アニメにもドラマにもなっている作品がこんなにもある件 前編

アニメの解説書

近頃は、『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』のように異能力バトルや怪物退治などの作品が人気を博す一方で、ロボットや怪物、異能力者が出てくるアニメの作品数は減少傾向にあり、そうした非現実的なものが登場しない、現代を舞台にした人間ドラマを描いた作品が増えてきています。

超能力者も異星人もお化けも魔法や超化学なども出て来ない、普通の人間同士の恋愛物語や頭脳戦、はたまた女子高生の日常や、美少女や美男子たちのアイドル活動を描いたような作品など、非現実的ないかなるものも描き出すことが可能なアニメで、敢えてそのようなものを描かない作品が増えているというのは、皮肉なお話と捉えることもできるかもしれません。

近年は、VFXやCG技術の発展によって、それまではアニメでしか描くことができなかったような空想世界を描き出すことが可能となったため、マーベルヒーロー映画や『ハリー・ポッター』シリーズ、『トランスフォーマ―』シリーズなど、それまでであればアニメで表現されていたであろう物語が、次々と実写化されてヒットを飛ばすようになりました。

一方、アニメやマンガの方は(主に日本のアニメ・マンガにおいてですが)、視聴者・読者層が青年や大人が中心になってきていることから、幅広い需要に応えるべく多様化が進み、ロボットや異能力バトルのような作品ばかりでなく、普通の人間ドラマを描いた作品も増えていったわけです。

そうした流れの中で、海外の映画やドラマに比べて予算規模が各段に低い日本の製作環境においては、普通の人間ドラマであれば実写化もしやすいこともあり、人気作品を実写化する流れが加速していきます。
もちろん、超能力者や怪物が登場する実写作品もありますが、やはり予算的な理由から、基本的には人間ドラマを実写化する方が主流となっています。

古くは1950~1960年代にも『鉄腕アトム』や『鉄人28号』、『サザエさん』なども実写化されており、1988年から映画シリーズ化されたマンガ『釣りバカ日誌』は22作品も制作・公開され、2002~2003年にはアニメ化、2015年にテレビドラマ化されたので、印象に残っている方も多いでしょう。

以下に近年(1990年以降)のアニメ化・実写化の両方ともされている作品をまとめてみました。

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<アニメ化と実写化の両方されている作品(1990~2000年代・実写化順)>

