『勇気爆発バーンブレイバーン』はロボットアニメファンの希望の星になりそうな件 前編

2024年の1月開始のテレビアニメ作品の中に、最近ではめっきり少なくなったロボットアニメがあります。
それが1月11日深夜からTBS系28局で全国放送されている『勇気爆発バーンブレイバーン』です。
放送が始まると、SNSを中心に「これが見たかった」というロボットアニメファンたちの歓喜の声が沸き上がり、一気に話題が高まっています。

放送のあった日の「2024年1月12日のTwitterトレンド」では、「バーンブレイバーン」が、発売直前の大人気ゲーム『GRANBLUE FANTASY: Relink』の「リリンク」、翌13日に1日目を迎える大学入学「共通テスト」に次ぐ第3位に入っており、「2024年1月12日のGoogleトレンド」では第1位に入っている程。
https://jp.trend-calendar.com/trend/2024-01-12.html

ロボットアニメというと記憶に新しいのが、前シーズン(2023年10~12月)に放送された『BULLBUSTER(ブルバスター)』ですが、こちらは悪い意味で、SNSで話題となりました。
と言うのも、ロボットアニメファンたちからの批判の声が噴出したためです。
放送に先駆けて公開されたメインビジュアルやPVが、ロボットメインのアニメといった印象を与えるものであったため、往年のロボットアニメファンは色めき立ち、過度な期待をかけていたようです。
ところが蓋を開けてみると、あまりロボットが活躍せず(ロボットが出てこない回すらあり)、経営難の企業やクリーチャーの発生原因の究明などの方に焦点があたった作品だったため、純粋なロボットアニメを見たいと思っていたファンの不評を買ってしまったことで、SNSを中心に否定的な意見が飛び交ってしまう事態に陥りました。

TVアニメ『ブルバスター』ウルトラティザーPV(2022年11月公開)
『ブルバスター』 ✕ 北九州市 Special Movie(2023年4月公開)

この『勇気爆発バーンブレイバーン』は、サイバーエージェント傘下で『グランブルーファンタジー』『プリンセスコネクト!! Re:Dive』『ウマ娘 プリティーダービー』で知られるゲームメーカーのCygamesによる企画・原作の完全オリジナルアニメ作品です。
Cygamesと言えば、ゲームだけではなく、アニメにも力を入れており、上記作品のアニメ化の他、MAPPA、エイベックス・ピクチャーズとの共同企画で製作した『ゾンビランドサガ』という人気作品も手掛けています。

実は、放送前の印象とのギャップという意味では、『勇気爆発バーンブレイバーン』も『BULLBUSTER』と同様でした。
放送前のメインビジュアルやYouTubeで公開されたPVでは、自衛隊と米軍の起動兵器しか登場せず、本来のメインロボであるブレイバーンは意図的に隠されていたのです。
そのため、これを見た人たちはミリタリー系のリアルロボットアニメかと思わされていたのですが(タイトルから勘づいていた人もいたかもしれませんが)、実際には熱血スーパーロボットアニメだったわけです。

第1話のAパートでは、PVで公開されていた通り、自衛隊と米軍の合同演習で、起動兵器であるロボット同士による戦闘が描かれていました。
非常に作画クオリティが高く本格的なもので、このシーンだけでも充分に見応えのあるものに仕上がっています。

ところが中盤に突如宇宙から謎の敵軍が世界各地に飛来し、侵略を開始。主人公イサミがいるハワイらしき演習場では、自衛隊と米軍がこれを迎え撃つも、地球の兵器では敵に損害を与えることができず、一方的に蹂躙されてしまい、絶望的な展開。部隊は全滅で、コクピットに取り残された仲間を必死に引き出そうとするも叶わず、イサミもあわや絶命かと思われた瞬間、どこからか現れた巨大ロボットのブレイバーンが敵の攻撃を防ぎ、「私に乗れ」と言いイサミに手を差し出します。

イサミが戸惑いつつも導かれるままにコクピットに搭乗すると、突如「バン バン ババーン バババババン ブレイバァァァン!」とバカっぽい歌(第2話以降のオープニング曲)が流れはじめ、あろうことか、敵に突撃したブレイバーンがパンチ一発で敵を破壊、さらにはビーム兵器で攻撃してくる相手に対し、物理的な剣で応戦してバッタバッタと敵を斬り倒していきます。
搭乗したイサミは、「さっきから何なんだこの歌はっ!?」と苛立ち紛れに叫びます。何とBGMかと思われた歌は、実際に戦場に流れていたのです。
敵の戦闘起動兵器をあらかたやっつけたブレイバーンは、イサミに「さあ、一緒に叫ぶぞ!必殺技の名を‼」と促し、主人公と共に「勇気一刀流奥義ブレイブ斬‼」と叫んで敵母艦を一刀のもとに破壊してしまいます。
このラスト3分弱で、リアルロボット系の世界観をババーンとぶち壊してからスーパーロボット系の世界観にひっくり返してしまったわけです。

