ルパン三世のジャケットの色 前編 第1・2シリーズ
『ルパン三世』はモンキー・パンチのマンガを原作とするアニメで、1971年に第1作のテレビアニメが放送されて以降、50年以上にわたって現在も続く、日本アニメを代表するシリーズ作品の一つとなっています。
テレビシリーズは6作品+スピンオフ1作品(『LUPIN the Third -峰不二子という女-』)、劇場版11作品、テレビスペシャルが28作品、OVAが6作品と50タイトル以上が作られています。
テレビシリーズは、スピンオフを除き、
『ルパン三世』 1971~1972年
『ルパン三世(第2シリーズ)』 1977~1980年
『ルパン三世 PARTIII』 1984~1985年
『ルパン三世(第4シリーズ)』 2015~2016年
『ルパン三世 PART5』 2018年
『ルパン三世 PART6』 2021~2022年
の6作品で、いずれもルパンをはじめ、主要メンバーの衣装が細かく異なります。
主役のルパンだけに注目してみても、ジャケットの色が大きく異なっており、第4シリーズが放送される前までは、「緑ジャケットのルパン」とか「赤ジャケットのルパン」などのように、ジャケットの色でシリーズを呼称していた程です。
ジャケットの色を語るにあたり、まずは押さえておかなくてはいけないのは、原作版です。
モンキー・パンチによる原作マンガは、双葉社の「週刊漫画アクション」創刊号(1967年8月10日号)から1969年5月22日号まで全94話が連載され、単行本は全14巻が発売されています。
本編は白黒なので、ジャケットは白で描かれていますが、黒インク(スミ)と朱色インクの2色刷りの際にはジャケットは鮮やかな朱色になっていますし、掲載誌の表紙やカラーページ、単行本の表紙のイラストなどでは、赤やピンク、白、黄色、緑などその時々でいろんな色が使われており、固定の色設定はなかったようです※。
ちなみに単行本第1巻初版のルパンはピンクのジャケット、第2巻初版では白のジャケットで描かれていますが、「週刊漫画アクション」の表紙には赤のジャケットも見られます。
テレビアニメ第1シリーズが製作される前の1969年に、スポンサーやテレビ局へのアニメ企画のプレゼン用として約13分のパイロット版が製作されています。
当初は子供向けに改変されてしまうことを懸念してアニメ化に反対していたモンキー・パンチも、このパイロット版を見て意見を変え、製作を快諾したとのことで、スポンサーやテレビ局も製作にGOサインを出しました。
このパイロット版では、ルパンのジャケットは赤となっていますが、何故赤なのかは、パイロット版でキャラクターデザインを担当した芝山努の証言がないので不明。
上述の通り、固定の色設定はないものの、比較的赤系統の配色が多かったことが影響しているのかもしれません。
こうして製作が決定したテレビアニメ第1シリーズですが、当時のブラウン管テレビでは、赤の発色がくすんでしまうということで、ジャケットの色が赤から緑に変更されることになったとのこと。
テレビアニメ版の最初のオープニング(Aタイプ)では、描き直しや修正でちゃんと緑ジャケットで描かれているのが確認できます。
ところが、第4~15話で使用されたルパン一味の紹介スタイルとなっているオープニング(Bタイプ)は、パイロットフィルムの映像が流用されたため、赤ジャケットのルパンになっています。
1977年から放送された第2シリーズでは、パイロット版とほぼ同じ赤ジャケットになっています。
これは、スポンサーのバンダイが、第1作のスポンサーだった浅田飴と区別させるために、色の変更を指示したことや、テレビの技術進歩で赤が鮮明に映るようになったこともあって、赤への変更が採用されたとのこと。
第2シリーズは、1977年10月から1980年10月の3年間で全155話という長きに渡って放送された上、ローカル局をはじめ、全国各地の放送局で何度も再放送されてきました。
その上、『ルパン三世 カリオストロの城』を除く劇場作品や、その後10年以上にもわたって毎年夏休みに放送されることが定番となったテレビスペシャルなども赤ジャケットでしたから、多くの人にとっては、赤ジャケットのルパンが最も親しみを覚える色設定となっているのではないでしょうか。
次回に続く。
〈了〉
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