番外編:商店街活性化の好事例 ③ 油津商店街 前編

宮崎県日南市にある油津(あぶらつ)商店街は、油津一番街商店街、サンプラージュ岩崎商店街、油津一番街の3つの商店街がアーケードで一体となり、南北約120m、東西約150mのL字型となっている通りで構成される商店街です。

かつては日本屈指のマグロ漁港だったという油津港と駅とを繋ぐ立地で、港の発展と共に栄え、最盛期は約 100 店舗が軒を連ねて買い物客で賑わう日南市の中心街でした。
ところが、マグロの漁獲量が落ちて港が衰退し、自家用車の普及で駅の利用客が激減すると急速に寂れはじめ、核となっていた食品スーパーや近隣の大型テナントなどが相次いで徹底するとさらに客足が遠のき、店舗数が最盛期の半分以下にまで減少して典型的な「シャッター商店街」となってしまいました。

そこで日南市では、油津商店街再生のため、2013年に市外から専門知識を持つ実践家を招こうと、テナントミックスサポートマネージャーの全国公募を実施しました。
この公募内容は、委託費が月90万円(生活費・諸経費込)で、日南市に住みながら油津商店街に4か年で20店舗を誘致することをノルマとするもので、333人の応募者の中から、福岡県出身で建設コンサルタント会社に勤め、九州各地で町づくりのコンサルタントとして活動してきた木藤亮太氏(当時38歳)が選ばれました。

決められた期間内での店舗誘致が命題となっているわけですが、単純に出店希望者を集めてくれば良いというものではなく、まず先に、店舗営業はしていないけど住宅として家主が住んでいて貸し渋りが起こる、いわゆる「仕舞屋(しもたや)」問題の解決のため、家主との交渉が必要となりました。

高齢のために店を閉めて住宅として暮らし続けている人たちは、子供たちは地元を離れて市街の企業に就職しており、本人たちは年金暮らしとあって、特に商売をする必要性もなく、生活にも困っていないわけですから、面倒な人間関係や要らぬトラブルを招く可能性もある店貸しに消極的になるのも頷け、これが全国のシャッター商店街の再生における大きな課題ともなっています。

木藤氏は、まず、地元の高校生が毎年夏休みのイベントでお化け屋敷を企画しているのに着目し、数日間だけ会場として使用するという理由づけで店の鍵を借り、シャッターを開けさせました。
目的は、久しぶりにシャッターを開けて昔のように人が賑わう様子を見せることによって、店を貸すことに前向きな気持ちにさせることで、実際にお化け屋敷として使用させてもらった店は全て新しい店となっていることからも、効果のある作戦だったようです。
その背景には、一軒ずつ家々を訪れ、九州人特有の飲みニケーションによる家主たちとの関係づくりがあったとのことで、そのような人と人との関係性があってこそ成し得る作戦だったとも言えるでしょう。

この結果、任期満了となった2017年3月末時点で木藤氏が関わった誘致は29店舗にも達し、ノルマだった20店舗を大きく上回る成果を上げてミッションを成功させることができました。
木藤氏がインタビューなどで語ったところによると、地域の人々がこのプロジェクトに賭ける意識が高く、木藤氏の活動に対して反発することなく、非情に協力的だったことも成功要因として大きかったようです。

次回に続く


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