『勇気爆発バーンブレイバーン』はロボットアニメファンの希望の星になりそうな件 後編

前回、『勇気爆発バーンブレイバーン』がリアルロボット系と思わせて、実際にはスーパーロボット系だったというフェイク演出を視聴者に仕掛け、これが見事に的を射て、大きな反響を呼んでいることを話しました。
今回はそうした大注目を浴びている『勇気爆発バーンブレイバーン』の制作の方に目を向けたいと思います。

監督を務める大張正己は、30代以上のアニメファンにはお馴染みの有名アニメーター・アニメ監督です。
若干18歳で参加した1985年放送の『超獣機神ダンクーガ』の独特なメカニックデザイン(主に敵メカ)や作画スタイルで一躍注目を集め、1987年放送の『機甲戦記ドラグナー』ではオープニングアニメを一人で担当し、映像と音楽の相乗効果を高めた演出と作画で当時の視聴者を魅了しました。
1988年のOVA『バブルガムクライシス』PART5では22歳で初監督を務め、当時の最年少記録を更新した程です。
監督業よりもアニメーターとしての活躍の印象が強いのですが、近年では、ガンプラバトルアニメのガンダムビルドシリーズや昨年放送された『境界戦機 極鋼ノ装鬼』でも監督を務めています。
ロボットアニメ以外でも、『餓狼伝説 -THE MOTION PICTURE-』や『闘神伝』のような格闘アニメを手掛けていますが、やはり大張正己と言えばロボットアニメが真骨頂という印象があります。

今回の『勇気爆発バーンブレイバーン』では、監督のみならず、ブレイバーンデザイン、音響監督、絵コンテ、原画、友情作画監督、さらにはオープニングアニメの絵コンテ、演出、原画も担当しており、大張正己劇場といっても差し支えない程の起用っぷりです。
しかも、前述のミリタリー系ロボットアニメだとミスリードさせるフェイク企画も、大張監督の発案なのだそうです。

大張正己によるロボットデザインは、いかにかっこよく、美しく見えるかを追求したフォルム、デフォルメ過多で人間の筋肉表現かのように見えるポージングなどを追求したものが特徴です。
そのこともあって、今回意外だったのは、ロボットが全てCGで描かれていることです。
大張正己が手掛けるロボットアニメと言うと、手描きでしか描けそうもない独特な尖ったデフォルメが特徴なので、CGとは対極、あるいは相性が悪いのではと思われます。
実際、大張監督自身もロボが手描きで行きたいという意向だったようですが、それでは制作に時間がかかり過ぎてスケジュールをこなせないと、CGチームがいかにして手描きとの差を埋めるために試行錯誤を繰り返し、大張監督に納得してもらう努力をしたとのことです。
具体的には描線を通常よりもかなり太くし、さらに撮影処理※1の強調具合を手描きキャラクターの処理に寄せているとのことで、確かにCGっぽさは軽減されているように感じます。

この昭和テイストとでも言うべき懐かしくも心躍らせる作風のロボットアニメについては、2018年に放送されて一躍大人気作品となった『SSSS.GRIDMAN』※2という成功例があります。
この作品では、メカアクションにおいて大張正己の作画スタイルを強く意識した作画がされており、雨宮哲監督自身が、「大張正己さんへのラブレター」だと語っている程です。
このことからも、大張正己の作画テイストは現在でも充分に魅力的であり、往年のアニメファンから昭和を知らない若い世代をも惹きつける可能性があると考えるのは当然の流れと言えるでしょう。

勇気爆発バーンブレイバーン』は、Cygamesの子会社のアニメ制作会社であるCygamesPicturesの代表取締役社長で、Cygamesアニメ事業部長でもある竹中信広氏による企画で、大張正己によるオリジナルのロボットアニメを作りたいというところから始まっているということなので、何から何まで大張監督ありきで製作されているわけです。

これまでの昭和ロボットアニメのリメイクの場合、キャラクターや設定、ストーリーなどを踏襲しながら、テイストや作画だけを現代風に改めた作品が多く、必ずしも成功したとは言い難い結果となったものも多かったように思われます。
今後はそうではなく、テイストや作風的な部分で、昭和・平成時代の良いものを踏襲するような作品が成功の要因となっていくかもしれません。
ロボットアニメファンの一人である筆者としても、ロボットアニメの復興は悲願でもあり、この大注目の『勇気爆発バーンブレイバーン』をきっかけに、今後もロボットアニメのヒット作が出てくるよう期待をしたいところです。

〈了〉


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※1 現在のアニメ制作は、デジタル制作に完全移行しているので、「撮影」という制作工程はなく、セル画時代の名残りでそう呼称しているのに過ぎません。
実際には、作画に彩光や反射、レンズフレア、空気感など特殊効果や映像処理を加える作業となります。

※2 『SSSS.GRIDMAN』は、1993~1994年に放送された円谷プロの特撮ドラマ『電光超人グリッドマン』を原作とする完全新作アニメーションです。
ウルトラマン的な巨大怪獣対巨大ヒーローをベースとしながら、往年の変形合体ロボット要素がふんだんに盛り込まれており、特撮ファンやロボットアニメファンたちを夢中にさせました。
この人気を受け、2021年には第2弾作品となる『SSSS.DYNAZENON』が制作され、さらに企画は様々な媒体で展開するメディアミックスプロジェクト『GRIDMAN UNIVERSE』へと発展。
2023年には完全新作劇場版アニメ『グリッドマン ユニバース』も公開されました。