サブカル(アニメ・マンガ・他)と町おこしのより良い関係 前編
2010年代は、アニメの聖地巡礼とコンテンツツーリズムを結び付け、各メディアや企業、学術研究者などが、これからアニメを活用した観光ビジネスや町おこしが大いに発展する可能性があるといった未来を展望していましたが、数少ない成句事例に続こうとした試みの多くは失敗に終わり、かつては話題性の高かった聖地巡礼関連のニュースも、以前程にはメディアを騒がせなくなっている印象があります。
要因としては前回取り上げた通り、聖地アニメや聖地の件数自体が増え過ぎて希少価値が失われたことや、『君の名は。』を超えるような聖地アニメのヒット作が生まれなかったこと、さらに企業などにとって、聖地巡礼のビジネス活用の難しさが露呈したことが大きく、企業などが注目しないとなると、当然メディア露出も減るといったわけです。
これは前回挙げませんでしたが、アニメのサイクルにも要因があり、国民的アニメと呼ばれるような長寿アニメを除き、現在のアニメは、1クール(3か月間で12話程度)のみの放送で、ヒットしたら続編が作られるというスタイルが主流となっています。
そのため、作品とのコラボ展開を望む企業は、放送中にコラボ企画を展開するためには、放送前に動き出す必要があり、つまりは青田買いをしなくてはならないわけです。
ところが、日本のアニメは年間400タイトル以上も作られていて、年間に1作品ヒット作が出るか出ないかという極めて低確率の博打のような状態のため、ベットしようとしている作品がヒットするかどうかは誰にもわからない状態。
その上、たとえ良い作品を引き当て、ヒットしたとしても、次々に新しい作品が出てくる中で、続編などが作られないと、あっという間に過去の作品となってしまうという賞味期限という課題もつきまといます。
2020年代になると、コロナ渦による移動制限もあって、企業や自治体にとっても、聖地巡礼を推奨し難い状況ともなりました。
そのこともあって、聖地巡礼は元のアニメファンたちの個人的な楽しみに立ち戻り、自治体や地元企業が聖地巡礼を活用しようという動きも一旦リセットされた感があります。
それに代わるものとして、現在では、テーマパークやデザインマンホール、銅像、モニュメントなど、管理が行き届いた施設や屋外スポットなどを展開・推奨する動きが出てきています。
これからは、確率の低い新作アニメの青田買いのようなものに手を出さず、すでに認知度が高い人気作品などを活用し、新たに観光資源を創出していくのが、有効性の高い方法論としてアニメ活用の主流になっていくでしょう。
有名作家(マンガ家)の出身地や在住地、ゆかりの地、作品の舞台設定地など、多少強引にでも関係性を紐づけて地域活性の素材に活用していくことになり、数に限りがある有名作品や有名作家の取り合いになっていくことも考えられます。
せっかく活用できる関係性を持っているのに、それを知らないでいると、あるいは知っていても動き出さずにいると、みすみす他地域に持っていかれてしまう可能性もあるでしょう。
実際に練馬区などは、テレビアニメの発祥地で有名マンガ家の多くが住む町として、数多くのコンテンツとの関係性を持っていましたが、手塚治虫は高田馬場に持っていかれ、舞台地となっていた『ドラえもん』は神奈川県川崎市の登戸に取られてしまい、後追いでアニメによる活性化事業を始めたものの儘ならず、現在ではアニメ色の強い町という印象すらあまり感じられない区となってしまっています。
関係性がある方が良いには越したことがありませんが、たとえ自分たちの地域には誰とも関係がなく、何とも繋がりがないという地域であったとしても、かなり強引なこじつけでも構いませんし、何なら、まったく関係がなかったとしても、担当者が作品のファンだったといった安易な理由ではじめたって一向に構わないのです。
実際に関係性が薄い、あるいはまったく無関係なところからスタートした事例も少なからずあります。
たとえば、名前の近さから、各所に『オズの魔法使い』のモニュメントが設置されている愛知県名古屋市の大曽根商店街「オズモール」※、60年以上も続く七夕祭りが有名で、星繋がりから全27枚の星座マンホールが設置されているふじの市商店街、地元IT企業のコスプレ好き女性社員の提案からコスプレ大会を実施し、「コスプレの聖地」とまで言われるようになった静岡県の清水駅前銀座商店街など、関係性が薄かったり、全く関係ないものまであります。
しかし、関係の深度と成否は必ずしも比例するものではなく、その後のやる気や工夫次第でいかようにも結果は変わって来るものです。
出身地やゆかりの地であることからのコラボが定番ではありものの、逆に「何で?」と疑問が沸くようなコラボの方がかえって話題になるという傾向も見られるので、いかに話題性やインパクトを持たせられるかのアイデア次第とも言えます。
ゆるキャラ、B級グルメ、アニメ聖地巡礼という波に乗れなかった自治体や商店街、地元企業などでも、これから始めても遅いということはありません。
むしろ、ゆるキャラなどのようなブームは、ふなっしーのような例外的なものを除けば、一部の先駆者しか成功せず、後追いで始めたものは他大勢に埋没してしまうため、大概上手くいきません。
他に手を出していないのであれば、返って色がついていないだけに、世間にとっては新鮮に映ってくれるかもしれませんし、手垢がついていないような新しいジャンルや試みに挑戦して、先駆者となることを目指すべきでしょう。
次回に続く
神籬では、地域活性化、町おこしなどのご相談を受け付けています。
特にサブカル系コンテンツやアニメ、マンガなどを活用した取り組みに強く、各アニメ作品の情報やマンガ家、声優などの出身地情報、町おこしのアイデア事例(成功・失敗事例)なども含め、データベース化された情報の提供を行うだけではなく、地域の特性や資質に合わせた提案、何もないところから観光資源を生み出す画期的なアイデアを提案させていただくことができます。
ご興味のある方は、是非問い合わせフォームよりご連絡下さい。
※同じ大曽根にある大曽根本通商店街の方はローマ字表記の「OZONE」を英語読みにして「オゾンアベニュー」という名称がつけられています。また、大曽根駅西側の地下街にも「OZ GARDEN」という名前が付けられています。