『頭文字D』の藤原豆腐店が存在する件 前編

『頭文字D』は、講談社「週刊ヤングマガジン」1995年30号~2013年35号にて連載され、単行本は48巻が発売されている、しげの秀一による峠の走り屋(公道バトル)を描いたマンガです。
車好きにとってはバイブル的な人気作品で、1998年に初めてアニメ化された後、地上波2シリーズ、衛星放送で2シリーズ、ネット配信で1シリーズの全5シリーズに加え、劇場版4作品、OVAも6シリーズ以上と、18年以上の長期間にわたって製作されました。

かつての「伝説の走り屋」である父から英才教育を受けた主人公・藤原拓海が乗るが、側面に「藤原とうふ店(自家用)」と記された一見ダサい車(トヨタAE86型スプリンタートレノ・通称ハチロク)で、ライバルたちの高級車たちを打ち負かしていく姿が爽快な作品でした。
マンガが連載を開始した当時はすでにハチロクは生産終了した車種でしたが、作品人気のために中古車市場価格が高騰する現象が起こったことも話題になりました。

ハチロクに記された店名通り、藤原拓海の家は豆腐屋で、作中での店名は「藤原豆腐店」。
2005年に香港の映画会社が全編日本ロケによる実写映画『頭文字D THE MOVIE』を製作した際に、群馬県渋川市にある藤野屋豆腐店の看板を「藤原豆腐店」に変えて撮影に使用され、撮影終了後も看板をそのままに営業を続けたため、全国からファンが訪れる聖地ともなっていました。
特に、韓国や台湾など東南アジアからの観光客が多かったそうですが、これは、香港の実写映画の影響によるもののようです。

その後、藤野屋豆腐店は閉店して建物も解体されてしまいましたが、現在では、店舗看板、外装、備品等を寄贈された伊香保おもちゃと人形自動車博物館(群馬県吉岡町)が、「藤原豆腐店」バージョンの藤野屋豆腐店の外観を再現して、「藤原とうふ店(自家用)」の文字の入ったハチロクと共に展示しています。

これはオフィシャルの許諾を受けた展示となっているので、正統派の『頭文字D』の聖地と言えるでしょう。

しかし「藤原豆腐店」があるのはここだけではありません。

なんと東京の墨田区にもあります。

こちらは入口に貼られた説明書きによると、「藤原模型店」という店名の模型店を開業しようとして断念した店主が、『頭文字D』ファンであることから、個人の趣味で店看板を作中の「藤原豆腐店」を模したものに変え、ウインドウに模型を展示しているとのことです。

静岡県にも。

再現度は低いものの、群馬県にも。

実はあまり知られていませんが、「藤原豆腐店」のモデルは練馬区内にあります。
と言うのも、しげの秀一が練馬区在住であるためで、作品の舞台設定は群馬県渋川市であるものの、「藤原豆腐店」や藤原拓海がバイトしているガソリンスタンドなどは、練馬区に実在するものをモデルに作画されていたりします。

モデルとなった店はすでに閉店して、建物は看板をそのままにシャッターを下ろした状態で残存していますが、練馬区では、これを活用しようという動きはないようです(おそらく、練馬区が配布していた冊子「アニメ・イチバンのまち練馬区」の「練馬区アニメMAP」にも載っていなかったので、練馬区では自区内が『頭文字D』の舞台モデルであることも把握されていないようです)。
もしもこの店舗を買い上げる、もしくは借り受けてしげの秀一記念館や『頭文字D』ミュージアムなどを作ったら、全国からファンが集まるどころか、訪日外国人客も殺到するのではと思われ、何とももったいないところです。