2月22日はマクロスの物語が始まった日

2009年2月22日は、『超時空要塞マクロス』の作中で、統合宇宙軍所属艦マクロス(SDF-1 MACROSS)の進宙式が開催された日です。

マクロスというのは、西暦1999年7月に、外宇宙から小笠原諸島の南端に位置する南アタリア島へと飛来した異性人の恒星間宇宙船を改修して建造された全長1,200m超に及ぶ巨大な宇宙戦艦のことです。
作中では、この異性人の宇宙船が飛来したことによって、異星人が実在し、彼らが強大な戦力を持って宇宙戦争中であることを知り、いずれ地球にも訪れるであろうその脅威に対抗すべく、統合戦争を経て地球統合政府と地球統合軍を樹立します。
異性人の宇宙船を解析して得られたオーバーテクノロジーによって、飛躍的に科学技術が高上し、マクロスだけでなく、可変型のバトロイド・バルキリーなどの戦闘機が開発され、異星人の戦闘勢力に対抗する準備を整えていったわけです。

宇宙船の飛来から10年後となる2009年2月に完成したマクロスの盛大な進宙セレモニーが開催されます。
時を同じくして、戦線から離脱して消息を絶った宇宙船の航跡を追って太陽系にやって来ていた異星人の艦隊が、宇宙船(実際には砲撃戦艦)が着陸している地球へ向け偵察艦2隻を進攻させました。

進宙セレモニーの最中だった地球では、マクロスの中に残っていた古いシステムが、偵察艦を探知して勝手に起動し、主砲を発射。偵察艦2隻を撃墜してしまいます。

実は、10年前に地球に飛来した宇宙船は、「監察軍」という勢力の砲撃戦艦で、その10年後にやって来たのは、「監察軍」と交戦状態にあった「ゼントラーディ軍」という勢力の艦隊でした。

作中の序盤では明かされていない設定なのですが、『超時空要塞マクロス』の世界では、50万年の昔に銀河に一大星間国家を築き上げて繁栄したプロトカルチャーという異星人がいたものの、2つの勢力に分かれて星間戦争を始めます。
2つの勢力は、遺伝子工学によって巨人の代理兵士を製造して戦わせたのですが、戦禍は拡大の一途を辿って当のプロトカルチャーは滅んでしまいます。
ところが、代理兵士たちは主を失った後も戦いを継続し、50万年もの長きにわたり、ひたすら戦争をしていました。
それが、ゼントラーディ軍と監察軍というわけなのです。

ゼントラーディ軍の艦隊総数は約480万隻という膨大なもので、戦線を離脱した砲撃戦艦を追って地球にやって来たのは、第118基幹艦隊所属の第67グリマル級分岐艦隊(ブリタイ艦隊)という末端の辺境パトロール部隊に過ぎませんでした。

地球側はそんな事情は全く知り得ないところでしたが、いきなり先制攻撃をしてしまったわけですから、地球人類はこの不幸なファーストコンタクトのおかげで、意図せず異星人の超巨大勢力との戦争状態に突入してしまいます。

ここまでが第1話の内容なのですが、設定や展開がかなり複雑で、同年に『プロゴルファー猿』や『あさりちゃん』、『パタリロ!』といった子供向けアニメが放送を開始している中にあって、幼少世代をターゲットにせず、完全に中高生以上向けに作られていることがわかるでしょう。
この後、戦うことしか知らないゼントラーディ軍が、地球人のアイドルや歌などの文化に触れることでカルチャーショックを受けて戦闘を止めてしまう現象が発生して、この文化の力を使って圧倒的な戦力差を持つゼントラーディ軍と戦い抜く姿が描かれていきます。

『超時空要塞マクロス』は、それまでのロボットアニメにはなかった、歌謡曲を主題歌やBGMとしてではなく、物語の根幹要素として導入した点が画期的で、大きな反響を受けました。
特にデビュー前の歌手だった飯島真理をヒロインの声優に採用して、クオリティの高い本物のアイドルソングを使用したことは成功の大きな要因ともなりました。

パイロットである主人公との三角関係の恋愛物語を軸に、素人の女の子がアイドルデビューするシンデレラストーリーといった当時のテレビドラマを彷彿させるような物語を、対局とも言えるロボットアニメに導入したことや、ミスマッチとも言える「アイドル×宇宙戦争」という組み合わせで、宇宙戦争をアイドルの歌が終結させるという壮大なコンセプトも含め、『超時空要塞マクロス』は、当時としてはかなり攻めた作品であったと言えるでしょう。

その結果、熱狂的なファンを生む大ヒット作品となり、以降、「アイドル×宇宙戦争」というコンセプトが引き継がれた続編や新作が制作されて現在まで続く、日本アニメを代表する作品となりました。
1990年代後半以降はやや人気が低迷しますが、シリーズ25周年を記念して2008年に放送された『マクロスF』が大ヒットとなって復活。
その『マクロスF』ブームの最中であったことから、作中で物語のスタートとなっている2009年2月22日には、秋葉原UDXビルのアキバ・スクエアで「マクロス超時空進宙式典~ほんとに2009年になっちゃった…2.22(にゃんにゃんにゃん)だよデカルチャー!~」というタイトルでイベントが開催されました。

『超時空要塞マクロス』の放送は1982年からなので、当時としては26年後の未来の物語であり、企画自体は前年からスタートしていると推測すると、四半世紀後ということからの設定だったのではとも思われます。
実際の日付が作中での日付に追いつき、その当日にイベントが開かれようとは、当時の制作陣も予測できなかったことでしょう。

ちなみに、この『超時空要塞マクロス』には、上京当時の庵野秀明が技術研修名目で参加しており、同じくアルバイトで参加していた貞本義行と出会うことになり、これが後の『新世紀エヴァンゲリオン』に繋がることを思うと、そうした後のアニメへ影響力も大きかったことが窺われます。


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