第1話が放送されるや、SNSでは絶賛するコメントが溢れ、前述通りトレンドランキングに載る程になりました。
このどんでん返しでしてやられた感は、放送前にフェイク情報を仕掛けた『喰霊-零-』※1以来です。
勇気爆発バーンブレイバーン』も公式サイトで、第1話放送のネタバレ以前には、リアルロボット系のメインビジュアルを掲げておき、放送終了後にブレイバーンをメインにしたものに差し替えるフェイクを仕掛けていました。

2023年4月時点での公式サイト(WayBack Machine)
https://web.archive.org/web/20230529110322/https://bangbravern.com/

現在の公式サイト
https://bangbravern.com/

第1弾PV(2023年10月公開)
第2弾PV(2024年1月公開)

現在第3話までが放送済みですが、第2話では、再搭乗を拒む主人公に代わって米軍の軍人が志願するも、ブレイバーンはロボットなのに生理的に無理だと言って拒否。プロフィールの好きなものの項目にイサミと書く程にイサミに入れ込んでおり、これはボーイズラブ的な構図を成している模様が判明。
第3話では、敵との戦いから生き残るため、特訓だと言ってブレイバーンが兵士たちとランニング。
さらにはロボット形態から飛行形態に変形するギミックなども披露され、そしてエンディングは、半裸の男が手を取り合い熱唱しています。

何ともふざけている、いや、ふざけ過ぎている、だが、そこがいい、というわけです。
勇者シリーズ※2テイストで、「サンライズ立ち(勇者パース)※3や叫ぶ必殺技名、人格を持つ巨大ロボットなど、往年のサンライズアニメを彷彿とさせる作風で、30代以上の方々には懐かしさ、20代以下には新鮮なものとして映ったかもしれません。

次回はこの『勇気爆発バーンブレイバーン』の制作陣について解説したいと思います。

〈了〉


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1 2008年放送の『喰霊-零-』では、原作マンガの前日譚を描くオリジナルストーリーが展開された作品で、第1話放送時まで、各種アニメ雑誌の記事や、テレビCM、公式サイトに掲載されたメインビジュアルからキャラクター、ストーリー紹介に至るまで、防衛省超自然災害対策本部特殊戦術隊第四課の観世トオルを主人公にした特殊部隊の物語となっていました。
ところが、観世トオルが所属する第四課のメンバーは第1話の終盤で全員死亡してしまい、これに入れ替わる形で登場した黄泉と神楽を中心とした話が第2話以降に展開。
この第1話放送終了後、公式サイトのメインビジュアルや各ページも諫山黄泉と土宮神楽を中心としたものに差し替えられるという、作品内容をミスリードさせる視聴者へのフェイク演出が行われました。

『喰霊-零-』放送前テレビCM
『喰霊-零-』DVD第1巻告知CM

※2 勇者シリーズは、1990年から1998年までに、サンライズ、名古屋テレビ、東急エージェンシーの製作でテレビ放送されたロボットアニメ全8作品の総称です。
サンライズが『機動戦士ガンダム』や『装甲騎兵ボトムズ』などのハイティーンを対象とするリアルロボット路線とは別路線となる児童向けのロボットアニメシリーズとして、『トランスフォーマー』に代わる玩具シリーズを求めていたタカラと組んで企画したロボットアニメシリーズでした。
シリーズ作品は、子供たちの心を掴むべく、心を持った正義の「勇者ロボ」が、地球の危機を救うために惡と戦う勧善懲悪モノで、自動車や新幹線、飛行機、パトカー、救急車、消防車などが変形合体して巨大ロボットになるというテーマが主軸となっています。

※3 「サンライズ立ち」もしくは「勇者パース」というのは、勇者シリーズで多用された剣を構えるポーズが極端なパースをつけて描かれる決めポーズカットで、勇者シリーズ以外でも、これをオマージュしたカットが複数の作品で見られ、アニメファンにとっては一種の様式美やインターネットミームのようになっています。