アニメの海外輸出 その② 昭和時代の海外での日本アニメブーム

日本のアニメが、海外でも大ヒットとなることが多くなり、現在では、特にアニメ好きというわけでもない一般の外国人の方の間ですら、日本アニメの作品名がある程度は知られているようになってきています。

そんな外国人の方に知っている日本アニメを尋ねてみると、『新世紀エヴァンゲリオン』や『進撃の巨人』などの最近の作品か、『ドラゴンボール』や『NARUTO』といった定番作品だろうと思いきや、『スペースコブラ』や『キャンディキャンディ』といった意外な作品名が出てきて驚かされることがあります。

『鉄腕アトム』の海外販売の大成功を受けて、虫プロをはじめ各社が続々とアニメ製作と海外販売を行った結果、海外では日本アニメのブームが起きます。
『鉄人28号』は『Gigantor』とタイトルを変えてアメリカで放送され、人気を博しました。
『宇宙戦艦ヤマト』や『科学忍者隊ガッチャマン』も、それぞれ『Star Blazers』、『Battle of the Planets』とタイトルを変えて同じくアメリカで放送されています。

驚くべきことに、これら1960~70年代における日本アニメの海外輸出の影響は現在でも現地に残っています。

スペインでは、1972年に日本で放送された『マジンガーZ』が1978年から放送されて大ヒットとなり、高さ10mの鉄筋・グラスファイバー製のマジンガーZ立像が設置されており、マジンガー祭なる奇祭もあるそうです。

フランスでは、『UFOロボ グレンダイザー』が『Goldorak』というタイトルで1978年から放送されて大人気となり、現在でも根強いファンがいるとのことで、2021年9月には回顧展「GOLDORAK XPERIENZ」が開催された他、フランス郵政公社から記念切手2種が同年10月に発売されています。

フィリピンでは、『超電磁マシーン ボルテスV』が1978年から放送されましたが、最高視聴率が58%を記録する程の大人気で、子供たちが熱中し過ぎることが社会問題となり、フェルディナンド・マルコス大統領が声明を発して国営放送での放送が禁止される事態にまで発展しました。この後、革命が起こってマルコス政権が打倒されると、中止されてしまった残りの4話が放送されたことから、『ボルテスV』を放送させるために革命が起きたなどと噂された程です。
1999年から同作品の作放送が始まると、最高視聴率が40%を超えてブームが再熱し、日本ではほとんどの人が忘れてまっているというのに、日本から遠く離れた異国で国民的アニメと呼ばれるまでの支持を得ることになったのです。 2020年には実写リメイク版テレビシリーズ『Voltes V Legacy』の制作が発表されています。


現地に残っているのとは少し異なりますが、YMOが1980年にリリースした『ライディーン』という曲がありますが、当初は『雷電』というタイトルだったものを、メンバーの細野晴臣氏が、アメリカで『勇者ライディーン』が大人気だという話を聞いてタイトルを変更したという話は、YMOファンの間では有名なお話です。

日本ではあまり知られていない海外での日本アニメブームの例はこの他にも数多くあり、訪日外国人や海外留学生の方が日本人よりも日本アニメに詳しいなんていう逆転現象も起こっているようです。


アニメ制作のビジネスモデルの歴史
その① 『鉄腕アトム』から始まった海外販売
その② 昭和時代の海外での日本アニメブーム
その③ 海外でのソフト販売