歴史モノのアニメ作品についてまとめてみた件

アニメの未来を考える

近年、『戦国無双』や『戦国BASARA』、『刀剣乱舞』といったゲームの影響や、三谷幸喜脚本で香取慎吾主演の大河ドラマ『新選組!』のヒットもあって、戦国時代や幕末は若者にも人気が波及してブームとなり、鎌倉時代を描いた本年度の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が好評だったり、中国の春秋戦国時代を描いた『キングダム』の人気や、元寇をテーマにしたゲーム『ゴースト・オブ・ツシマ』が世界的ヒットとなるなど、戦国時代や幕末のみならず、広く歴史モノ全体が支持されるジャンルとなっています。

実写モノのテレビドラマでは、製作費やスケジュールなどの問題もあって、NHKの大河ドラマや年末年始の大型時代劇などを除けば、毎週放送の番組枠で時代劇と言えば、馬や甲冑が必要な合戦シーンが出てこない『水戸黄門』や『遠山の金さん』などの江戸時代を描いたものが中心でした。
現在ではそれすらも姿を消してしまい、早朝の再放送枠(テレビ朝日『おはよう!時代劇』)や、有料の時代劇専門チャンネルなどで過去作品が放送される他は、NHKでわずかに新作が放送されるのみという状況となっており、需要があっても供給できないという事情を抱えているわけです。

しかし、アニメであれば、馬や甲冑を描くのも、ロボットや校舎を描くのも、コスト的には大差がないので、テレビドラマに比べれば遥かにハードルが低いと言えるでしょう。
そこで、過去に戦国時代や幕末をテーマにしたテレビアニメ作品がどれ程あるのか、主なものを挙げてみました。

<戦国時代や戦国武将をテーマにした主なテレビアニメ作品>
『少年徳川家康』(1975年)
『新釈 眞田十勇士』(2005年)
『戦国BASARA』シリーズ(2009~2018年)
『百花繚乱 サムライガールズ』シリーズ(2010~2013年)
『殿といっしょ』シリーズ(2010~2011年)
『戦国乙女〜桃色パラドックス〜』(2011年)
『へうげもの』(2011~2012年)
『BRAVE10』(2011年)
『戦国☆パラダイス_-極-』(2011~2012年)
『戦国コレクション』(2012年)
『織田信奈の野望』(2012年)
『義風堂々!! 兼続と慶次』(2013年)
『信長協奏曲』(2014年)
『戦国無双』(2015年)
『信長の忍び』シリーズ(2016~2018年)
『ドリフターズ』(2016年)
『戦国鳥獣戯画』シリーズ(2016~2017年)
『ノブナガ先生の幼な妻』(2019年)
『胡蝶綺 〜若き信長〜』(2019年)
『織田シナモン信長』(2020年)
『刀剣乱舞』シリーズ(2016~2018)

<幕末をテーマにした主なテレビアニメ作品>
『お〜い!竜馬』(1992~1993年)
『るろうに剣心』(1996~1998年)
『陽だまりの樹』(2000年)
『機巧奇傳ヒヲウ戦記』(2000年)
『PEACE MAKER鐵』(2003~2004年)
『機動新撰組 萌えよ剣 TV』(2005年)
『銀魂』シリーズ(2006~2018年)
『幕末機関説 いろはにほへと』(2006~2007年)※
『薄桜鬼』シリーズ(2010~2016年)
『幕末Rock』(2014年)
『刀剣乱舞』シリーズ(2016~2018)
『BAKUMATSU』シリーズ(2018~2019年)
『ブッチギレ!』(2022年)

時代や流行を反映するように、そのほとんどが戦国時代や幕末がブームになった2000年代以降の作品で、アニメである以上、普通に史実を描くだけでは物足りないとばかりに、タイムスリップものであったり、美少女化、刀剣の擬人化から犬に転生した戦国武将といったものまで、様々なバリエーションやアレンジが試みられています。

戦国時代や幕末以外では、古くは江戸時代を舞台にした『赤胴鈴之助』(1972~1973年)や『あんみつ姫』(1986~1987年)、室町時代が舞台の『一休さん』(1975~1982年)、大正時代が舞台の『はいからさんが通る』(1978~1979年)などがあり、近年では、元寇を描いた『アンゴルモア 元寇合戦記』(2018年)、11世紀初頭の北欧を舞台にした『ヴィンランド・サガ』(2019年)、明治末期の北海道を舞台にした『ゴールデンカムイ』(2018~2022年)といった、今まで焦点が当たらなかった時代や場所を舞台にしたものも登場しています。
2019年に爆発的人気を博した『鬼滅の刃』も大正時代を舞台にしているので、拡大解釈をすれば、歴史モノと言えなくもありません。

今後もこの歴史モノ需要は廃れることなく、ますます大きくなっていくことが期待されますが、制作事情としては、前述通りコスト面では大きな問題がなくとも、原作不足という切実な問題を抱えています。
ヒットが狙えそうなビッグタイトルがなかなか出現してこないので、歴史モノをやりたくてもなかなか手が出せないのです。かといってオリジナルでやろうと思っても、原作本の発行部数といったような明確な実績がない企画はなかなか通らないご時世なので、実現は難しいでしょう。

半分期待を込めてアニメ化の可能性があるかもしれないマンガ作品を挙げてみると、ゆうきまさみが小学館の「週刊ビッグコミックスピリッツ」で連載中の伊勢新九郎盛時(後の北条早雲)を描いたマンガ『新九郎、奔る!』、完結済み作品ながら、仙石秀久というマニアックな戦国武将を主人公にし、歴史マンガジャンルではランキング常連作品である講談社の『センゴク』、こちらも完結済ですが、東村アキコが上杉謙信女性説を題材に描いた小学館の『雪花の虎』なども、今までにない切り口や話題性の面で、アニメ化候補としては良さそうに思われますがいかがでしょう。

需要があるのは確実な歴史モノジャンルには、まだまだ可能性が多分にあるものと思われ、『キングダム』や『ゴールデンカムイ』に続く、新たなヒット作が生まれてくれることに期待をかけたいと思います。


※『幕末機関説 いろはにほへと』は、動画配信サイトGyaOで配信されたWEBアニメですが、2011年にはCS放送の「アニマックス」でも放送されました。