PRアニメが持っている構造的欠陥① PRアニメが陥りがちな失敗 前編

アニメの未来を考える

アニメがオタクだけが楽しむ昭和の時代とは異なり、老若男女の誰でもがアニメを見て楽しむ時代となり、ジブリアニメをはじめ、『君の名は。』や『進撃の巨人』、『鬼滅の刃』など、一部のアニメファンだけではない一般層にまで支持されるヒット作が次々に登場したおかげで、企業や自治体が、商品や地域のPRアニメを作ることが多くなり、オリジナルアニメを使ったテレビCMも、今ではさして珍しい存在ではなくなりました。

しかし、アニメブームにのっかる形で数多く作られたPRアニメは、そのほとんどが寿命短くすぐに忘れられてしまうものばかりで、メディアに取り上げられて一時的に世間の話題になるものならまだマシな方で、メディアにも取り上げられず、無風のまま人知れず流されてしまうものも珍しくありません。

それは、PRアニメ制作において構造的欠陥があるからです。
欠陥とは何かというと、PRに繋がる内容になっているかどうかを第一義に作ってしまうことです。
PRアニメなのだから、PRに繋がる内容になっていることが最低条件になるのは当たり前と思うのはごく自然な感覚のように思われます。
PRアニメである以上、依頼主は100%出資のスポンサーであるので、力関係は明確で、アニメの制作会社はその立場上、依頼主に言われるがままに制作するしかありません。
企業や自治体は、アニメ制作に関しては素人です。担当者は企業や自治体の目的に忠実に、アニメの面白さよりも、いかに商品や地域がちゃんとPRされているかを重要視するのも当然でしょう。
しかし、それではダメなのです。

ちゃんとPRに繋がる内容になっているアニメが完成することがゴールであれば、作って配信した段階で、それは成功と言えるかもしれません。
しかし本当のゴールは、PRアニメが広く見られ、且つそれが支持され、作品を通してPRしたい商品や地域の印象が良くなったり、知名度が向上するというところにあるはずです。
PRに繋がる内容になっているだけのアニメというのは、ひどく穿った言い方をすれば、依頼主が満足するアニメなのであって、本来見てもらいたい視聴者が喜ぶアニメではないのです。
面白くないと不評を買ったり、関心を持たれなかったり、すぐに忘れられたりしたら、それは口コミで情報拡散されず、広く見てもらうという目的には適わないし、印象が良くなるという効果も低く、目的は達成されない、つまり失敗となるわけです。

であれば、まず何よりも面白くなければ、PRアニメは失敗となることになります。
しかし少し考えてみればわかることですが、普通のアニメ作品ですら、みんな面白い作品を作ろうとしてもなかなか支持される作品が生み出せず苦労しているというのに、PRに繋がる内容になっているかどうかが第一義で、面白いかどうかは二の次になっているアニメが、果たして面白くなるか、といえば、そうはならない可能性の方が高いに決まっています。

次回に続く