11月30日はジャブロー上陸作戦の日
11月30日は、『機動戦士ガンダム』ファンなら知らぬ者がいないであろう、ジャブロー上陸作戦の日です。
作中では、宇宙世紀0079年11月30日にジオン公国軍が、ジャブローにある地球連邦軍本部の破壊を目的として攻撃を仕掛けたことになっています。
話数で言うと第29話『ジャブローに散る』。
ガルマ・ザビ戦死の責任を取らされて左遷されていた赤い彗星のシャア・アズナブルが戦線に復帰し、新型モビルスーツ(MS)である赤く塗装されたズゴックの専用機で戦闘に参加したことで、19話ぶりにシャア対アムロ・レイのMS戦が描かれた人気回です。
キシリア配下の潜水艦諜報部隊の部隊長として着任し、アムロたちの乗る地球連邦軍の戦艦ホワイトベースを追跡するシャア大佐が、諜報員107号(ミハル・ラトキエ)からの報告で南米へ向かうとの情報を得、ついに地球連邦軍本部であるジャブローを発見。
早速アマゾン河を溯行した水陸両用MS部隊による先発攻撃部隊を発進させ、自らは北米キャルフォルニアからの援軍を待ってMS降下部隊による上空からの攻撃を敢行します。
この攻撃作戦は奇襲というわけではなく、かなり遠方から部隊の接近が察知されて迎撃態勢を取られていたことから、多くのMSが降下を果たせずに撃ち落されてしまいました。
たとえ降下に成功しても、地上の砲撃に遭った上、基地内に潜入できた一部の部隊も複雑に入り組んだ洞窟内の地形ではMSの機動性を活かせず、地球連邦軍防衛隊の抗戦に、ジオン軍はMSの半数を損耗した挙句に撤退を余儀なくされます。
表面的に見ているだけだと、単なる基地の攻防戦で、アムロとシャアが再び相見えたこと、主人公側の活躍で敵を撤退させてめでたしというだけで終わってしまいますが、もっと深掘りして、この戦いの意味を考察してみると、全く印象の異なる戦いの姿が見えてきます。
このジャブローの地球連邦軍本部というのは、南米アマゾン川流域にある巨大な地下鍾乳洞を利用して作られたもので、場所を特定されないように入口や地上施設などは偽装されていたため、ジオン軍はシャアが発見するまで、場所を特定できずにいました。
核兵器の爆撃にも耐えられる強固な地盤深くにあるために、ジャブロー全体に核ミサイルを撃ち込んでも破壊することが難しいとあって、ジオン軍はコロニーを落として基地の破壊を試みるも、敢え無く失敗(地球連邦軍艦隊の艦砲射撃や核ミサイル攻撃によって崩壊したコロニーは、前端部分がオーストラリアのシドニーを直撃)してしまいます。
一年戦争の序盤で、MSの圧倒的戦闘力によって制宙権を掌握したジオン軍は、物量の不利を解消すべく、鉱物資源の確保のために地球に侵攻していました。
地球上においても、ジオン軍は、圧倒的物量を誇る地球連邦軍をMSの性能の有利さで蹂躙し、各戦線を互角以上に戦って地球上での勢力圏を地球連邦軍と拮抗する程に広げていきます。
ジャブローの前に行われたオデッサ作戦では、地球連邦軍とジオン軍が互いに持ち得る戦力を最大投入して戦った結果、ジオン軍は敗退しました。
しかしこれは、ジオン軍のMS部隊が、ホワイトベースのMSとの戦闘で相殺されていて、実質的には通常兵器同士の戦闘が展開されたため、ジオン軍が物量差を埋めることができなかったものとみられます。
ジャブロー上陸作戦前、シャアへの報告に訪れたジオン軍の北米方面軍担当官が、援軍が少ないことを詫びているシーンがあります。
作中ではガウ攻撃空母が12機確認できますが、地球連邦軍本部の攻略というには明らかに少ないことがわかります。
かつてはジャブローの地球連邦軍本部を叩くためにコロニーまで落とした(軌道がズレて失敗)ジオン軍が、ついに基地の場所を特定したにもかかわらず、充分とは言えない援軍しか送れなかったというのは、オデッサ作戦での損失が大きく、ジオン軍の物資不足が深刻な域にまで来ていることを窺わせます。
ところがこれに対し、シャアはにこやかに対応して文句一つ言わないのです。
この規模の戦力では、基地攻略が不可能であることを、シャア程の人間が判らないはずがありません。
本気で攻略したいと思っていたら、歯軋りして悔しがるか、この程度しか部隊を派遣しない司令部に皮肉の一つでも漏らしそうなものです。
少ないとは言え、この攻略部隊は大佐に過ぎないシャアが動員できる規模ではないので、作中には登場しないものの、おそらく中将以上の将官が司令しているのだと思われます。
シャアにしてみれば、基地発見の功績を挙げたことで充分であり、あとの勝敗は彼の目的外な上、責任は司令官にあるので、たとえ失敗しても一部隊を率いているに過ぎない自分には責が及びません。
彼の最終目的は地球連邦軍の壊滅でも、ジオン軍の勝利でもなく、ザビ家への復讐にあるので、直属の上司であるキシリア・ザビの意向に従って、ホワイトベースを追いながら地球連邦軍の動向を探り、戦局を見極めることが当面の目的であるので、このような態度になっているわけです。
また、この第29話では、ガンダムの生産タイプとしてジムが作中で初登場しますが、これは、MS開発に後れを取ったことで劣勢を強いられてきた地球連邦軍が、ついにMSの量産を開始し始めたことがここで明らかにされたものです。
このジャブロー基地では、ジオン軍に奪われた制宙権を取り戻すべく、何隻もの大型戦艦が建造されており、それに搭載するジムも同時に製造する大規模工場がありました。
これを破壊できなかったことが、後々ジオン軍敗北の要因となっていくので、その意味でも、この作戦は重要な分岐点であると言えます。
この工場で製造された大量のジムを搭載した何隻もの戦艦がジャブローより宇宙に飛び立ち、ジオン軍の重要拠点であった宇宙要塞ソロモンを攻略、次いで総司令部が置かれていたア・バオア・クーを攻略して一年戦争を終結させるに至るわけです。
ガンダムの世界では、それまでのロボット作品のように、主役機1機の活躍という戦術的勝利によって戦争の勝敗が決まるようなことはなく、あくまで戦略的要因が戦争の勝敗を決めていく大人の世界が描かれています。
一年戦争で地球連邦軍を勝利に導いたのは、シャア専用ズゴックと互角以上に渡り合ったガンダムではなく、あっさり倒されてしまったやられメカのジムの方だったわけです。
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