PRアニメが持っている構造的欠陥① PRアニメが陥りがちな失敗 後編

アニメの未来を考える

知名度の高い既存商品の性能がUPしたとか、内容説明のPRを第一義にするようなものもあるので一概には言えませんが、まずは商品の知名度を上げることを目的とするテレビCMに関しては、まず面白いことが第一義で製作されるはずで、有能なCMプランナーであれば、面白さの中に商品名や商品内容を埋没しない程度の絶妙なバランスで盛り込み、面白くて且つ商品も印象に残るというものを生み出すはずです。

アニメCMではありませんが、1990年代に放送されていた湖池屋のお菓子「ドンタコス」のCMは、クリエイティブディレクターの佐藤雅彦※によるもので、商品名を連呼するだけで、そのおいしさや他商品との違いなどの説明は一切ないものの、商品名が強烈に印象に残りました。

最近放送されているアニメCMでは、日清食品の即席カップ麺「どん兵衛」のCMが好例と言えるでしょう。
このCMでは、商品名は誰もが知っている上、どんぎつねと男性の掛け合いのキャラ構成も浸透しているシリーズCMなので、説明は最小限に抑え、面白さを第一義に制作されています。

さらに、YouTubeのみで公開されている「最強どん兵衛」の『範馬刃牙』とのコラボアニメCMや、少し前の「日清焼そばUFO」のCMなど、日清食品のCMは、面白さに振り切ったCMが特徴で、多くのファンに支持されています。

PRアニメを作るのであれば、PRしたいものを全面に出したい気持ちを抑え、日清食品のCMのように、面白いものを作ることを第一義に制作することが必要です(それでも成功するかどうかは保証できませんが)。
しかし、担当者が組織の一員である以上、アニメに理解がある年配の上司や幹部連に恵まれれば別ですが、現実はそんなことはなく、承認を得るため、面白さを追求するクリエイティブな部分が抑制されてしまうことが往々にしてあるわけです。
従業員の平均年齢が低いIT企業ならいざ知らず、歴史の長い企業だったり、年功序列が当たり前の自治体職員が作るPRアニメは、この壁を突破しない限り、今後も間違ったPRアニメ作りを続けてしまう可能性が高いと言えるでしょう。


※佐藤雅彦の手掛けたCMには、「ドンタコス」の他に、同じく湖池屋の「スコーン」「ポリンキー」、NECの販促キャンペーン「バザールでござーる」、サントリービールの「モルツ」などがあります。

一世を風靡した「だんご3兄弟」の作詞・プロデュースを務めたことや、NHK Eテレの幼児向け番組「ピタゴラスイッチ」の生みの親としても知られています。