マンガ『電影少女』実写映画化(1991年)→実写テレビドラマ化(2018年・2019年)
マンガ『美味しんぼ』実写テレビドラマ化(1994年1月~1999年)→実写映画化(1996年)→再ドラマ化(2007~2009年)
マンガ『金田一少年の事件簿』実写テレビドラマ化(1995年4月・1996年)→実写映画化(1997年)→再ドラマ化(2001年)→再ドラマ化(2005年)→再ドラマ化(2013~2014年)→再ドラマ化(2022年)
マンガ『恐怖新聞』実写映画化(1996年7月)→再実写映画化(2011年)→実写テレビドラマ化(2020年)
マンガ『花より男子』実写映画化(1995年8月・2008年)
マンガ『ろくでなしBLUES』実写映画化(1996年2月・1998年)→実写テレビドラマ化(2011年)
マンガ『』実写テレビドラマ化(1996年4月
マンガ『イタズラなKiss』実写テレビドラマ化(1996年10月)→再ドラマ化(2013年・2014年)
マンガ『ガラスの仮面』実写テレビドラマ化(1997年7月・1998年・1999年)
マンガ『GTO』実写テレビドラマ化(1998年7月)→再ドラマ化(2012年)
マンガ『サラリーマン金太郎』実写テレビドラマ化(1999年1月・2000年・2002年・2004年)→実写映画化(1999年)→再ドラマ化(2008年・2010年)
マンガ『西洋骨董洋菓子店』実写テレビドラマ化(2001年10月
マンガ『鋼鉄天使くるみ』実写テレビドラマ化(2002年4月
マンガ『ごくせん』実写テレビドラマ化(2002年4月・2005年・2008年)
マンガ『ピンポン』実写映画化(2002年7月
マンガ『逮捕しちゃうぞ』実写テレビドラマ化(2002年10月
メディアミックス『美少女戦士セーラームーン』実写テレビドラマ化(2003年10月
マンガ『エースをねらえ!』実写テレビドラマ化(2004年1月
アニメ『新造人間キャシャーン』実写映画化(2004年4月
メディアミックス『キューティーハニー』実写映画化(2004年5月)→実写テレビドラマ化(2007~2008年)
マンガ『忍者ハットリくん』実写映画化(2004年8月
メディアミックス『デビルマン』実写映画化(2004年10月
マンガ『H2』実写テレビドラマ化(2005年1月
マンガ『鉄人28号』実写映画化(2005年3月)※1960年にもテレビドラマ化
マンガ『アタックNo.1』実写テレビドラマ化(2005年4月
マンガ『魁!!クロマティ高校』実写映画化(2005年7月
マンガ『タッチ』実写映画化(2005年9月
マンガ『NANA』実写映画化(2005年9月
マンガ『ちびまる子ちゃん』実写テレビドラマ化(2006年4月・2013年)
マンガ『テニスの王子様』実写映画化(2006年5月
マンガ『DEATH NOTE』実写映画化(2006年6月・11月)→実写テレビドラマ化(2015年)
マンガ『ハチミツとクローバー』実写映画化(2006年7月)→実写テレビドラマ化(2008年)
マンガ『探偵学園Q』実写テレビドラマ化(2006年7月・2007年)
マンガ『花田少年史』実写映画化(2006年8月
ライトノベル『半分の月がのぼる空』実写テレビドラマ化(2006年10月)→実写映画化(2010年)
マンガ『のだめカンタービレ』→実写テレビドラマ化(2006年10月・2008年)→実写映画化(2009年・2010年)
マンガ『名探偵コナン』実写テレビドラマ化(2006年10月~2012年・SP4作)→再ドラマ化(2011年)
アニメ『地獄少女』実写テレビドラマ化(200611月~2007年)→実写映画化(2019年)
マンガ『しにがみのバラッド。』実写テレビドラマ化(2007年1月
マンガ『どろろ』実写映画化(2007年1月
マンガ『ゲゲゲの鬼太郎』実写映画化(2007年4月・2008年)
ゲーム『逆転裁判』実写テレビドラマ化(2007年5月)→実写映画化(2012年)
マンガ『働きマン』実写テレビドラマ化(2007年10月
マンガ『1ポンドの福音』実写テレビドラマ化(2008年1月
ゲーム『ひぐらしのなく頃に』実写映画化(2008年5月・2009年)→実写テレビドラマ化(2016年・2作品)
マンガ『ここはグリーン・ウッド 〜青春男子寮日誌〜』実写テレビドラマ化(2008年7月
マンガ『デトロイト・メタル・シティ』実写映画化(2008年8月
アニメ『ヤッターマン』実写映画化(2009年3月
アニメ『BLOOD THE LAST VAMPIRE』実写映画化(2009年5月
マンガ『ふたつのスピカ』実写テレビドラマ化(2009年6月
マンガ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』実写テレビドラマ化(2009年8月)→実写映画化(2011年)
マンガ『カムイ外伝』実写映画化(2009年9月
マンガ『賭博黙示録カイジ』実写映画化(2009年10月・2011年・2020年)

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ここに挙げたのはアニメ化・実写化の両方ともされている作品のみなので、年に2~3作品ペースで製作されていますが、実写化のみであれば、『20世紀少年』や『テルマエ・ロマエ』、『三丁目の夕日』など、1990年代は年間10作品前後、2000年代前半は年間15~20作品程、2000年代後半になると30作品前後と、その数を年々増やしていきました。

これには、アニメやマンガが児童向けから青年・大人向けに読者層の中心が移行していくのに伴い、実写のドラマや映画の視聴者層も普段からマンガやアニメなどを親しんでいる世代が中心となっていった時代の流れが背景にあります。
オリジナル作品よりも、すでに一定の支持がある作品の実写化の方が、視聴率や興行成績を読みやすく、出資会社らの合意を得やすいという面があったろうことは想像に難くありません。

2000年代前半に『X-MEN』、『スパイダーマン』、『ハルク』など次々にマーベル・コミック原作の実写映画が公開され日本でもヒットとなったのを受けてなのか、日本でも、『CASSHERN』、『キューティーハニー』、『NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE』、『デビルマン』などのVFX・CG技術を使った実写映画化作品が公開されました。
しかし、その興行成績や評価はまちまちで、必ずしも成功する作品ばかりではなかったこともあり、次第に派手なVFX・CGを使った作品から、人間ドラマ作品にシフトしていった様子が見て取れます。

この流れから製作された『美味しんぼ』、『金田一少年の事件簿』、『GTO』、『ごくせん』、『のだめカンタービレ』、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』といった作品が、ゴールデン枠で放送されるようなテレビドラマが人気俳優やアイドルたちをキャスティングしてヒットしたこともあって、現在にも繋がるマンガ原作ドラマが増えるきっかけとなったようです。


次回に続く。


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