アニメ東京ステーションのモニュメント作品を細かく見てみた件

前回は2023年10月31日にオープンしたばかりの新施設のアニメ東京ステーションをご紹介しましたが、目玉の一つであるモニュメントにして、ちょっと細かく見てみたいと思います。

天井から吊り下げられているこのモニュメントのビジュアルパネルに使用されている作品は、1958年公開の『白蛇伝』から2024年放送予定の『キングダム(第5シリーズ)』までの118作品で、概ね放送開始年順で左回りに並べられています

筆者も実際にどんな作品が並べられているのかと見上げていたのですが、ここに並べられてもおかしくない超有名作品のいくつかが欠け、逆にそれ程知名度が高くないような作品が入っていたりしていて、何となく違和感がありました。
少し気になったので、帰って来てから、撮影した写真を元に全ての作品をカウントして、制作会社別の作品分布を割り出してみたものが下の表です。

「東京」を冠しているためか、京都府に本社を置く京都アニメーションや、富山県のP.A.WORKSの作品は入っていません。
では、東京都内に本社を置く主要な制作会社の作品は網羅されているのかというとそういうわけでもなく、
スタジオジブリ作品
カラーの『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズ
サテライトの『マクロス』シリーズ
ufotableの『鬼滅の刃』シリーズ、『Fate』シリーズ
MAPPAの『進撃の巨人』シリーズ、『呪術廻戦』、『チェンソーマン』、『ゾンビランドサガ
シャフトの『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズ、『〈物語〉シリーズ
J.C.STAFFの『とある魔術の禁書目録』シリーズ、『灼眼のシャナ』シリーズ、『ミルキィホームズ』シリーズ
WHITE FOXの『Re:ゼロから始める異世界生活』、『STEINS;GATE
エイトビットの『転生したらスライムだった件』、『ゆるキャン△
動画工房の『ちいかわ』、『推しの子
ライデンフィルムの『東京リベンジャーズ
WIT STUDIOの『SPY×FAMILY
スタジオディーンの『らんま1/2』、『めぞん一刻』、『七つの大罪』、『この素晴らしい世界に祝福を!
Studio五組の『結城友奈は勇者である
パッショーネの『ひぐらしのなく頃に』シリーズ
SILVER LINK.の『ストライク・ザ・ブラッド』シリーズ、『のんのんびより
スタジオバインドの『無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜
トリガーの『キルラキル
サンジゲンの『BanG Dream!』シリーズ
アニプレックスの『天元突破グレンラガン』(GAINAXから版権移譲)
NHKエンタープライズの『ふしぎの海のナディア』(GAINAXから版権移譲)
といった都内にある制作会社の有名作品でも入っていないものが多数あります。

また逆に、埼玉県に本社を置く亜細亜堂(練馬にもスタジオがありますが)の作品である『忍たま乱太郎』は入っているので、このあたりの選出の一貫性については、やや曖昧な印象です。

その他、同制作会社の他作品は入っているのに、これが入っていないのは如何なものかと思われる作品も多数見受けられます。
例えば、
タイガーマスク』(東映アニメーション)
北斗の拳』(東映アニメーション)
銀魂』(サンライズ)
HUNTER×HUNTER』(マッドハウス)
僕のヒーローアカデミア』(bones)
ハイキュー』(Production I.G)
黒子のバスケ』(プロダクションI.G)
といったジャンプアニメや、
犬夜叉』(サンライズ)
うる星やつら』(ぴえろ/スタジオディーン→david production)
東京喰種トーキョーグール』(ぴえろ)
鋼の錬金術師』(bones)
交響詩篇エウレカセブン』(bones)
俺の妹がこんなに可愛いわけがない。』(A-1 Pictures)
THE IDOLM@STER』シリーズ(A-1 Pictures)
カードキャプターさくら』(マッドハウス)
BLACK LAGOON』(マッドハウス)
魔法科高校の劣等生』(マッドハウス)
オーバロード』(マッドハウス)
といった作品です。

10年以上も放送されているNHKの『はなかっぱ』(OLM)やテレビ東京の『カードファイト!! ヴァンガード』シリーズ(トムス・エンタテインメント/OLM/キネマシトラス)、『しまじろう』シリーズ(スタジオ サインポスト)などもありません。
これ以外にも選に漏れた有名作品は数え切れず、挙げていけばキリがありません。

数に限りがあって作品を絞らざるを得ないことは理解できますが、さすがに、スタジオジブリ、新世紀エヴァンゲリオン』、『マクロス』、『鬼滅の刃』、『進撃の巨人』クラスのビッグタイトルがないというのは違和感を禁じ得ません。
来場客の中にも、「なんで『鬼滅の刃』がないの?」と感じる人も少なくないでしょう。

進撃の巨人』や『七つの大罪』などのようにシリーズの途中で制作会社が変わったりして権利関係がやや複雑になっている作品もありますが、会社自体がなくなっていたり、版権窓口が不明というわけでもなく、交渉に支障があるようには思われません。実際に現在も作品が配信されていたり、関連グッズも取り扱われているのですから。
そんなことを言えば、版権が虫プロからトムス・エンタテインメントに移譲されている『あしたのジョー』のようなものがあったり、選出されているものの中にもシリーズ続編で制作会社が変更されている作品もあります。

充分に選ばれるだけの知名度や人気がありながら、選に漏れた作品や制作会社があることについては、都からの申し出を断ったのか、あるいは、そもそも都から誘われなかったものか、その点は定かではありません。
そこには組織や企業間の関係性やパワーバランスなどがもちろん存在するのでしょうし、大人の事情が垣間見えるわけですが、「アニメ東京」を謳っているのであれば、そこはそうした垣根を超えて協力体制を構築していってもらいたいところです。

〈了〉


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1991年放送開始の『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』が1992年放送開始の『コボちゃん』の後になっていたり、2018年の順に入っている『刃牙』シリーズの画像が2018年放送の『バキ』ではなく、2021年配信開始の『範馬刃牙』になっていたりします。
その他、2015年の順に入っている『ルパン三世』の画像が2015年放送の第4シリーズの青ジャケットに赤ネクタイではなく、2021年放送のPART6の緑ジャケットに黄色ネクタイのものになっていました。