コンテンツのモニュメント・施設展開についてまとめてみた件。

アニメの未来を考える

1983年に鉄腕アトムの銅像が、1999年に『名探偵コナン』と『アンパンマン』のマンホール(蓋)が登場して以来、コンテンツのモニュメント化が普及し、現在では全国に1000以上のアニメやマンガ、キャラクターを使ったモニュメントやマンホールが存在します。
さらに、80年代あたりから普及したキャラクターのグッズを販売する専門ショップ展開の他、最近ではジブリパークやニジゲンノモリ、ムーミンバレーパークなどのテーマパーク化も進んでいます。
そんな中、多くの日本人が知っているような有名キャラクターや作品、いわゆる強コンテンツと呼ばれるようなものが、現在どのような展開になっているのかを調査してみました。

この一覧表を見てみると、やはり歴史の長いコンテンツ程、ファン層も多いので展開幅が広い傾向があり、上記に挙げたような知名度の高い強コンテンツであれば、活用したいと思う企業や自治自治体が出てくるのは自然な動きのように思われますが、『巨人の星』や『タイガーマスク』のように、時折全く展開の見られないコンテンツもあります。※
アニメコンテンツとしては、『巨人の星』はトムス・エンタテインメント、の『タイガーマスク』は東映アニメーションの制作なので、両社とも『名探偵コナン』『アンパンマン』に、『ワンピース』『ドラゴンボール』『プリキャア』といった現在放送中の強コンテンツを所有しているので、あえて古い作品にこだわらなくとも良さそうな気がしないでもありません。両作品の出版社である講談社でも事情は似たり寄ったりでしょう。
自治体の活用面で見ると、『巨人の星』の原作者・川崎のぼるの出身地は大阪市ですが、同じ大阪市出身であるゆでたまごの『キン肉マン』推しで、『巨人の星』での展開は見られません。
『タイガーマスク』の原作者・梶原一騎(作画は辻なおき)の出身地は浅草ですが、観光地として成功していて『タイガーマスク』を活用するまでもありません。

『名探偵コナン』や『ゲゲゲの鬼太郎』の例を挙げるまでもなく、原作者の出身地での町おこしは定番となっていますが、『シティハンター』の北条司の出身地である福岡県小倉市(現・北九州市)は、同じく小倉市出身の松本零士推しだったり、『聖闘士星矢』の車田正美は東京の月島出身のように、地元の特性と作風が合わないケースもあるようです。

また、スーパー戦隊シリーズや『仮面ライダー』、『プリキュア』などのように、1年後ごとに作品が変わってしまうシリーズ作品群では、ビジュアルや商品展開の変遷サイクルが早いので展開し難いというものもあります。
その意味では、各章でキャラクターが一新される『ジョジョの奇妙な冒険』も展開し難いのかもしれません※。

権利関係や企業の方針などの大人の事情もあるので、一概には言えませんが、作品の認知度や人気度と、展開幅の広さには、明確な相関関係がなく、誰かが手を上げるか、動き出すかといったキーマンの有無のような偶然性や人的要因が大きいようです。

地元に銅像を設置した『ONE PIECE』の尾田栄一郎の熊本、『進撃の巨人』の諫山創の大分県日田市は、アニメコンテンツを地域活性化に積極的な自治体の好例です。
一方で、練馬区などのように、「アニメ・イチバンのまち練馬区」というキャッチコピーを掲げるも、東映アニメーションを地元に持ちながら『ワンピース』『ドラゴンボール』『プリキャア』のような強コンテンツを活用しようという動きもなく、舞台地である『ドラえもん』は調布に取られ、虫プロがあって縁の深い手塚治虫は、高田馬場や東久留米市に取られてしまい、地元在住の高橋留美子の作品で、今年40周年でリメイク作品が放送される『うる星やつら』も静観したままで何の展開も見せないという、せっかくコンテンツに恵まれながらも、うまく活用しきれずに地域の活性化に繋げられていない自治体もあります。

前述通り、自治体コラボが実現する要因として、権利関係や自治体内での活動を推進するキーマンの存在などが挙げられますが、その他に、原作者の意向も大きいようで、鳥山明のように目立つ行動に対して消極的な作家もいる一方、『ONE PIECE』の尾田栄一郎が熊本地震の復興支援として熊本県に8億円の寄付をしたことや、武論尊が「ふるさとのために貢献したい」と長野県佐久市に4億円の寄付をしたことなど、作者側からのアプローチをきっかけに自治体との関係が生まれ、地域コラボが始動するケースもあります。

2021年4月5日には、北九州市が北条司との初コラボで、JR小倉駅1階東側公共連絡通路に装飾壁画「北九州の魅力あふれる夜×北条司」が設置しました。
https://www.city.kitakyushu.lg.jp/shimin/26501425.html

2022年8月30日には、奈良県橿原市が、『ストリートファイター』のキャラクターを地域の観光振興などに活用しようとゲームメーカーのカプコンと協定を結びましたが、これはカプコンの創業者の辻本憲三会長が橿原市出身であることから実現したとのことです。
https://www.capcom.co.jp/ir/news/html/220830.html

このように、続々と自治体のコンテンツコラボが発表される中、『タッチ』のあだち充の出身地である群馬県伊勢崎市や、『SLAM DUNK』の井上雄彦の出身地である鹿児島県伊佐市※、『美少女戦士セーラームーン』の武内直子の出身地である山梨県甲府市、『NARUTO』の岸本斉史の出身地である岡山県勝田郡奈義町の他、リストにはないものの、『コブラ』の寺沢武一の出身地である北海道旭川市、『幽☆遊☆白書』『HUNTER×HUNTER』の冨樫義博の出身地である山形県新庄市、『るろうに剣心』の和月伸宏の出身地である新潟県長岡市などでも、今後、出身地ゆかりの町おこし企画などが展開される余地があり、自治体の動きに期待したいところです。


※2021年7月~2022年3月に、「メトポの星」と題して、東京メトロ「メトポ」×『巨人の星』のコラボによるPR施策が実施されており、コンテンツとしての活動がないわけではなりません。

※荒木飛呂彦の出身地で、『ジョジョの奇妙な冒険』の作品舞台にもなった宮城県仙台市では、誕生30周年記念で2017年に『ジョジョフェス in S市杜王町』が開催され、期間限定でジョジョ仕様のマンホールを設置したり、市内各所でコラボ企画が実施されました

※北九州市が北条司と初コラボで、2021年4月5日に、JR小倉駅1階東側公共連絡通路に装飾壁画「北九州の魅力あふれる夜×北条司」が設置されました。
https://www.city.kitakyushu.lg.jp/shimin/26501425.html

※2014年に、伊勢神宮式年遷宮記念して井上雄彦が奉納した墨絵「承」の展示会「伊勢神宮式年遷宮奉祝 井上雄彦 『承』特別公開」が、鹿児島県伊佐市の大口ふれあいセンターで開催されました。