて疑似テーマパーク化させるなどの施策で、「〇〇の聖地」と呼ばれるまでに昇華させる方法です。
アニメ・マンガをはじめ、フィクションや物語の世界観を味わいたいという欲求は、古くは源氏物語の名所巡りをしていた江戸時代から、現在のアニメの聖地巡礼文化、アニメ好きが高じて訪日する外国人観光客の日本への憧れなど、古今東西にある根源的なもので、これを満たせる場所を創出することは、これらの潜在的な要求を持つ人たちを誘致するのに非常に有効です。
忍者や戦国武将はすでに多くの地域で取り扱っているので、出来る限り、他が取り組んでいないジャンルを選出すべきで、その地域の特性や文化との相性や、既存のものを活用できるかなど、いろんな要素を検討しなくてはならないでしょうが、的確なものをチョイスできれば、大いに可能性が広がるでしょう。
何と言っても、版権ものと異なり、誰の許可も監修もいらないのですから、工夫次第でいかようにも創り上げていくことが可能なのです。
ただし、マニアやファン相手に付け焼刃や表面的な真似事で取り組むと、似非だとして批判され、炎上騒ぎになるなどのしっぺ返しを受ける可能性もありますから、有識者を顧問に据えて、本格的なものを作り上げる必要があり、この点は注意が必要でしょう。
この「匂わせ」と「サブカルカテゴリー」は、自由度が高く制約が少ない反面、マニアをも認めさせる程のクオリティの高さが求められることもあり、扱う側の本気度が問われるものでもありますが、マニアやファンから支持を受けることさえできれば、ほぼ永続的に維持し続けることが可能な地元の資産となり得ます。
観光や集客だけではなく、テーマに沿ったグッズや地元グルメの開発によって、地元産業や雇用の創出、過疎化対策までもカバーできるかもしれず、単なる町おこしから、地方創生にクラスアップする可能性すら持っているでしょう。
次回に続く
神籬では、地域活性化、町おこしなどのご相談を受け付けています。
特にサブカル系コンテンツやアニメ、マンガなどを活用した取り組みに強く、各アニメ作品の情報やマンガ家、声優などの出身地情報、町おこしのアイデア事例(成功・失敗事例)なども含め、データベース化された情報の提供を行うだけではなく、地域の特性や資質に合わせた提案、何もないところから観光資源を生み出す画期的なアイデアを提案させていただくことができます。
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