「湯涌ぼんぼり祭り」が3年ぶりに開催された件
みなさんは、石川県金沢市湯涌温泉で行われている「湯涌ぼんぼり祭り」というお祭りを御存じでしょうか。
神無月の十月、湯涌稲荷神社の小さな女の子の神様が迷わずに出雲へ帰ることができるようにと、人々がぼんぼりで行く道を照らし、そのお礼に、ぼんぼりに下げられたのぞみ札に書かれた人々の望みを、出雲の八百万の神々の元に届けてくれるというお話を表したお祭りとのこと。
温泉街の通りに300基以上のぼんぼりが設置され、温泉街入口から湯涌稲荷神社を通って玉泉湖の浮島までの約500mの通りを神迎え行列が進み、お焚き上げの儀が行われ、過去には来場者1万人以上を記録する程に人気のお祭りです。
2019~2021年はコロナ渦で中止となり、今年の10月22日に3年ぶりの開催となったことがニュースで報じられましたが、実はこのお祭り、元々地元にあった伝統のお祭りなどではなく、アニメ発祥のお祭りなのです。
2011年4~9月に放送された『花咲くいろは』という、都会育ちの女子高生が、祖母が経営する石川県の老舗温泉旅館に住み込みで働く奮闘ぶりを描いたアニメ作品で、湯涌温泉が作中で描かれた架空の温泉街「湯乃鷺温泉街」のモデルとなっています。
この作中に登場する架空の神事「ぼんぼり祭り」を再現したのが「湯涌ぼんぼり祭り」で、当時の聖地巡礼ブームに乗る形で各メディアにも取り上げられ、一躍有名になりました。
仕掛け人は、当時の湯涌温泉観光協会の青年部長・山下新一郎氏で、アニメに出てくるお祭りがとても素敵なものだったので、それを再現したお祭りを実施しようと企画したものでした。
湯涌温泉は高齢客がメインで閑静な温泉街がウリだったため、従来の客が離れてしまう不安から反対派がほとんどだったものの、客が先細りする温泉街に若い世代の客層を増やす必要があると説き伏せ、半ば押し切る形で2011年10月にお祭りを開催。
ステージゲストに作品に出演した声優や主題歌を歌ったアニソン歌手などを呼んだりするものの、お祭り自体はアニメイベントではなく、あくまで作中に登場するお祭りを再現した祭事であって、知らない人が訪れたら、普通に地元伝統のお祭りだと勘違いするようなものとなっています。
しかも、地元の小学生が神様役を演じ、地元の人たちが祭り装束で行列を行う住民参加型のものになるように企画され、集客はもとより、地元にこのお祭りを根付かせる目的で実施されたとのこと。
第2回、第3回と回を重ねるごとに、訪れるアニメファンたちの行儀の良さや湯涌を好きになってくれた思いに、地元の人たちの気持ちも変化していったそうです。
第1回が開催されてから10年以上も経ち、地元では「湯涌ぼんぼり祭り」が秋の風物詩となっているそうで、2年の中止期間を経て、再開を待ち望む地元の声に後押しされる形で今年の開催となったとのことです。
参加する低学年の小学生たちにとっては、生まれる前からあるお祭りなわけで、もはやアニメが発祥とかは関係がなく、すでに地元のお祭りとして充分に定着していると言えるでしょう。
10回目となる今年のお祭りでは、新型コロナウイルスの感染対策のために、完全予約制で入場制限をしての開催となりましたが(チケットは完売)、この再開を機に、今後も長く引き継がれ、やがて伝統のお祭りとなっていくことでしょう。
アニメ作品が発祥で、アニメイベントではない神事を伴うお祭りが地元に定着した例というのは、日本初、もしかしたら世界初かもしれません。
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