大江戸線延伸構想で夢のアニメラインを妄想してみた件 ① 大江戸線延伸構想の基礎知識

そもそも大江戸線延伸構想とは?
みなさんは、大江戸線の延伸構想をご存じでしょうか?
現在、都営地下鉄大江戸線は、新宿区の都庁前駅を起点に、東西に路線が広がる、都内で最も新しい地下鉄路線です。
東は上野御徒町や両国、月島、といった下町情緒あるエリアから、麻布十番、六本木などの華やかな山の手エリアをぐるっと回る環状線。
西は東中野、練馬を通り、光が丘駅まで続いているのですが、この西側に伸びる路線を、光が丘駅の先まで伸ばそうというわけです。

練馬区内に土支田駅、大泉町駅、大泉学園町駅(いずれも仮称)の3つの新駅を整備して、その先はJR武蔵野線の東所沢駅まで路線を伸ばす構想なのだとか。
とすると、事は練馬区だけに留まらず、東京都清瀬市、埼玉県所沢市・新座市あたりにも関わってくるものになりそうです。

実は、この構想は最近になって持ち上がったものではありません。
構想は大江戸線が開通した2000年12月からすでにあったものですから、かれこれ四半世紀になろうという長い歴史があるのです。
さらに言えば、大江戸線開業前の1985年には、すでに東京圏の交通網整備計画を策定する運輸政策審議会の答申にこの計画の話が出てきているので、40年程も前から存在したものとも言えるでしょう。
逆に考えると、そんなにも長い間実現できずにいる、なんとも頼りない構想なのです。

都内各地で現在進展しつつある新鉄道路線計画を見てみると、JR東日本が2031年の開業を目指す「羽田空港アクセス線(仮称)」の工事を2023年6月に着工、東京メトロは2024年11月に有楽町線(豊洲-住吉間)と南北線(品川-白金高輪間)の延伸工事に着手しています。
一方の大江戸線延伸構想は、いまだ構想段階で、計画にすら上っていない状況。
上記の計画に猛スピードで追い抜かれ、背中も見えない程の置いてけぼりを食らっているというわけです。

大江戸線延伸構想の必要性と実現性
練馬区としては、北は東武東上線、南は西武池袋線という鉄道路線が通っているものの、この間のエリアは、最寄駅まで1km以上離れた鉄道空白地帯となっていて、これを解消したいというのが目的とのこと。
練馬在住の筆者はこのエリアにも馴染みがありますが、ほぼ住宅や学校、地元密着型の小さな店舗があるだけで、外から人が訪れるようなものがほぼ何もない場所です。

鉄道が通っていないから発展しなかったという面もあるので、鉄道を通すことで発展を期待する地元の人たちの気持ちもわからないではありません。
ただし、鉄道を引いたら発展するというのは、昭和の高度成長期の発想なので、それが現在にも適用するのかは、甚だ疑問の残るところ。
これが地方都市であれば事情は違うのかもしれませんが、練馬区の一地域に鉄道路線ができたことによる経済効果がいかほどのものか。すでに鉄道路線がある練馬区内のエリアの発展具合を見ても、それ以上に発展する要素がない以上、経済に与える影響度にそれ程大きなインパクトがあるとは俄かには信じられません。

住民の生活が便利になるという側面もあるでしょうが、すでに長い期間を鉄道なしで暮らしている住民たちは、良くも悪くも、自動車やバスを利用する生活に慣れてしまっているはず。
あればより便利だな程度の必要性では、莫大な事業費や国や企業を動かすのは難しいでしょう。

練馬区には大江戸線延伸推進課なる部署があり、2025年度予算案では、大江戸線延伸推進基金を、更に30億円積み増し、累計で110億円とすることが発表されました。
前述の東京メトロ有楽町線の延伸事業では、総建設費約2,690億円のうち、東京都と江東区の負担はおよそ4割。東京都が約1043億円、江東区が約94億円を負担するとのことです。
東京都による2023年度末の試算では、大江戸線延伸の事業費は約1500億円とのことですから(おそらく今試算したらもっと高額になるものと思われますが)、この110億円は区の負担分としては妥当な額のように思われます。
しかし、東京都には500億円※近く出してもらわねばなりませんから、練馬区が110億円用意できたとしても、それがいかほどの後押しになるのかは定かではありません。
その必要性や費用対効果を考えると、正直言って厳しいのでは、との印象です。

次回はこの厳しい状況下でも、夢のあるプランを考えてみたいと思います。


※ 大江戸線延伸事業費約1500億円のうち、東京都と練馬区が4割(600億円)負担で、練馬区が110億円負担した場合。