オタク的見地から、今後できてほしいと思うサブカルスポットを考えてみた件⑭ ビル壁画のススメ

アニメの未来を考える

日本は世界に比べ、超高層ビル群は少ないものの、各地に中小規模のビルが数多く建てられており、余程の農村部や山間部を覗けば、ほとんどの地域で団地やテナントビル、オフィスビルなどの四角いコンクリートのビルが点在しています。
しかし、その多くが飾り気がなく、簡素と言うべきか、堅実と言うべきか、装飾を極力抑えて機能のみを優先させたような、あまり特徴のないビルばかりで、目を止めるようなものや写真映えするようなものはほとんどありません。
日本のガウディと呼ばれた異色の建築家・梵寿綱が設計した装飾過多なビルもありますが、こうしたものは極めて少数派です。

そこで今回提案したいのは、ビル壁画です。
学校の校舎の側面に描かれたものや、地域の活動企画で塀などに子供たちが描いた壁画のようなものは見かけることがありますが、その他では、スプレー塗料で違法に描かれるヒップホップ発祥の「グラフィティ」の印象があるために、落書きなどの負のイメージを持っている方も多いかもしれません。
あるいは、度々メディアで取り上げられるバンクシーのグラフィティアートをイメージする方もいるでしょう。

法的な面は、ちゃんと役所に届け出を出した上で制作すればクリアできるので問題は発生しません。
ビルは無数にあるとはいえ、ビルのオーナーをはじめ、既存の住民や企業などに了解を得なければならないことを考えると、どのビルでも自由に描けるというものではありませんが、地域活性化を推進する自治体が管理するビルや公共施設、職員寮など、比較的許諾の得やすい物件であれば実施可能なはずです。

では、ビル壁面に何を描くのかと言えば、出来る限りおもしろいもの、インパクトのあるものである必要があります。
壁画で地域活性化を図るケースはいくつか見られますが、陥りがちな失敗として、周辺住民や各方面からのクレームを怖れて無難で無害過ぎる絵柄を選んでしまうことが挙げられます。
見る人の心に何もひっかかり(トリガー)を与えないようなものであれば、数秒目を止める程度で話題にもならず、あっという間に景色の一部に溶け込んで誰も顧みなくなるでしょう。そんなものであればお金をかけて描く意味はありません。
ビルに絵を描く活動をしましたという活動記録のみが残るだけで、絵自体には効果が見込めないのでは、企画者の自己満足や、絵を描く行為自体が楽しいだけのイベントで終わってしまいます。

こんなにビルだらけの日本で、ビル壁画やビルアートがあまり話題に上らないのには、日本がウォールアートを許容する文化的な土壌がないこと以上に、描かれるものが誰にも文句を言われないような大人しい絵柄ばかりだからではないのかと、筆者は密かに思っています。
自治体のマスコットキャラクターを描きましたとか、地域の名所や歴史関連、特産物などを描きました、といった安直な発想で、会議で全員が反対をしなさそうなものは、まず選択肢から外します。
不快さを与えるグロテスクなものや公序良俗に反する卑猥なものは論外ですが、何か心にひっかかりを与えるもの、巨大さや精密さなどでインパクトを与えるものという観点で絵柄を選び、批判を怖れず断行する勇気が必要でしょう。
写真映えするかどうかもポイントの一つで、SNSで拡散されることを期待して、思わず写真に撮りたくなるもの、SNSでみんなに自慢したいと思わせるようなものであることが重要です。

実例を一つ挙げるとすれば、福岡県北九州市にあるアパート「COBOLmoji」の壁画があります。
古いアパートをリノベーションする際に巨大な作業員が描かれて話題となり、住民が不快に思うどころか、入居希望者募集の際には、あっという間に入居枠が埋まってしまう人気物件だったそうです。
この例で言うと、巨大な作業員というビジュアルのインパクトも然ることながら、「なぜ作業員なのか?」というところがトリガーとなるわけです。
もちろん全ての人が賛成しているわけではないかもしれませんが、反対者が1人も出ない施策などはあり得ないので、それを言ったら全てのものが該当して何もできません。

他にも、東宝スタジオのゴジラ壁画や神田小川町の「Landmark Art Girl」、虎ノ門の「TOKYO MURAL PROJECT」、愛媛県・高井神島のマンガ壁画アートなどの例があります。
少し前には、バンダイ本社ビルに描かれたシン・ウルトラマンの屋外広告が、ビル前の信号機と重なってカラータイマーに見えると話題になりました。

COBOLmoji ゴジラの巨大壁画(東宝スタジオ) Landmark Art Girl(日本ペイント株式会社の企画によるウォールアート) TOKYO MURAL PROJECT 高井神島マンガ壁画アート

業者にも寄りますが、決まった絵柄を描く場合、壁画の制作費は1平方メートル当たり3~5万円くらいが相場とのこと。決まった絵柄ではなく、創作して描いてもらうとなると、そこにはクリエイティビティの料金が上乗せされるイメージです。
ペンキなどで直接壁面にペイントするのではなく、プリントしたペーパーを壁面に貼りつけるラッピング広告的なものもあり、この場合、定期的に絵柄を差し変えることも可能です。
巨大なモニュメントや施設を作ることに比べれば、はるかに安価で実施できる施策なので、取り組みやすいというメリットもあります。

マンモス団地など何棟も建ち並ぶ団地の各側面に巨大な桜の木を描き、1年中花見ができる風景を作り出したり、壁をページに見立ててマンガの1ページを描いてみたり、一面真っ黒にしてUFO型のライトを取りつけ、夜になるとUFOが飛んでいるように見えるなど、アイデア次第でいくらでもおもしろいものができるでしょう。
アイデアを広く一般募集し、コンペ自体をイベントにして話題作りをすることもできます。

ここからは空想になりますが、版権交渉が可能でライセンス料の問題がクリアできるのであれば、ガンダムやマクロスといったロボットの実物大壁画を描くのも良いでしょう。
町内の各ビルやアパートの壁面にロボットの大きさが実感できるような壁画が描かれれば、大いに話題になります。3か月ごとに1体ずつなど定期的に増やせれば、その都度情報を提供できるので、話題が途切れることがなく、長期的にPR効果を持たせることができます。
版権モノでなくとも、SF的なものや怪獣、ファンタジー的なものなど、話題を呼びやすいサブカル系のものを絵柄に選択すると良さそうです。


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